告白合戦いたしましょう3



政宗の『作戦』は、大成功を納めたと言えよう。

どこからどう見ても、目の前にいるのは、芸能人顔負けのcoolでsexyなnice guyだ。
girlやladyには、到底見えやしない。


……と、いうのに。



(──んで、ひどくなってんだよ…ッ!)



カメラを構えアングル指導と見せかけて、政宗は胸中で自身を罵倒する。

どーいうことだ?俺のこれは、無意識にこいつを女とダブらせてたからなんだろ?だから、目を覚ますために…で、文句なしの男前になったってのに、

…動悸は治まらず、逆に高鳴っていく一方だ。


もちろん幸村は知る由もなく、相も変わらず嬉しそうな顔だった。


「政宗殿のお眼鏡にかなうとは…」
「…Ha、えれぇ嬉しそうじゃねーか?これから男一人振るってのに、ヒデェ奴だな」

だが、幸村は「ふっ」とどこか勝ち誇った笑みを浮かべ、

「途中からですが、某でも嘘だと分かりましたぞ。しかし、貴重な体験でしたので免じて差し上げまする」

と、スーツ姿の自身や、着した服たちを手で示した。
政宗は一瞬呆気にとられるが、


「もしそれが事実であれば、政宗殿ならこのようなことをなさる前に、『己で解決しろ』と、男らしくキッパリ言われましょう?」
「…Ahー……」

「某、政宗殿の『じょーく』も、最近分かるようになってきた気が致しまするっ」


(いや、何も面白くねーだろ、んなjoke)


が、幸村に見抜かれるのも当たり前だったかも知れない。素であれを楽しんでいた、政宗の顔を見てみれば…
幸村の中の、自分のイメージには光栄だった政宗だが、


(…お前が思うより、ずっとビビリで情けねぇ奴なんだよ)


彼を特別に感じていたのは、こうなることへの予兆だったのだろうか。

夏休みの数日だけでは、全く足りなかった。高校で毎日会えれば、きっと楽しいに違いない。そんな純粋な気持ちから言った言葉だった、と思っていたが。
本当なら、やろうと思えばいつでも会いに行けたはずだ。なのに、それをしなかったのは…



「──ところで、政宗殿はどの格好が最も良いと…」
「…あん?」
「っあ、いえ!実は某も、そろそろ身だしなみに気をやりたいと思っておったのですが、慣れておらぬので、その…っ」

「Ha〜n?お前がぁ…?」

上手くいかない流れにくすぶり気味だったこともあり、政宗はひねくれてしまい、


「らしくねー…つか、生意気」
「んなっ…!に、似合うと仰ったではないですかっ!」
「ありゃ、俺のsenseのお陰だろ?お前にゃぜってー無理だ」
「うぐっ……」

本人も分かっていたようで、幸村はムッと反撃に詰まるが、


「ですから学ぼうと──冷とうござるなぁ、政宗殿は…。某、嬉しかったというのに」
「な、…んだよ」

口を尖らせる姿に、政宗の苛々は焦りに変わる。
スーツで敵なしのnice guyであるはずなのに、すねる顔が信じられないほど愛くるしい。
政宗の動悸は、当然忙しくなっていった。


「政宗殿はいつも『大人っぽい』『格好良い』などと言われるのに、某は逆ばかりでござる」
「Ha…マジでどーした?お前、意外に他人の目ェ気にすんだな」

「他人ではなく、政宗殿に思われたいのです」


(Ah──?)


これには政宗もすぐ反応できず、ポカンとするが、


「某ばかりが、いつも追っている……某も、政宗殿を先ほどのように驚かせとうござるよ。勝負も某の勝利は常にギリギリで、政宗殿は一向に悔しがらぬし…」

若干ふて腐れた様子でこぼしながら、幸村はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外していく。



「っ?」
「──髪。元に戻しといてやっから」
「あ、はい…」

政宗に両手で髪をまさぐられ、幸村は大人しく身を任せた。
気持ち良い指先に、頭を撫でられている錯覚に陥りそうになる。


「…俺は、周りに流されねーでそのstyleを貫くお前、すげー良いと思ってるぜ?性格とか口調とか、髪型もそうだな、流行に興味ねーとこも…むしろ、coolだろってよ」
「え……」

「だから、無理して変えることねぇよ」

政宗は指を離し、幸村の顔を覗くと、



「…俺は、そんなお前が好きなんだ」




──え、



幸村は面食らうが、言葉を理解した後『…ッ!?』と後ずさる。
姿見に勢いよくぶつかりすぐに青ざめたが、鏡は無事だった。


「大丈夫か?」
「は!?…あ、はい!全く問題なく!」

政宗は、わずかに決まり悪そうな顔ではあるが、


(…そ、そうか、友人としての意味で…!)


それが当然だろうにと、勘違いしてしまった自分を幸村は恥じる。
が、政宗は「Ahー」と唸り、


「言っちまった…。お前のせいだぜ?あんなこと言いやがるから」
「は、はい…?」

「何なんだよ、お前よォ…男だってのによー……んで俺は、こんな惚れてんだ…」


(ほ……)


幸村が固まると、政宗は覚悟を決めたようで、


「だから、全部は嘘じゃねぇんだよ。お前のそーいう姿見りゃ、目ェ覚めると思ってたんだ。…悪かったな、お前が思うような男らしい奴じゃなくて」

「あ……、いや……」

徐々に理解が頭に浸透したらしく、幸村は赤面でそれを示す。
『やっぱそんな反応すんだな』と思いつつ、自分に対してされるのは最高だと噛み締める政宗だった。


「そ、某…」
「オメーにゃ悪ィが、言っちまったからにはもう取り消せねーわ。何としても、俺を受け入れてもらいてぇ。お前以外、考えらんねんだよ。一生一緒にいてぇし」

「…、…は…」

幸村は、口をぱくぱくさせ何も言えない間抜け面だというのに、政宗の心臓を停めそうなほど握り潰していく。


「同じ男が…しかもガキが何言ってやがんだって思うだろうが、この先も変わらねぇって、もう分かっちまった。俺よりお前を想う奴なんざ、これからも絶対いやしねぇってのもな。
──で、お前も俺に惚れて欲しい。…俺だけに」


後悔とは正反対以上のもんを、必ずくれてやるから。




「俺に落ちろよ、幸村……」

「…ま、──」


名を呼ぼうとしたのか、『待ってくれ』と言おうとしたのか。

その続きは、政宗ので塞がれた幸村の唇の奥で、溶けて消えてしまった。


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