真田さんと共闘1
「金吾さんの奮闘」の続編です。初見でしたら、そちらをどうぞ〜。
連載CDE 佐→幸、三・吉・官・就・金・親(台詞なし)・小十
天海様の薬で、外見が入れ替わってしまった金吾と幸村。
今回から後編で、幸村視点になります。
主に佐→幸で、引き続き佐助は残念。
外見が金吾だから、周りは厳しいです(^^;
【猿飛さんは闘病】(完結編)に続きます。
(全6ページ)
小早川殿は普段から大人しい性格のようで、放課後まで特に困ることなく、無事終了できた。
体育がなかったのは救いだ。
力を出し惜しみするのは、相当な苦痛だったろう…(彼は、あまり得意ではないとの話なので)
佐助がいることに、当然周りは驚いていたが、いつものあやつの口八丁で上手く丸め込んでいた。
弁当箱の大きさには目を丸くした。
三分の一はデザートで、感動的とさえ。
俺の弁当もかなり多いのだが、小早川殿の胃袋の強さには圧倒される。
佐助から全部食べるのは止められ、『残りは夕飯のおかずにアレンジする』と。
その分、佐助が楽をできると思ったので、大人しく言うことを聞いておいた。
一つ少しだけ困ったのは、大友殿というクラスメイトくらいだろうか。
小早川殿の前の席で、休み時間の度に『ザビー先生を慕う会』に誘って来る。
とても立派な御仁(恐らく生徒ではない。髭も立派だ)を常に傍に連れていて…
彼らのお陰で、佐助の存在はそこまで目立たなかったのかも知れない。
こちらのクラスも、なかなか柔軟性が高い、と佐助は笑っていたが。
「どう?オッケーだった?」
「ああ、むしろ喜んでおった。『金吾様が、お友達の家に…!』と」
「…家でも、金吾って呼ばれてんだね」
事情を知る人間が多い家に来た方が良いだろうと、今日は小早川殿をうちに招いて泊まってもらうことに。
うちはお館様と佐助の三人暮らし、向こうは豪邸で、使用人も大勢と聞く。
少し興味もあるが、小早川殿を一人でうちにやるのは忍びない。
(その場合、佐助もついて来ると聞かぬので)
「全然平和に終われそうだね」
「ああ…。しかし元はと言えば、俺が『スター特集』の調査に協力しなかったから…可哀想なことをした。俺がいつも駆け回っているせいで、話しかけもできなかったのだろう」
「………」
佐助は、笑顔で汗をかいている。
(たまに見せる表情なので、心配ないだろう)
「今夜は、きっちり調査に協力しよう。部活にもロクに行けておらぬ身で…」
「良いんだって、ミッチーが名前だけ入れとけって言ってたんだし。ほら、今日はもう何もないんだから、あの子連れてさっさと帰」
「──ほぅ?それは都合が良かった」
佐助がビクッと掴まれた肩に反応し、俺も後ろを向いてみると…
「…ホゥ。金吾よ、ヌシが珍しい…。ようやく真田の調査に身を入れるようになったか」
「ああ、なるほどな。良い心がけだ、金吾」
と言いながら、石田殿の顔は全く笑ってもいない。大谷殿は、いつもの不敵な笑いを浮かべているが…
「いや、これから旦那迎えに行くとこでさ、その」
「いつか、貴様の性根を叩きのめしてやろうと機会を窺っていた──毎度毎度チョロチョロ逃げおって。だいたい貴様は、真田について回っているだけだろう。助っ人業もせず」
「んなことないよ、旦那のマネージャーっていう大事な仕事してんだから。タオルや水筒渡したり」
「聞かずとも、以前の調査で全て承知済みだ。貴様のせいで、あれ以来特集が組めていないのだぞ。今日は、その分をしっかり贖ってもらう」
「えぇー…」
「(佐助、好都合ではないか。これで、小早川殿にも償うことができる)」
「(えぇぇぇ〜…)」
佐助は、政宗殿を目の前にするような顔になっていたが、最後には渋々従った。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
部室に入ると、毛利殿がデスクに着き、黒田殿が資料室と部屋とを忙しそうに行き来していた。
昔の記事をパソコンに取り込む作業は、今の活動の片手間になされている。
今日は、それが主であるらしい──俺も早速取りかかった。
「お前さんが珍しいな」
「仕方なくだよ。はぁ…」
嫌々そうな佐助を、黒田殿が珍しげに見る。
「なぁ、お前さんまだ辞めたいと思ってるのか?」
「え?」
黒田殿は、俺に言ったようだ。
「やるだけ無駄だぞ。小生はな、もう諦めて身を潜めることにした。…その代わり、卒業前にはデカい報復をしてやろうと思ってな…」
「はぁ…」
「お前さんは一年下だから、まだ良いじゃないか。…でだな、協力してくれないか?お前さん、三成のこと詳しいだろう」
「何か、絶対上手くいかない臭いがプンプンするけどね〜」
佐助が、呆れたように笑った。
黒田殿は、「やっぱそう思うか?」と、早くも落ち込んでいる。
(えー、と…次はあの箱だな)
そう思い手を伸ばすのだが、届かない。…今は、小早川殿の身体なのであった。
踏み台を運び、再び挑戦するのだが、
(な、何と…っ。あと少しのところで…)
箱の下を手が、スカッスカッと前後する。
「…かぅわぁいぃぃぃ…ッ」
嬉々とした(小)声を上げ、佐助が隣で様子を見ていた。
「(気付いておったなら、助けぬかっ)」
「(だって、スゲー可愛くってぇ。小っちゃい旦那ってのも、なかなか)」
「(小早川殿に失礼だぞ、佐助)」
「(俺様には、中身の旦那しか見えない。朝から、もう金吾くんの面影は見えなくなっちゃった。俺様、すごくね?)」
「(…それは、すごいな…)」
一度、眼科に連れて行かなければ。そう思っていると、
「ほら、言えば取ってやるのに。」
「「あ」」
長身の黒田殿が、箱をひょいっと持ち上げる。
「ほれ、頼む」
「え、ちょっ」
さっきまでの楽しそうな顔から一変し、佐助は、渡された箱をムッとしながら抱えた。
「どうしたんだ?いつもと違うことすりゃ、足滑らすぞ」
「えっ、あああの!うわ!?」
黒田殿は、まるで子供に対してするように、俺の脇下に両手を突っ込み、そのまま床に下ろしてくれた。
小柄とはいえ、なかなかの重さであると思うのだが…
さすが、見た目通りの力持ちであるのだなぁ、と感心する眼差しを向ける。
すると、後ろから凄まじい冷気が漂って来た。
[ 43/138 ][*前へ] [次へ#]