激戦へようこそ!3
(あのケーキの前では、出せるはずもない…)
「毛利殿?」
「…すまぬ、我は…」
「ほれ、これだ。毛利からのプレゼント」
「!?」
どんな早業か、元親が元就の贈り物を幸村に手渡した。
「長曾我部、貴様!」
「早く開けてみろよ、幸村」
「はい!ありがとうございまする、毛利殿!」
「……!」
──終わった。
…そう思う元就だったが。
「何と…!!」
「「なになに?」」
「Ah〜?」
佐助たちも寄って来る。
「えー、すっげー!!」
慶次の声が一番大きかったが、他の二人も驚いていた。
「こんなの、実際見たの初めて!」
「どこで買ったんだ!?」
現れたのは──
……“お菓子の家”
スポンジケーキやクッキーの壁、ドアは板チョコ、窓ガラスは氷砂糖、屋根はウェハース、庭にはジェリービーンズ…
とにかく可愛らしい、まるで絵本の世界のミニチュア。
(ケーキの方が、すごいのに…)
元就は面食らうのだが、
「これ、毛利の手作りだぜ?」
「マジでぇ!?」
「毛利殿、すごい!」
幸村は、感動で狂喜と言っても良いほど。
「ありがとうございまする!」と何度も繰り返し、元就の手を取り、振った。
「食べるのが、もったいのうござるな…。…某、お菓子の家に住むのが夢だったのです、小さい頃」
と、うっとり見つめる。
(…知っている。だから…)
毎年思っていたのだ──贈りたいと。
その思いを遂げられ、胸が温まる元就。
…自分の方が、彼以上に幸せであるように思えた。
──元親は、その様子を密かに微笑んでいたが、
「んじゃ、俺の〜」
と、ラッピングも何もない、簡素な箱を持って来る。
蓋を開けると…
「「うぉぉぉぉ!」」
「「何ソレぇぇぇ!!」」
全員、たちまち釘付け。
「お前、ホントこーいうの好きな」
「良く出来てんねー…」
「お、皆いる〜(…幸の人形、可愛い!)」
「持って帰んなよ?慶次」
「(ぎく)──こ、こんなデカいの、無理に決まってんじゃん!何言ってんだよ、元親」
幸村は、興奮で頬を紅潮させながら、
「元親殿、本当にありがとうございまする!
見て下され、毛利殿!毛利殿はここ──元親殿の家の、すぐ近くなのですなぁ!」
今度、遊びに行っても良いですか!?などと、またもや元就を喜ばせる台詞を放つ。
「──あ、ちょっと行って参りまする」
母親の声に、幸村は部屋を出て行った。
残されたメンバーは、ジオラマとお菓子の家を、熱心に鑑賞中。
「な〜?作って良かったろ?お菓子の家も、お前の人形も」
「…フン」
(こやつは馬鹿か。…我の物より、自分を作れば良かったものを)
…小さな街の中には、元親の人形だけが、いなかった。
「なぁ、お前って器用だよな〜。今度、一緒に作らねぇか?」
「何を」
馬鹿な、と元就は続けようとしたが、
「そーだな…SFものとか。二人なら、もっとスゲーの作れると思わねぇ?幸村、びっくりすんぜ〜きっと!」
と、その輝く顔に、飲み込まされる。
(…妙な奴だ…)
だが、不思議と嫌な気持ちではない。…以前ならば、冷たくあしらっていただろうに。
「今年は、毛利くんと元親に完敗だな〜」
慶次が「ちぇー」と笑うと、他の二人も、仕方なさそうに頷く。
(……)
元就の心は、気が向けば付き合ってやるか…というものに、少し傾いていた。
「お待たせし申した!」
幸村が戻り、母親から預かったらしい料理の追加を、テーブルに運ぶ。
そして、
「これで完成でござる!」
と、ジオラマに何かを置いた。
それは──
「幸村、お前これ…」
元親は目を丸くし、「まだ、持ってやがったのか!?」
二体の人形。…それも、とても下手くそな。
「幼稚園のときにもらった、某と元親殿の人形!分身の術〜…でござる」
と、可愛い幸村の人形の隣に、その、何者か分からない赤い物体を置く。
その横に、元親…らしい人形を並べた。
「この二人にも住む家ができて、本当に良かった!」
元親は居心地悪そうに、
「やめようぜぇ…もっと、ちゃんとしたヤツ作るし…」
「某は、こちらが良うござる」
幸村は、ちょんちょんっと二体をつつき、元親にニッコリ微笑む。
「お前が良いんなら、構わねぇけど…」
元親も、少し照れたように苦笑した。
(──何だ、この空気は)
元就が、段々眉を寄せ始めていると…
「またぁ…。ったく、いつも良いとこ取るんだからな〜親ちゃんは」
「Shit…!人のこと、とやかく言える立場じゃねーよな」
「無欲の勝利かねぇ?…でも、必死な俺らが可哀想だよ、くっそぉ」
後ろでコソコソ話す三人。
元就が振り向くと、
「「仲良くしよーぜ、『元就』!」」
「俺様たちのことも、名前で呼んでね?『就ちゃん』」
素晴らしく爽やかな笑顔×3。
「…まずは協力して、強敵を討つ作戦か?」
元就の言葉に、三人は笑って、
「いやいや、ホントに関係なく!皆、就ちゃんのこと気に入ってんだから」
と、佐助がその肩を叩く。
「…それに、本当の強敵が誰かは、すぐに分かると思うよ」
──その言葉は、後に嫌というほど知ることになるのだが。
(しかし、とりあえずは目の前の敵から…)
と、未だに幸村と盛り上がっている元親へ視線をやり、
(…まぁ、一度だけは一緒に作ってやるわ)
そして、手柄を全部自分のものにしてやろう。…そう思い、含み笑いをした。
──つもりだったのだが、本人も気付かない内に、温かく柔らかい笑顔になっていた…。
‐2011.9.25 up‐
あとがき
読んで下さり、ありがとうございました。
前から書きたいと思ってたやつを、拍手にした← ゆえに…乱文、散文すみません(@_@;)
お菓子の家を作ってあげたい就様、男の子らしい少年アニキの部屋、面倒見の良いアニキのお陰で、皆と仲良くなる就様…みたいなの、やりたかった欲。
こんな小学生いない^^
お誕生日会だって、低学年までだろうと思いながらも;
お粗末さまでしたーm(__)m
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