金吾さんの奮闘6
(何か、悪いことしちゃったのかなぁ…?)
最後の前田さんの顔が、少し気がかりだったけど、
「猿飛さん、どうしてここに…わぁ!?」
僕は、思わず横に飛びのいた。
何と、隣にいたのは──赤髪の『伝説』。
「伝説さん、いつの間に!…あれっ、猿飛さんは!?」
「………」
彼は、また紙を見せてくれた。
“変装代は、追加料金になります”
(えー!)
「すごいね、あれ変装だったの!?…って、」
──もういない。
ああ、またサインもらうの忘れちゃった…と、残念に思いながら、
(用心棒なんだよね…。さっきは、何が危険だったんだろう)
さっぱり分からず、首をひねる。
今になって体育の疲れが出たのか、自習に戻ってから爆睡してしまった。
雑賀さんに怒られるかな、とビクビクしたけど、保健室にいたってことにしてくれるって。
やっぱり、結構優しい人だったんだ…そう思って眺めてたら、彼女は、また朝のような顔をしていた。
やっとのことで、放課後。
今日は、真田さんの家に帰らないとだから、猿飛さんたちを待ってると、
(…あれ、メールだ)
真田さんの赤いケータイを取り出す。
猿飛さんからで、
“そっち行く途中で、ミッチーに捕まっちゃった!悪いけど、部室まで来てくれる?”
(えぇ〜…)
せっかく、今日は行かなくて良いと思ってたのに…
がっくりしたけど、
(…そうだ!)
やって来たのは、『ある人』のクラス。
まだ、人もまばらに残っていたけど…
「──真田?」
「…あっ!」
それは、探していた人じゃなかったけど、
(家康さぁぁん…!!)
つい叫びそうになったのを、何とか抑える。
いるだけで眩しい、学園一・爽やか好青年。
すごく優しくて、苛められっ子の僕を、昔からよく庇ってくれてたんだ!
三成くんがあんな風な分、家康さんは、本当に神様みたいに思える。
「珍しいな、お前が一人だなんて。何か用事か?」
家康さんが、嬉しそうに言ってくるから、僕も笑顔で、
「はい!ちょ…元親殿に用が…」
「元親か。多分、屋上じゃないかな?」
「おお、ありがとうございまする!」
「ちょうど良かった。ワシも用があるんだ、一緒に行くよ」
並んで歩き、屋上へ続く階段まで来ると、
「…どうしたんだ?」
「え?」
家康さんが、いきなり苦笑して僕を見下ろした。
「いつもは、ツンケンするくせに…」
(え…)
僕は、急いで頭の中の『旦那マニュアル』をめくる。
…すると、家康さんと真田さんは、あんまり仲が良くないのだということが分かった。
(しまった…)
と思ったけど、『どうして?』という気持ちにもなる。
家康さんは、すっごく良い人なのに。…真田さんなんて、絶対気が合うはずなのに。
三成くんから、仲良くするなとか脅されてるのかな。
僕も、三成くんの前で家康さんと喋っただけで、何度も怖い目に遭って来たし…
(というか、家康さんに冷たくなんてできないよぉ!)
僕は、笑ってごまかすことにしておいた。
────………
「元親」
「おお、家康──と、幸村…?」
長曾我部さんも、家康さんと僕が一緒なのに、驚いていた。
「元親殿、今日はこれから空いておりまするか?」
「お、おー、まぁ」
「では!」
僕は、彼の腕をガシッと掴むと、
「参りまするぞ、新聞部へ!」
「え、…はぁ!?」
──そう。
彼も、真田さん猿飛さんたちと同じく、幽霊部員の一人。
この機会に、僕の大変さを分かってもらうんだ、この人にも!
「ちょ、おい、待っ」
「某も、他人のことは言えませぬが、心を入れ換えたのでござる!これからは存分に、ともに本業へと力を注ぎましょうぞ!」
「や、でも俺、…あっ!そういや、今日」
「何もないんでしたよな、さぁ!」
『旦那マニュアル』によると、長曾我部さんは、割と押しに弱いとのこと。
真田さんや毛利様には、特にその傾向があるらしく、
(この人がいてくれたら、毛利様からの被害は少なくなるかも知れない!)
っていう、淡い期待も込めて…。
「観念するしかなさそうだな、元親」
家康さんが明るく、真っ暗になった長曾我部さんの肩を叩いた。
「…あ、徳川殿、元親殿に用が…」
家康さんがさっき言ってたのを思い出したんだけど、
「いや、単なる口実だ。じゃあ、部活頑張れ。三成たちによろしくな」
と、彼は笑ってドアの方へ歩いて行く。
(口実…)
「…真田?」
「あ…」
──まずい。
また、勢いで家康さんを引き留めちゃった。
ど、どうしよう…
まごまごしてると、
「今日は、何かツイてるな…。宝クジでも買って帰ろうかな」
家康さんは、冗談っぽく笑って屋上を出て行った。
…笑ってたけど、ちょっと哀しそうだった。
(家康さんは、真田さんと仲良くしたいんだ…)
今回は、伝説さんは現れなかった。
つまりは、家康さんは真田さんにとって危険じゃない、ってことだよね。
(家康さん…。きっと、真田さんに分かってもらうからね…!)
これで、長年の恩を返せるかも知れない。
僕は決意を胸に、屋上からコッソリ出て行こうとした長曾我部さんのチェーンベルトを、しっかりと掴んだのだった。
‐2011.11.9/16/23 up‐
※続編【真田さんと共闘】(旦那視点)あります。
もし良かったら、ご覧下さい。
あとがき
読んで下さり、ありがとうございます!
変な話をすみません。
外見は、幸村なので…(言い訳にもならん;)
ファンの女の子たちも、オカン佐助が邪魔なんです(^q^)
旦那ハーレムが見たかった。
そして、そんな攻めたちを見たいがために。
しつこく続きまして、お次は旦那視点など;
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