逆転サヨナラ2

夜は旦那の家に差し入れ持参で遊びに行く。
旦那は部活が忙しいから、勉強の手伝いも兼ねてだ。
まあ、旦那は真面目だから俺様の力はそう必要もないんだけど…。少しでも助けになれたらって。


「お疲れ、旦那。一息入れよう」
「うむ。すまぬな」

旦那の家とは家族同然の付き合いで、俺様はおばさんから預かった飲み物を渡した。


「…なぁ、佐助」
「ん?」
「お前、今交際している人はいるのか?」
「ブッ!」

突然の質問とその内容に、さすがの俺様でも普通に返せなかった。


「な、何…急に」
「いや…。ほら、この間交際を申し込まれたと言っていただろう?あれは…」
「あー…断ったけど。何で?」
「…そうなのか」
「や、全然知らないコだったしさ。てか、ホント何で?」

いつもこんな話をしようものなら、破廉恥破廉恥とものすごい騒ぎになるのに。


「い、いや…。その、聞かれてな。お前は人気があるので」
「マジでぇ?旦那に聞くなんて、勇気あるねぇ」
「…何だ」

むぅ、と旦那は口を尖らせる。





…本当は、旦那が好きだから断ったんだよ。


って言ったら、そりゃもう仰天するだろうなぁ…




「佐助、何か欲しい物はないか?」
「へっ?」

またまた唐突な質問。
俺様の誕生日はもう終わった。旦那もプレゼントくれたし、何だってまた…


「欲しい物、だ。なぁ?」
「どしたの、一体…」
「…良いから。何かないのか」

よく見ると、旦那は笑っていない。表情が何か硬い。
――どうして。俺様、何かヘマをしたんだろうか。


「欲しい物…」
「…行きたいところ、見たいもの、やりたいものでも構わぬぞ?」
「え…」

行きたいところなんて、別にない。強いて言えば旦那のいるところ。



見たいもの……やりたいもの。は。



「どうしたのよ、ホントに…。――あ、もしかして何かやらかしたぁ?俺様にやましいことでもあるんじゃねーの」
「なっ、あ、あるわけがなかろう!」
「怪しいなぁー」
「い、良いから、答えよ!何かあるだろう!?」





…あるよ。


そりゃもう、すっげぇすっげぇ入手困難な唯一の。


その一つだけ。

それがありゃ、俺様はずっと一生安泰。何にも負けない。
結婚や子供、幸せの象徴すら軽々超えるよ。





だけど、言えるはずないだろこんなの。





旦那は、真っ直ぐ俺様の目を見ている。
何だか、隠している気持ちまで見透かされている気にもなるけど。


言わないよ。


でも、これからもきっと、俺様にそれが許される日は来ないんだ。




そう思うと、胸が押し潰されるように苦しくなった。

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