アイドル1


遊様、ありがとうございました♪

※幸村総モテ。三成、官兵衛、家康 登場。

佐、慶、政、小十郎がちょっぴり。

キャラ三人とか少なくてすみませぬ…!
完璧、私の好き放題やっています!


(全3ページ)













毎週月曜と木曜には、彼の機嫌がいつもより少し良くなる。
喋らないときは冷淡な目付きで下級生のほとんどが涙ぐんで震え上がり、一旦熱が入って口を開けば他人をねじ伏せる刃物のような言葉に誰もが恐れをなす。
そんな彼が、その日だけは、ちょっと無口な神経質な人――その程度にまで人格が柔げられるのだ。

黒田官兵衛は、その日が来るのをいつも心待ちにしていた。
…自分への被害が激減し、正に癒しの時間を手にすることができるのだから。


窓から校庭を眺めていた石田三成の口元の空気が揺れた。
官兵衛は目ざとくそれを感じ、心の中で大手を振り上げ万歳する。

すぐに、ドアが開く。


「申し訳ござらぬ、遅れ申した!バスに――」
「遅いッ!――バス?まさか貴様また走って…」
「いえ!今日はギリギリ乗れず、次の停留所には間に合いました!いつもより一本遅いバスで来ましたゆえ…。出がけに佐助が急に腹痛を訴えましてな…」

「――また、そいつか」

三成はピクッとこめかみを動かした。

「あ!すみませぬ、言い訳など!すぐに資料を…。黒田殿も、申し訳ない…」
「いや、大変だったな」

官兵衛は、額から流れる汗を拭ってやりたかったが、何となく三成の前ではしてはならないような威圧感に手を伸ばすことができない。

来訪者の真田幸村は、バスで三十分の街にある学園の生徒。三成たちの通う男子校はそこの兄弟校なのだが、土地の過疎化に伴い生徒が激減、この度閉校と同時に、引き取り先がその学園になることが決まった。
来年度からにはなるが、今年の文化祭は向こうがこちらを招いてくれるということになり、生徒会代表で幸村が週二回、連絡係として訪れていた。

初めは、やたらやかましい幸村に青筋を立てていた三成だったが、それ以外の日はどこか静かで不気味だったのを官兵衛は思い返す。

この間――


『貴様ァ!今何時だと――何だ、その汗は…』
『すっ、みま、せ、ぬ…!…バ、ス…が……。学園から、走って、参り…』

三成はポカンとした後、

『馬鹿か貴様は…。どうせ大した連絡もないだろう、いつも』
『い、え…!これは元就殿から仰せつかった大切な…!』

幸村は少しはにかみ、

『それに、某こちらに参るのがいつも楽しみでして…。体力はあり余っておりますからなぁ、つい。しかし、本当に申し訳なく』

『……』


――それからだ。
彼の様子が、明らかにその二日だけは穏やかになったのは。


三成は、生徒会室を出て行った。
幸村は眉を下げて苦笑し、

「…某、また怒らせてしまいましたかなぁ…」
「構わんさ。トイレか何かだろうよ。――すまんが、手伝ってもらえるか?」

と、官兵衛は幸村を資料室に促す。
しばらく二人で作業を続け、気が付くと一時間以上が過ぎていた。

「あっ!すまん、バス…真田」

顔を上げると、幸村の姿がない。

「…真田?」

そう広くはない部屋で、どこにも気配が感じられない。
生徒会室の方も覗いたが…見えない。

開いた窓から風が入り込む。

(…まさか、ここから?)

いくら体力馬鹿とはいえ、そんな――










「わっ!!」

「ぎゃあ!!」


官兵衛は、飛び上がった。

――幸村が、官兵衛の両肩を掴んでいた。


「さっ…なだぁ…!」


振り向くと、幸村はクックッと初めは抑えていたが、我慢できないように笑い始めた。

転がるようにこぼれていく、明るい――子供のようなその声。


「す…みませぬ…!背中がガラ空きで、つい…!」
「あ、の…なぁ…」

官兵衛が情けない顔を見せると、幸村はますます笑った。
…不思議と、怒る気に全くなれない。

「人が悪いよ、ったく…」
「すみませぬ…」

幸村は笑い過ぎて出た涙を拭い、

「…某、意地が悪くなったのかも知れませぬ」
「はぁ?」

彼とは一番縁遠い言葉に、官兵衛は驚く。

「少し…大谷殿の気持ちが分かってしまい申した」

幸村はニコッと笑い、

「黒田殿は……つい、からかいたくなってしまいまする……某でも」

…その目は悪戯っぽい色が少し混じっており。



官兵衛は、のけ反って後頭部を壁にぶつけた。

「黒田殿!?」

「い、いや!ちょっと…一瞬眠くなったんで覚まそうかと」

心配する幸村をなだめつつ、官兵衛は平常心を取り戻そうと必死だった。


(違う違う…!これは違うぅ!いくら男子校だからって、いくら小生がモテないからってそれはないだろう、それは!!)


「某…親しい友人の中で、いつもからかわれる側ですのでな…。黒田殿はお優しいゆえ、つい」

すみませぬ、とまだその顔で官兵衛を覗き込んでくる。

官兵衛は、頭の中で悲鳴を上げていた。…のは隠し、


「…お前さんなら、誰でも……そいつらでもからかってやれるさ」
「そうですかな…?」
「ああ…」

幸村はしばらく考え、

「――ふむ。…今度、試してやりまする」

と、またあの笑顔を見せたので、官兵衛は二つ目のタンコブを作らねばならなかった。

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