誓った夏の日3




「―――…!」



(……声?)





「政宗様ー…!?」



今度こそは――本物。

チカッと、強い光が二人を照らす。



「小十郎!!」


「政宗様!!真田――」


凄まじい形相で、洞穴に駆け寄る小十郎。
光は、懐中電灯からのものだった。

雨は、既にすっかり上がっている。


(うわッ……絶対、殴られる…!)


政宗は、幸村との手を離し、顔を庇うが、


「良かった、ご無事で…!」

と、小十郎は政宗の肩をしっかりと掴む。


「小十郎…」


掴まれる痛さよりも、胸や鼻の奥に迫るものの方が、数倍勝る。
だが、幸村の目もあるせいで、いつも以上に素直じゃない態度を見せる政宗。

…小十郎には、何もかもお見通しだったが。


「――真田も。二人とも偉いぞ、大人しくしてて。…怖かっただろう」

小十郎が、幸村の頭を軽く撫でる。


「…い、え…。政宗殿が…動くなと言って下さり…」

「そうか…。二人一緒で良かった。…さあ、帰ろう。今日はごちそ――」


キュッと掴まれた服の端に、「…どうした?」

小十郎が、幸村を覗き込むと、



「!!?」



小十郎よりも驚いたのは、政宗。


…幸村が、小十郎の胴にひしっと飛び付いたのだ。


「ゆ、幸――」
「真田…」


「〜〜〜……ッ」


幸村は、顔を思い切り埋めて上げようともしない。
――多分、いや、間違いなく泣いて――

…男らしさを目指す彼らしく、嗚咽は最小限に抑え。



「…ああ…怖かったよな…。――安心しろ。俺も政宗様も、誰にも言やぁしねぇから」

小十郎は優しく微笑み、幸村の背中をポンポン叩く。

「――ぅ――…ッ」
「今日は、おめーの好きなモンばっか並んでるんだ、腹空かせた分、そりゃあ美味ぇはずだぜ」
「――……」
「政宗様が、あれもこれもと、メニューを決めて下さってな…」

「…!――さ、むね、どのっが…」


幸村は顔を上げ、「政宗殿…」と、嬉しそうに笑った。
涙やら何やらで、グチャグチャだったが…


小十郎は苦笑し、

「…政宗様も。――遠慮召されますな」

と、両手を広げて見せる。


――どうやら、政宗も幸村と同じ心境なのだと思ったらしい。

…政宗が、それはそれは情けなく、今にも泣きそうな顔をしていたので。


「バカ言ってんじゃねー。…誰がだ」
「…それは、とんだ失礼を」

と、小十郎は小さく笑ったまま腕を下ろす。



(今すぐ……今すぐ大人になりてぇよ、…God…!)



…今度は、悔しさと情けなさとで鼻の奥や目尻が熱くなり、拳を握る政宗。




「――あ…!?まっ、政宗殿ぉ!!」

幸村が小十郎から離れ、その腹の辺りから何かを掴み、


「これ!!」


バッと見せたのは、先ほど追ったものより、遥かに大きい――


「ん?…ああ、そんなもん付けてたのか俺は。気が付かなかったな」

自身に呆れる小十郎。


「やりましたな、政宗殿!これならば、元親殿の暁丸殿に勝てそうでござるか!?」
「あ、Ahー…おう」

その答えに、狂喜する幸村。


「名前は、何に致しまするか!?」


政宗は、その目の中に映る、未だ幼い自身の姿を眺めながら――



(…これを、いつかきっと……)






「――真田丸……」


まずは、自分なりのご機嫌取りから初めてみるか…と、やはりまだ治りきらない面持ちのまま、そう誓う政宗だった。







‐2011.8.8 up‐

あとがき


読んで下さり、ありがとうございました♪

いつか、大人のダテサナ挑戦したいです。そう思い、溶けた妄想。
幸村と政宗は、ケンカしながらも一番心おきなくはしゃげる仲良しさ…とかだと良いなぁみたいな。
お子さま時代に、色々冒険して欲しい(^m^)

またもや幸村を泣き虫にしてしまい、すみません…;


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