プレミアムナイト4
「あにうえっ!あにうえっ!!」
「Ahー…?」
政宗の不穏な寝起き顔に、幸村は少しも怖じることなく、
「あのですな…っ…さっき、サンタどのがきてくれたのです!あにうえのいうとおりでござった!ほんとうにほんもので、ソリにのって、まほうがつかえて…!」
と、興奮そのままに詰め寄る。
政宗が「マジか!?」と驚愕すると、幸村は一層嬉しげに、「はいっ!!」と頷いた。
「スゲーな幸村!めちゃくちゃluckyじゃねーか!」
「はいっ!それがし、プレゼントはサンタどのにあいたいとかいたのですが、それで!」
「Oh〜、お前考えたなァ…けど、それでもなかなか会ってくれるもんじゃねーぜ?」
「ふぁぁ…うれしいでござる…!」
「dadとmomにも教えてやれよ。俺も後で行くから」
「はい!すぐきてくだされっ!」
タタタ…と、幸村は両親の部屋へと駆けていく。
「………」
そっと窓を開け外を窺うが、幸村の部屋のバルコニー周りは、いつも通りと何も変わらない。
(…さっすが、仕事早ぇーな)
政宗は満足そうに笑み、ヒュゥッと口笛を鳴らした。
労りや感謝をすぐに言ってやれないのは申し訳ないが、それは重々伝えてある。
早々に窓を閉めると、自身も両親の部屋へと向かう。そうしておけば、ついさっき去ったサンタが家族の誰かだとは、疑いもしないはず。
その前に、あの特殊メイクの前では、信じざるを得ないだろうが。
(お高いpresentだったよな…)
しかし、両親を初め皆ノリノリで、その理由は特別手当てがもらえるから…だけではなかっただろう。それほどに、彼は伊達家のトップアイドルであるのだ。
──翌日、ほとんどの使用人は特別休暇を与えられ、久し振りに家族四人+小十郎で出掛けることになった。
幸村は寝不足だというのに一日中元気で、小十郎だけが、陰で何度も欠伸を噛み殺していた…。
クリスマスの後から、小十郎が伊達ファミリーと食事することが増え、幸村は心の中でサンタに再び感謝をした。
かつ、『暖かくなったら菜園を手伝ってくれ』と請われ、笑みが止まらない。
年が明け、両親も政宗も外出したその日、幸村はずっと小十郎の後をついて回った。
「かたくらどのは、サンタどのとあっておるのですよな…」
「──まぁな」
(では、はなしてもいいのであろうか…?)
しかし、『家族以外には言うな』と言われた。サンタの信頼を裏切りたくはないので、喋ってはいないのだが…
「知ってるか?」
「え?」
「サンタのあの白い袋…中のプレゼントはこんなに小さく、だが、取り出すと元の大きさに戻るらしいぜ」
「ぁっ…!」
それはあの夜聞いた話だったが、幸村は懸命に知らぬ振りを装い、
「そ、そうなのですか…!サンタどのにきいたのでっ?」
「ああ。他にもあるぞ」
と、小十郎が流暢に話す内容は、全てサンタより聞きしものばかり。幸村は、「うわぁぁ」「なんと!」「すごい!」…などと、必死で相槌を打ちまくる。
小十郎が珍しく少し得意げに、またどこか楽しそうに喋るので、嘘で返すのには心が痛んだが、幸村はその顔を嬉しく思った。
「次は誕生日だな…──幸村」
(……ぇ…)
「どうした?」
「…ッ、な、なんでも…!!」
幸村は慌てて首を振り、少しでも見えにくくするため、真っ赤になった顔を横に向ける。
それは、サンタに言おうとしてやめたお願いだった。つまりは、小十郎が自ら…
(…よばれたことがないゆえ、なにやらはずかしゅうござる)
早く慣れるよう、沢山呼んで欲しいと思う幸村である。
「かたくらどの…」
「何だ」
「きょうも、だいすきでござる」
「!?」
ガタッとテーブルが揺れ、二人が対戦していたボードゲームの駒が倒れた。
小十郎はすぐに、「大丈夫だ、位置は覚えてる」と静かに並べ直すが、にこにこ笑う幸村に胸中の乱れは尾を引く。
幸村は何も気付かず、無邪気な様子だった。
サンタが、嘘をつくわけがない。幸村なりに考え、出した方法がこれである。
(それがしも、いわれてうれしかったゆえ…)
小十郎も、自分と同じく心配にもなるのなら、そうは見えずとも、喜んでくれるのではないかと。なので、これからは機会があるごとに、伝えておこうと決めたのだ。
「それがし、早く大人になるので……あのクリスマスプレゼント、ぜったいくだされよ……?」
「………」
おずおずと上目遣いでおねだりされ、小十郎はまた手が出そうになった。
…危ない。
去年誓ったのを思い出し、その手は頭を撫でるのでどうにか静めさせる。
──にしても、周りにあそこまで愛されているのを再認する度、己の望みのとんでもなさを思い知らされる。
だが、引くという考えは毛頭ない。それは不可能だと、既に理解させられていた。
ゆえに似合わず不安になったり、別の姿とはいえ言ってしまったりと情けないのだが、それによる棚から牡丹餅は、ありがたく受け取った。
「俺は必ず約束を守る。…お前こそ、忘れてんじゃねぇぞ」
「ぜッ、ぜったいわすれませぬ!だって、」
「…俺も大好きだぜ、幸村」
「──…」
最も嬉しい言葉に加え、また名を呼ばれるというプレミアムプレゼントに、幸村の顔はたちまち華やいだ。
その表情は、自惚れさせられるには充分だったが、『どうか、その気持ちも同じものに育ってくれよ』と、小十郎は苦笑混じりに目を醒ます。
政宗たち親子がとっくに帰り、庭園から二人をニマニマ見ていたのも知らず、葛藤と愛と幸福を噛み締める彼だった。
‐2012.12.21 up‐
お礼&あとがき
匿名様、リクまでして下さり本当にありがとうございました!
現パロ【メリーナイト@】の続編、「小学校に上がり、友達からの影響でサンタさん存在の有無に揺れる幸村のお話」との素敵ネタ
オチや決着はお任せとのことで、あんな感じに…; 幸村の話になってないような。リクもらったときから、もう小十幸しか頭になく、やはり兄貴政宗がとても好きみたいです私。また二人のやり取りのが長いし。蒼紅は、一番兄弟にしたくなります…。
伊達家の庭どえらく広くて、バルコニー前に映画のセット的なスクリーンとか用意、トナカイは人形、ソリは最初からスタンバイ、はけるときはスタッフ(使用人)たちが頑張って下ろした。音は、近所迷惑にならんよう家の中でそれっぽく鳴らし、鍵もトリックで開けたとか。そこまでやるかね…すいません、ほんと。あり得ない。
匿名様、こんな無茶苦茶な話で大変申し訳ありません。よろしかったら、またお越し下さいませ^^ 本当にありがとうございました!
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