かみかくし(後)-1


政+佐→幸、が主で、慶→幸が少し。

前作の完結編。

※狂愛モドキ的なのは、悪化します。
(攻めが自分勝手;)

・暴力的題材、描写。
・描写は淡々ですが、汚物が出現。

(3p目は特に)会話多しの、乱文長文。

ラストお任せ(3p目最後に、説明あり)


(全4ページ)

















『弱いとか思ってない』


──あの一言に、初めて救われた気がした。





…たかが、身体に触れられたというだけで。

何故、こんなにもままならぬ状態に陥ってしまったのか。

二人には、一度だって責められたり、蔑まれたりなどされたことはないというのに。
どうして、今の今まで、同じように感じられなかったのだろう?

あの二人も彼と同様、『己をそのような目で見ていない』、…というのに。


なのに、何故触れられると、あのようになってしまうのだ?
全身が固まり肝が冷えていくのは、どうしてなんだ?

あんなにも、二人は自分に尽くしてくれるというのに。
己は、逆の仕打ちばかりを与えて。

だから、彼らが望むことは、簡単にできる類いのものなら、全てしてきた。


…けれど、ここの闇は深くなっていくばかり。



どうして。


…どうして…?




何かを、忘れている。…ような。

自分は、何か大事なことを忘れてしまっている気がする。


彼と話した後、初めてそう強く思い始めた…














「幸村、──の野郎は、病院に入ったからな。安心しろ」
「良かったね、旦那」

「ああ…、政宗殿、世話になり申した」

「Ha、バカ言ってんじゃねぇ。当然だろが」
「そうそう、こーいうときのためのコイツなんだから。むしろ、こっちが礼言われて良いくらいだって」

「佐助は、またそのような…」

苦笑すると、他の二人も微笑む。


あの、幸村に手を出そうとした教師は、学校にも多大な貢献をしている伊達家の手配により、速やかな処置が行われていた。

それで、幸村はわざと口を閉ざしていたのだ。
(何せ極秘の方法なので、慶次には言えなかった)


連休中、三人も寮を出て、政宗宅の豪邸で連泊している。

素の自分でいられるこの時間が、何よりも心落ち着ける。
また、二人も同じくなので、尚嬉しいのだ。

彼らは、幸村と離れない限り、このように彼を楽しませる、本来の明るい性格を存分に見せてくれた。



『友達』…

あの言葉がふと浮かび、


「そういえば…、××殿…元気であろうか」

「──え?」

珍しく反応に遅れた佐助に、幸村は『随分以前であったしな』と思いながら、


「ほら、一昨年の暮れ頃だったか…?に、転校された。最後の方、お前や政宗殿の部屋にも、遊びに来ておったのだろう?」

「…っあー……ハイハイ、あの子ね。…旦那、よく覚えてんね…」
「うむ…」

その彼は、いつも離れた場所から幸村たちを窺い、何度か目が合ったこともあるので──だったのだが。


(思えば、転校していった他の彼らも、そんな風であったな…)


…慶次の言うように、してみれば良かった。
接触を恐れ避けていたが、もしかしたら、彼のような『友達』になれていたかも知れないのに。


「あいつは、留学したとか聞いたぜ?デキる奴だったし、そのまま向こうの大学受けたりすんのかもな」
「おぉ…そうなのでございまするか。すごいですなぁ」
「でも、急にどしたの?」

「え?…いや、ふと思い出してな」

と、幸村はテーブルに置かれた菓子を摘まむ。


「旦那、今日は食欲あるね。お昼も全部食べて」
「あ…おう」
「だな。シェフも喜んでたぜ」
「…いつも、申し訳のうござった、残してしまい…」

政宗は慌てて、「いや、そんなんじゃねーよ」と制し、

「お前が食べられたことを喜んでたんだ」と、優しく言い聞かす。

それに、幸村は頬を緩め、


「最近、よく腹が減るのです。この菓子も美味にて…。夕飯が、今から楽しみでござる」

「──久し振りに見た、旦那のそんな顔」
「Ahー…」

二人は少々驚いていたが、幸村は照れたように笑い、


「二人には、いつも甘えてすみませぬ。…早く克服し、治すように努めまするからな」


「「……ッ」」

幸村が、おずおずと二人の手のひらに触れると、彼らは瞬く間に、陶酔の色を漂わせ始めた。

いつもは逆で、許可を取ってから恐る恐るしているため、思ってもいなかった甘美なそれに、二人は息を……胸を詰まらせる。



(………)


しかし、幸村の手と背には冷水が湧き、あの温もりを得られるかもという淡い期待が外れた哀しみに、喉の奥がヒリつくのを感じていた。











毎晩のように、恐ろしかったり、気持ち悪かったりという、嫌な夢にうなされる。

あの放課後、つい深い眠りに身を投じてしまったのは、そのせいでもあった。


佐助と政宗が懇願してきたのは、
『常に三人で、もしくはどちらか一方と、必ず一緒にいること』

──四六時中。


そんなもの、何も難しい行為ではない。


夜は、二人が交代で己の部屋に泊まった。
寮の個室は割と広いので、ソファベッドを入れ、そこで己が寝静まるのを、ジッと見つめる。

毎晩。


だが、ごく稀に二人とも来られない日があった。

それは、彼らが他の友人と遊んだりする日にて。
最近で言えば、あの教師の処遇を話し合うため…だったようで。

しかし、この何年かで分かってきたのだが、その日はそれぞれの部屋を必ず空にする。
どうも、友人の部屋に泊まったり、二人しか知らない場所で過ごしたり──などしているらしい。

それを知ったときから幸村は、その晩は部屋を密かに抜け出し、思い切り身体を動かすことにしていた。

二人は定期的に運動に付き合ってくれるが、一度あの爽快さを味わってしまうと、それだけでは物足りなくなってしまい…
頼めば、ともにやってくれそうでもあるが、何となく隠したままにしておきたくて。


慶次に会ったのは、ちょうどその日だった。



“おはよ、幸!
『幸村』って、どっかでつい口走っちゃったらヤバいし、こう呼ぶことに決めたから。

ていうのは建前なんだけど。

秘密の関係にぴったりだろ〜?俺だけが使うあだ名とか。……”


その後には、込み上げる笑いを必死で抑えねばならないほどの、明るく楽しい内容。
時々写真付きで、それはもちろん、文章も消したくなんてないのだが。

しかし、慶次が『こっちに保存してっから大丈夫だって』と言ってくれたので…
佐助と政宗の目の届かない、トイレや浴室でメールを返信し、消去する。


(まだ、気付かれてはおらぬが…)


いずれは、知られてしまうだろう。…同時に、あの夜の秘密の行為も。

それだけは、回避したい。


幸村は、この連休中に、もう一台ケータイを持たせてもらおうと画策していた。

自分に心酔し、信頼できる使用人が少数だがいるので、二人に知られる心配はない。




そして


今晩もまた



悪夢に、出迎えられる




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