激戦へようこそ!1
親と就の出番が多い、幸総受け、小学生パロです。多分ほのぼの。
頑張る二人(^^)
他、/佐/幸/政/慶/が登場。孫/かす、が少し。
乱文散文、ごめんなさい;
(全3ページ)
(やっべぇ…っ!急いで帰んねーと)
元親は、家までの道を駆けていた。
小学校五年生にしては数少ない、他の同級生たちよりも、頭一つ抜きん出る背丈。
顔付きも、昔よりかは男らしくなってきたように思え、最近では、鏡を見るのも楽しみとなっている。
今晩は、両親ともに不在。明日は休日──
しかし、彼にはしなければならないことがあった。
もう今日しかないのだというのに、つい、毎日夕方まで遊び惚けてしまい…
「──お帰り」
「は…!?」
玄関がいきなり開き、中からの出迎え。
「孫市!何で!?」
近くに住む、社会人の従姉であった。
…そして、玄関に置かれた、いくつかの靴。
「今日、叔父さんたちいないんだってな。お前の世話を頼まれた」
「はぁ…っ?別に要らねーよ、一人で」
「まぁ、そう言うな。こっちの台所の方が、広いし。私の客も連れて来たが、気にしなくて良いから」
「客ぅ〜?」
元親が面倒そうに、リビングに入ると…
「ああ、久し振りだな」
と、かすがが立ち上がった。
「…ども…」
…孫市同様、愛想のない女。
元親は、こんな二人と過ごさなければならない状況を作った両親を、とにかく恨んだ。
──しかも。
「お、お前!何で…!?」
呆気にとられる元親。
「私を訪ねて来てな。で、一緒に」
「………」
彼も、元親と同じくらい眉を寄せてはいたが、諦めの顔にもなっていた。
…毛利元就。
クラスは違うが、家が近所のため、顔は見知っている。
元親とは全くタイプの違う、インドア優等生。完全な、一匹狼。
その彼が、一体どうしてまた…
「──これを作るため、教えを請いに来た。母は、そういうことに無関心ゆえ」
と、元就は一枚の紙を見せた。
「こりゃあ…」
「明日、彼はそれを持って行きたいんだそうだ」
孫市の言葉に、「明日!?…お前も行くのか…っ?」と、驚く元親。
「…招かれたのだ」
元就は、変わらず無表情だが…
「へェー…。──これ、お菓子か。すげぇな。あいつ、喜ぶだろな」
「………」
「てか、孫市なんかに頼むより、慶次んとこの姉ちゃんの方が…」
「──元親、聞こえてるよ。…だから、かすがを呼んだんだ」
「私にかかれば、そんなもの。軽い軽い」
かすがが、鼻で笑う。
「前田は、口が軽そうだ」
…元就の言葉に、強くは言い返せなかった元親。
三人とも泊まるとのことで、さらに恐々としたが、
(…まぁ、良いか。こいつらは放っといて、俺は二階に行ってりゃ)
それから、母親が用意してくれていた料理を、仕方なく三人にも提供したのであった。
夕食も風呂も済まし、さぁとりかかるか…としたとき。
「おい、元親。材料が切れた。コンビニで売ってるから、ちょっと買って来て」
と、孫市に指令を受け、
「何で俺が。お前、俺の面倒見に来たんじゃなかったっけ?」
「今、手が離せないんだ、三人とも。すぐ近くだろ。何かあったら電話しろ」
と、ケータイを渡された。
渋々受け取る元親だったが、
「──そうだ。細かい部分だから、慎重にな…」
かすがの厳しい教えにも、何も言い返さず、真剣に取り組む元就の姿。
いつもの冷めたような雰囲気の、影も見えない。
…元親の内の反抗心は、どうしてか、綺麗さっぱりなくなってしまっていた。
(うーん…。こりゃ、完璧徹夜だな)
元親は項垂れるが、…何故か、先ほど買い物で取られた時間については、悔しく思う気持ちにはならなかった。
喉が渇き、下に降りて行くと…
「──すげぇ」
数時間前には、形すらできていなかったのに、…よくぞ、ここまで。
「だろう。…と言っても、私は指導したのみ。あいつが、ほとんど作ったんだ」
かすがが、ソファに眠る元就を示した。
「頑張ってたよ、本当に。…お前の部屋に、布団敷いたから。寝かせて来る」
と、孫市が元就を運ぶ。
元親の作業場所は別の部屋なので、気兼ねすることはない。
元親は、完成したお菓子を眺め、
(…俺も、踏ん張ろう)
と力を入れ直し、台所を後にした…。
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