猿飛さんは闘病4







「──というわけでね、大変だったけど何とかなったんだ。天海様、ありがとう」

「いいえ、それは何より。(初恋、…じゃなかったのですね)」

何だ、と思う天海だったが、


「それで、特集の方は上手くいったのですか?」
「それがね…」



『(よく書けているが)こんなもの、出せるかァァァ!!貴様も、同じ病に冒されおって!主観的過ぎるだろうが!!』

『えぇぇぇ…!?(思った通り書いちゃ、駄目だったのっ…?)』



「──って、突き返されちゃった。結局、違う特集組むことになりそうなの。変な話、書いてなかったはずなんだけどなぁ。…それに、病って何のことだろう」

「…それはもしや、金吾さん…」

微かに見開く天海の目に、金吾は少々怯えたように、


「最近、時々心臓が痛いんだけど──このことかな?これ、やっぱり病気…?三成くん、何で分かったんだろう。…よりも、どうしよう天海様?これって、怖い病気?」

アワアワと、本当に口から泡を上げそうな様子。


(今度こそ、金吾さんの大人へのステップが…)


天海は、ほくそ笑みながら、


「いいえ、悪い病気ではありませんよ。…それより、お友達ができて良かったですね」

「…!っ、うん!あのね、新しい部員も入ったんだ。皆真田さんの友達だけど…女の子も一人増えたから、黒田さんは大喜びでね?今まで、男子ばっかりだったから」

だが、それが孫市だと知ったときの彼の反応は、未だ目にしていない金吾だった。


「よく喧嘩も起きるんだけど、前よりずーっと楽しくなったよ!今度ね、皆で鍋しようかって。僕ん家広いし。天海様も来てよ!小十郎先生も来てくれそうなんだ」

「ああ、それは楽しそうですねぇ」
「真田さんと家康さんも仲直りしたし…三成くんさえ説得できれば、家康さんも呼べるかなって」

「ならば、良い薬をお渡ししますよ。簡単に暗示を掛けられる」
「ホントっ!?ありがとう、天海様!」

金吾は、ニコニコ笑った後で、


「格好良くなれる薬もあったらなぁ…。僕も、小十郎先生みたいになれるのに」

と、溜め息混じりに呟く。


「おや、真田くんのようになりたいのでは?」

うーん…、と金吾は一唸りし、


「最初はね、そうだと思ったの。真田さんが一番格好良いなぁ、って。…でも、何だか違う気がしてきて──よく分かんないんだけど…」



『小早川殿ー!(キラキラMAX笑顔)』


(…あれは、格好良いって言うより…)



「──でね、その真田さんに『愛らしい』って言われる僕、どうなの?って。真田さんの友達は、皆格好良いのに。だからね」

「金吾さん…(成長したんですね…)」
「天海様?」

蛇の目にも涙である。
奇しくも、天海は素直に感動してしまっていた。


「…ですが、私でもそのような薬は作りかねますね。整形するのが一番では?金吾さん、お小遣い沢山ありますし」

「でも、天海様の研究費用に、いつも使うじゃない?それに整形なんて、ちょっと怖いし」

「ならば、もうあなたは『可愛い』担当で行きましょう。これは、もしかすると強味かも知れません。彼らの中では、誰も持っていない要素ですからね」

「『可愛い』が『格好良い』に勝てるの、天海様…!?というか、僕って可愛いのっ?」

「……真田くんさえ、そう思っていれば良いのですよ」


「では、早速作戦を練りましょう」と、天海は見たこともないほど楽しそうに、金吾を手招く。


──自覚のないままの彼が、無謀な戦いに投じられるまで、あと数日。













「…佐助、最近元気が良いな?(肌がツヤツヤしておる)」
「えっ、そーお?」

「うむ。部活に政宗殿たちが入って、初めはどうなるかと思うたが…皆仲良くなって、俺は嬉しいのだが。…お前は、よく我慢をするゆえ」

「まぁ、俺様も大人になったっつーかね〜。社会に出りゃ、嫌いな人間とも付き合わなきゃいけないんだろうし。(てか、旦那の見てないとこで殺り合ってっから、平気)」

「そうか…。──今度の鍋会が楽しみだな」
「だねっ。金吾くんも団子好きらしいから、沢山持ってったげよーと思ってさ」
「おお、そうなのか!?さすがは佐助!」

「も〜、何も出ないよー?」

しかし、だらしないほどヘラヘラと顔を崩壊させる佐助である。


「さぁ、今日も真っ先に風呂を沸かさねばな!」
「俺様がやるって、断然早いから」

信玄が帰る前に、入浴を済ませておくためだ。最近彼の帰宅が遅かったり、まばらであるからという理由でもあるのだが、


幸村は苦笑しながら、


「一人で入った方が、疲れが取れるだろうに…」

対し、佐助は満面の笑みで、


「ぜーんぜん!俺様、そっちのがすっごい元気になんの。だからだよ、きっと。最近調子良いの。傷付くことがあっても、これで全部癒されるんだ〜」

「ならば良いのだが」

それで佐助の精神が安定するなら、構わぬか…と、今日も納得してしまう幸村。


最近は、湯船が赤く染まることもなくなってきたし、快方に向かっているのだろう、と。




「旦那ありがとね、あのときのお願い、覚えてくれてて。俺様、ホント幸せ」

「何だ、改まって。…お前がそうなら、俺も満足だ」

ニコッ、ズバッと言われ、またもやヘラヘラ、フニャフニャと顔がおかしくなる佐助。


…金吾に負けず劣らずの、鈍感幸村。

佐助の病を悪化させているのが自分だと知るのは、まだまだ先のことである。







‐2012.3.4 up‐

あとがき


読んで下さり、ありがとうございます!

長々とお付き合い頂き、本当に感謝です(ノд<。)゜。

佐助が、最後までおかしくてすみませんでした。自分的には、幸せにしたつもりだったのですが。

結局、金→幸がしたかったんだな、自分…。
そんで読み返してみると、佐助がだいたいのキャラに敵対、もしくは邪魔をしてる。それもやりたかったようです。
筆頭は、剣道部辞めたのかな(^^;

闘ってたのは佐助でした。金吾でも幸村でもなく(・・;)
天海様が優しくなっちゃった…。


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