猿飛さんは闘病2



「真田さんが…?」

信じられないという顔で、金吾は目を見張った。


「彼は、全て持っておるのだ。某がそうありたいと思うものを、一つ残らず…」
「…で、でもそれって」

金吾は、彼なりに考え巡らせ、


「やっぱり、すごく好きだからじゃないですか?家康さんのこと」
「え、…」

否定しない幸村に、金吾はパッと顔を明るくし、

「そうなんだ、やっぱり…!良かった、嫌われてなくて!」
「いや、その…」

「家康さんでも、全部は持ってないですよ!だってほら、真田さんだけは、家康さんのものじゃないから」

(喜びのあまり、金吾の言語力は低下をきたしたようだ)


「え、と、小早川殿、」

「今日もね、僕が間違えていつものように接したら、本当に嬉しそうにしてて…!家康さんは、真田さんのことが好きなんです、絶対!真田さんも、家康さんのこと僕みたいに思ってるんなら、仲良くしてあげて下さい!」

お願いします!と、両手を握ってくる金吾。

その勢いに、幸村は面食らっていたが、


「小早川殿は、本当に徳川殿を慕っておるのですなぁ…」

苦笑し、

「参りました。…反省も。──明日にでも申し開き、謝って」
「本当にっ…?やったぁ!良かった、家康さん!」

これで恩も返せたよぉ…!と、感涙する金吾。

そんな彼を見ていると、幸村の中の家康に対する複雑な思いも、綺麗に解かれていくようだった。



「某も、入れ換わって得をし申した」
「えっ?」

幸村は目に笑みを浮かべ、

「小早川殿を知れて…色んな姿を見られて。こんなに、思いやりの強い方だとは…」

「いぇぇえッ?僕、面倒くさがりで弱虫で、自分のことしか考えてないって、定評ですけどっ?」
「そんなことはない。…礼を言いまする。色々と嬉しくさせて頂き、きっかけまで下さり」

「そ、んな──」

わたわたとなる彼に、幸村は一層目を細め、


「不思議ですよなぁ…自分の顔であるのに、全くの別人に見えまする」
「あっ、それは確かに…!」

金吾は大きく頷き、


「僕、真田さんみたいになりたいです!僕の姿なのに、すごく格好良かったもん、強そうで」

「っ、…そ、そそ、そうでござる、か…!?」

自分のように、など初めて言われたので、有頂天にならざるを得ない幸村だった。


「しかし、あの啖呵からは充分…某以上に、凛としておったが」
「えへへへ…。あれを、自分の姿でも、堂々言えれば良いんですけど」

「言えば良いのです!小早川殿こそが、新聞部の大黒柱なのですから」
「さ、真田さぁん、褒め過ぎですよぉ〜」

小十郎の顔が浮かんだのか、照れが倍になる金吾である。


「某も、これからは部にちゃんと行くように致しまするのでな。片倉先生に言われたよう、ともに良い新聞を作って行きましょう!…いや、ではなく教えて下され、先輩!」

「せ、先輩だなんて〜…」

わぁぁ、と顔を熱くする金吾。

途端、幸村はこらえきれないよう吹き出し、


「その顔…!某の顔であるが、元の小早川殿そのものでござる。やっと、分かり申した」
「え、そうなんですか?(顔、全然似てないのに)」

幸村はニッコリと、


「ずっと不思議でな。自分の顔なのに、何故このように愛らしく見えるのか」




(──はっ?)



金吾は呆然となるが、幸村はスッキリした顔で、布団の中へ入った。


「佐助を待っていたら、後悔するやも知れませぬ。もう、先に寝てしまいましょう」
「は……あ」

その言葉に一応は従う金吾だが、顔は唖然としたまま。



(あ、愛らしい…?)


部屋の明かりを消され、それをリピートしてみても、謎が深まるばかり。

自分を思い浮かべてみても、そんな要素は全くもって見当たらない。


(…でも、何で嬉しい?んだろう…?)


彼のように男らしく、格好良くなりたいのに、どうして…


「(う〜ん…???)」


いくつもの疑問符が飛び交ったが、疲れもあったからだろう、
幸村に続き、金吾も深い眠りへと浸かっていった。

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