最高の贈り物1
まる様、ありがとうございました♪
素敵リク「転生話、記憶なし佐助×記憶あり幸村」
大学生×高校生。元親(大学生)が少し。
まる様の提案ネタ「幸村は佐助を探してる→佐助の方が先に幸村を見て気になり、ストーカーまがいの行動、幸村気付かない…」を、全部使わせて頂きました。半分からは、せめてオチ隠し。
雰囲気おまかせとのことで、シリアス風味に。佐→←幸な。最終的にはギャグな感じ。
こんなにもぬるくて、中途半端なストーカーはいないですよ…どうぞ、ふんだんに失笑を浴びせてやって下さい。裏工作等かなり無理やり;
場面・会話多し乱文※長文。疲労確実(><)
(全7ページ)
夢の中でしか会えない相手を求めて、早何年か。
姿も声も、はっきりとは思い浮かべられない。だが想いだけはいつまでも鮮明で、日ごとに募っていく。
これまで立ち止まらず来られたのも、全てはこの想いがあればこそ。
きっと会える。…見つけてみせる。
(己が再び生を受けたのは、そのためであるに違いないのだ)
世は、こんなにも穏やかになった。お前が馬鹿馬鹿しいと思っておっただろう戦は、もうこの国にはない。…忍も。
好きなだけ、一人の人間として。
(会いたい……)
一たび想い馳せれば、涙が滲む。
とんだ腑抜けになったと、呆れ笑うであろうな。ゆえに、返す言葉も既に用意しておるのだぞ?
だから、早く言わせてくれ。
早く、
早く、
佐助──
あるライブコンサートの開始まで、あと数十分。イベントホールの前に、二人乗りの大きなバイクが停まった。
「ごっ苦労さん♪じゃ、行ってくんね」
「っとに鬼だよ、テメーは」
「まーまー、ちゃんとグッズ買ってくるから。飯もオゴるしさ」
終わるまで待っててよ?と、後ろの男は降り、ヘルメットを返した。
オレンジの髪色に派手な顔立ちで、周りの目をにわかに集める。が、本人は慣れているのか少しも動じず、ニット帽を被り直した。
名は猿飛佐助、こことは違う街にある大学の二年生。遠方からの進学で、この街へ来たのは初めてだった。
運転手は大学で知り合った同級の友人で、長曾我部元親という。こちらも派手な銀髪と眼帯という外見で、ヘルメットを取れば視線を二分したに違いない。
二人ともこのアーティストの大ファンなのだが、チケットを取れたのは佐助だけ。それで、『鬼…』というわけだ。
(──げ、もうこんな…)
物販スペースは、どこも長蛇の列。佐助は、急いで最後尾に並んだ。
じわじわと売り場へ近付き、展示された商品を眺めていると、
「すみませぬ、某そろそろ…」
「おう、お疲れさん!また来週な」
「はい!ありがとうございました!」
勢いよくお辞儀をし、アルバイトだと思われる彼はそこから離れた。見えた顔は、大学生や社会人にしては幼い。
栗色の束ねた長い髪が、背筋が綺麗に伸びた後ろ姿が、人混みに飲まれて紛れていく。
「……あ、すんません」
後ろにいた客に押され、佐助は列を出た。
客は驚くが、彼はもうそれどころではなかった。
(あ、しが……)
震え、力が入らない。
地面が揺れ、頭も霞む。宙を歩いているかのようだ。
それでも何とか進めば、混雑の中他人にぶつかる内、徐々に脚は自分へと戻ってくる。
「親ちゃんっ」
「…あっ?お前、何で…」
「これやる!頼み込んだから入れるよ!」
「へ、」
「俺様、急用できた!電車で帰るから、楽しんできて!」
佐助は元親にチケットを手渡し、大通りへと姿を消した。
(急用…?)
『死んでも行く!』と、あれだけ楽しみにしていたというのに。
あの様子からただごとじゃないと思ったが、やけにハイだった。
(…悪い用じゃねーんだろ、多分)
ならば、お言葉に甘えて…たまにはこんなことがあっても良いだろと、元親は浮き立つ足取りで会場へ向かった。
──俺様、どうしちゃったんだろうか。
(…あの子見てから、)
今日のチケット取れたときとか、続きすっごい楽しみにしてる本やテレビを見る前とか、あと……ああ、初めてAV見たときや、初めて彼女とヤったときとか。
その高揚の、何倍もの昂りが未だに治まらないのだ。
感じたことのない、内臓をえぐられるかのような──…
ひどく熱い、熱い、何かが。
佐助は、あれから彼の後を追っていた。向こうは自転車だというのに、見失うことなく。
自分の足が並外れて速いのは、このときのためだったのだと、ようやく合点がいった。
(宅急便…センター…?)
彼はそこへ入ってしまい、佐助は辺りを見渡す。傍らは、トラックが出入りする荷物の集積所。佐助は運転手らの目を盗み、奥の荷物置場の陰に隠れた。
すると幸運にも、佐助から見える位置に、制服に着替えた彼と他の職員がやって来た。
「真田は、そっちのから頼むな」
「はい!」
ハキハキとした良い声が、佐助の耳を心地好くくすぐる。
(さなだ……真田くんかぁ)
なんて彼に似合う、シンプルながらも響きの良い苗字なんだろう。まるで芸能人みたいだ。
ああー…制服も、スッゲェ似合う。テレビのCMなんじゃないの、これ。
下の名前は、なんていうんだろ。もっと喋ってくんないかな。声が聞きたい声が。もっと。
「××でもバイト…!?そりゃきついだろー」
「しかし、土日だけですので」
「まー、給料は良いがなぁ」
どうやら真田くんは、土日はイベント会場の設営をする会社で、平土日の放課後や空き時間は、ここで荷物の仕分けのアルバイトをしているらしい。
話の流れから、高校生だと分かった。
「多分お前、俺より金持ってるよ。もしもんときは頼むな?」
「また○○殿は…」
と、真田くんが苦笑する。
あああ、なんて可愛いんだ…胸が苦しくてどうにかなりそう。
バイトが終わる九時前には引き上げたが、もう真っ暗なので、いくらでも近くで潜んでいられた。
(危ないなぁ…こんな暗い道、一人で帰って)
変質者は、自転車ごと転がすとか聞く。よく今まで無事だったな、真田くん。
ああ…でも、明日はそうじゃないかも知れない。どうしよう、ものすごく心配だ。
「ただいま帰り申した!」
「お帰り、幸村」
(……名前まで良いなんて…)
家の前の表札には、『幸村』と記されていた。両親と、子供は彼一人。
その音を繰り返すだけで、佐助の全身が総毛立つ。
幸村の部屋らしい窓の明かりが消えるまで、佐助はその場を動かなかった。
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