金吾さんの受難1
金吾視点の佐→幸。高校生。
金・佐・幸、三成が少し登場。
(全3ページ)
「…イェヤスゥゥ…」
いつもの口癖を交えながら、下を向いてブツブツ言っている三成くんの傍をそーっと通り、
「じゃ…あ、三成くん。僕はこれで…」
と部室を後にしようとした。
んだけど…
「待てェ、金吾ォ!」
「ひっ!」
「…お前に、任務を与える」
高校生になったら、あんなことこんなことってウキウキして入学したのに、一つ上の三成くんに強引に新聞部へ入部させられた。
メンバーは、大谷さん、毛利様、黒田さん、長曾我部さん、真田さん、猿飛さん…他にもいるんだけど。
一年生は僕一人の上、三成くんたちにいつも苛められ、イジられ担当の黒田さんがいないときには二倍のひどさ。
長曾我部さんや真田さんたちは、運動部の助っ人ばっかりやってろくに来ないしで。
退部したいのに怖くてできず、いない人の分僕ばかりが取材をしなきゃいけない羽目に。
僕は、小十郎先生の菜園部に絶対入るつもりでいたのに…。
そんな僕が命令を受けたのは、ある人物の日常調査。
いわゆる学園のアイドルやスターたちの話題は結構な反響を呼ぶ。プライバシーとかギリギリのとこまで書いて載せるという手口で、日々のエンターテイメントを提供してる、って現状は良いことだと思うけど…。この調査ってのがなかなか大変。
『僕じゃ、絶対バレちゃうよ!あの人、すっごく五感に鋭いじゃない!』
『問題ない。お前ほど影が薄ければ目に入ることもないはずだ』
『……』
三成くんの前髪をいつか絶対真っ直ぐに切り揃えてやる。
…そんなこんなで、今僕は彼を追跡中。
「あの…猿飛くんっ」
「ん?何?」
対象は、猿飛佐助。幽霊部員三号だ。
何だか女の子から呼び止められている。
「猿飛くん、伊達くんと仲良いよね?」
「………………ゥン」
うわ、すっごく嫌そうな顔。
「それであの、これ…渡してもらえないかな、って…」
手紙みたいだ。――最近、自分のケータイ番号やメルアドを書いた恋文っていうのが密かに流行っているらしい。…って、天海様から聞いたことがある。
「……趣味悪ィ」
ううっわぁ…
女の子には聞こえてないみたいだけど、確実にそう言った。
でもすぐに笑顔になって、
「んー、俺様思うんだけどさ、こういうのってやっぱ…本人が渡した方が良いと思うんだよね」
「あ…、でも…」
「恥ずかしいだろうけどさ、思いきって頑張ってみてよ?俺様だったら、絶対そっちの方が嬉しい。男はほとんどそうだって」
「そ…、そうかな?」
「うん、頑張って!君なら一番目になれるかも知れない」
「一番…?」
「うん。…今、何人なんだっけ、あいつ…」
「……」
「確か、こないだ一人は減って…」
「…あのっ!あ、ありがとう猿飛くん!じゃあ!」
女の子はダーッと走ってった。
「…ケータイの登録ナンバーの話だったんだけど…」
と、言いつつ猿飛さんは、大谷さんよりも黒い笑顔になっていた。
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