ねじれる4
それから数年、佐助は夢のように幸せだった。
想いは伝えられてはいない。だが、以前よりもさらに強く幸村との絆は深まっていた。
あの事件の後で落ち込んだ彼を優しく励まして。
俺様がいるよ。
旦那の傍には俺様がずっと。
俺様は絶対に旦那を悲しませないから。
と、何度も囁いて。
長い時間が経ち、幸村はまた笑ってくれるようになった。
しかし、佐助の欲する心は際限を知らず。
ふいに、予てよりの最大の望みを果たしてしまおうと。そう思い立つ。
この想いは、恐らくもう叶うことはないだろうから。
―――………
「佐助…?」
大学生になった今、二人は同じアパートを借りていた。
料理の得意な佐助はほとんど毎日幸村の分まで作り、どちらかの部屋で食べるのが普通になっていて。それで合鍵を持ち合っているのだが。
約束の時間になり訪れてみても反応がないので、幸村は鍵を開けて入った。
寝室のドアが薄く開いている。
「佐助、いるのか?」
そっと覗くと、中は薄暗いが人の影が。
「だんな…?良かった、ちょっとこっち来て」
「…?」
「ここ、座って?」
何なのだろうと思いながら言われた通りにする。幸村の正面には姿見の鏡が置かれていた。
「――!?佐助ッ?」
佐助が突然幸村の腰にすがり付いてきた。
「旦、那…ぁ」
「ど…どうしたのだ?何か…」
佐助は幸村の膝に上半身を預けたまま鏡に目を向ける。
「…ねが、…い。俺、持って」
「はぁ?持つって?」
「あの、ねこ…。みたいにさぁ…」
「……」
幸村は、佐助の背中を支えるように抱いた。
「どうした…何かあったのか…?」
たちまち心配そうな声になる。
「う、ん…。始末…付けようと思って」
「始末…?」
佐助は、フフッと笑うと、
「俺様……旦那が、好きなん…だ」
「…!?」
「もうずっと前から…。それでさ」
幸村の手を握ると、
「俺がやったんだ……全部。彼女…」
「――何…?」
「あの猫……も。…旦那に可愛がられて……」
「佐、助…――!?」
幸村の手がヌルッと滑った。
「お前!何…を!」
しかし、佐助は恍惚な表情で、
「嬉…しい、なぁ…。俺様、ずっと…こうしてもらいたかった…旦那に。だからさ、すっげぇ羨ましくて、さぁ…。猫と…あの、こが…」
「佐助!佐助!!馬鹿者…!言えばいつでもやったわ!何故こんな――」
「だって……、こう…なんないと、駄目…でしょ?したら…旦那は、こう…して、くれるんだ、よね?ほら、さっきより…断然、良い…構図。閉じる前に…絶対、見ておこうと…思って、さ…」
目が霞む。
手から銀色に光る物がカランと落ちた。
幸村がそれを拾う。
「ごめ…、も、すぐ…だけど、…刺…て、気の、済む…で」
ごめんねごめんね、大切なものを壊して。
俺はもうずっと前から壊れてた。
あの日、旦那が俺のことを大好きって、おばさんが言ってたのを盗み聞きして、すっかり勘違いしてしまったんだ。
だから、火を点けた。
猫を潰した。
あのこを…
このままじゃ、次にするのは。
だけど、どうしてもこれだけは見たかったんだ。
俺ばかり良い思いしてごめん。
ごめん…
「…っすけ、ばかもの…っ」
「だ、な…?」
「俺は……お前が…」
幸村は、佐助の髪をそっと掴み、
「あの猫も……孫市殿も……これ、に似て、いたから…っだ」
「…え」
「俺は……俺だって、ずっと…」
……う、そ、だろ…!?
じゃあ、俺が今までしてきたことは……
…何てこった、俺は何て、
何て…
何て幸せ者!!
幸村がナイフを自身にあてがったのを見て、佐助は心からの愉悦の笑みをもらして目を閉じた。
‐2011.6.29 up‐
お礼&あとがき
優妃様、リクエスト頂きましてありがとうございました!
こんなものになり、本当にすみません; 狂愛を間違えておる気がひしひしと;
しかも、佐→→→幸ってことでしたのに、最後両想いにさせちまって; ぬはぁ…。
幸村に彼女作らせてしもたり;
孫市をあんな目に遭わせて。しかも髪の毛うんぬんでの理由て。
でも孫市、好きなんですわ。
私の中ではかなり男前。女だけど攻めみたいな。そして慶次とはくっつきません私の中では(^^;
…本当にすみません;
ありがとうございました♪
良かったら、また遊びに来て下さい♪
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