安息に涙す5
慶次が帰った後、幸村は出したカップを台所へ片付けようと手を伸ばす。
すると、背後の空気が静かに揺れた。
「…佐助?」
「──……」
幸村は頬を染め、少しだけ微笑む。彼の意図を、理解し…。
ふわっと身体が浮き、その腕に抱えられる。
「…旦那……見える…?」
その言葉に、幸村はまた笑った。
「何度言わせるのだ?…見えておる、お前の顔…身体も…」
「──っ」
佐助が、たまらないように幸村へと覆い被さる。
息が詰まるほどの口付けを降らすのは、見られたくないからであろう。…いつもの、泣きそうな顔を。
しかし、幸村とて同じ気持ちである。
この奇跡に、感謝しない日々はない。
「俺様にも、よく見えるよ…旦那の全部…。そこに、映してくれてんだよね…」
と、幸村の瞳の周りに軽く触れる。
幸村は、以前の記憶だけでなく、両目の光も失っていた。
ところが、不思議なことに佐助の姿だけは見えるのだ。
こんな突飛な話をしたところで信じてもらえるわけがないので、慶次にも言ってはいないのだが。
脳には誰の記憶も映らない。…だが、誰より大事な彼の姿だけは見える。
それは、どう考えても自分に与えられた最高の贈り物であるというのに。
どうしてか、佐助の方が何倍も嬉しそうに泣く。
…その度に、愛しさは溢れた。
服を合わせて鏡を見ても、浮かない顔をする彼。
自分は彼しか見えないため、どのような物かは分からないのだが、手で触り確認し…それに彼の姿を当てはめると、何もかもが似合うと素直に思える。
それを伝えると、本当に喜んでくれるのだった。
「俺様…いるよね…?消えない…よ、ね…っ」
「いる……佐助は、ここに、ちゃんといる…」
サラリサラリと、彼の髪が揺れる。
自分を抱くときの佐助は、きっと世界で一番綺麗な顔をしているのではないかと思う。
「──ありがとう、全部くれて。俺様も全部、これからもずっと旦那だけのものだよ…」
何か深い意味がありそうな気がいつもするのだが、確かに、自分の世界は彼が全てである。
それさえ分かっていれば、充分だろう。
自分たち以上に、幸福で恵まれた家族はいない。見えずとも、そう断言できる。
それを与えてくれた恋人の、甘く心地好い腕の中へ、今日も幸村は溺れていった。
‐2011.11.30 up‐
あとがき
読んで下さり、ありがとうございます!
わけ分からん話で、本当にすみませんでしたm(__)m 出すのも心苦しかったほど;
佐助に興奮してもらいたかったようです。
幸村の夜のアレなど…アウトだった方、大変ごめんなさい。
初めて透明体験してから、数ヶ月経ってます。もちろん、毎日のように忍んでました。
(服はどっかに隠して)
そのとき、慶次に見られてたようです。
最終、完全に透明になって計画遂行。
本当はもっと黒くするつもりが、やっぱこんなん…
慶次も、当初の予定と違う結果に。
薬のせいで服が着られないから、オシャレ慶次を見るのが楽しみらしい。
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