誓った夏の日1





政→幸、小学生パロです。一応、ほのぼのと言い張ってみる(^^;

小十郎が少し登場、佐助は出ませんが話題に上がります。


(全3ページ)
















時間が戻ったら良いのに…あのときに。


――長い人生の中で、誰もが一度は思ってしまう願いではないだろうか。


(何であのとき…)


政宗は、隣で膝を抱え、いつもの半分も開いていない物憂げな瞳を見て――

…恐らく、生まれて初めての強い後悔というものに襲われていた。











「おお、政宗殿!」
「よ〜、遊びに来てやったぜー」

上から目線のその言葉にも、

「いらっしゃいませ!今日は、何を致しましょう!?」

と、ニコニコ、ワクワクといった表情を何のてらいもなく向ける幸村。

「暇だったからな、お前とでも遊んでやるかなーと思ってよ」
「はい!」

昨日もそう言い、彼はここを訪れていたのだが。

――青空に入道雲。
ジーワジーワと合唱する蝉。
軒先で奏でられる風鈴の音が、耳と頭に涼しさをもたらす。

子供にとっては、一年で一番嬉しく宝物であるに違いない――夏休み。

二人は、遊びたい盛りの小学生。
政宗は、ついこの間teenagerの仲間入りを果たしたばかりで、何やら、ぐんと大人に近付けた気で一杯になっていた。

世話役の小十郎からは、これまでとは一味違うcoolなお祝いをもらえ、(決して言わないが)彼の格好良さが自分の手に入る日も、そう遠くはないかも知れない…などとも。


「――…?」
「政宗殿?」

政宗は、キョロキョロし、

「Ahー…あいつは?」
「あいつ?…あ、佐助のことですかな?」

いつも自分を目の敵にする、あの大人げない大人が、今日は一向に現れない。


「今日は、ご友人の部活の試合を見に行き申した」
「Huーm…。じゃ、今いねーのか」

政宗の心の中に、一気に湧き上がる喜び。

「泊まるのだそうです。だから、今日は…」
「マジか!?」

喜びが、沸点を超えた。

「んじゃよ、今日お前ん家泊まって良い!?あ、俺ん家にするか!」
「えっ?」

「お前、小十郎の料理好きだろ?うめーぞ、あいつの飯!」
「あっ、それは――はい」

「よし!」と、政宗は頷き、早速電話を拝借し、小十郎に連絡する。
彼が、幸村を預かっている武田家の当主に直接挨拶し、夕方迎えに来るとの話でまとまった。












「政宗殿〜、見付かりませぬぅ…」
「バカ!さっきから何回目だぁ!?もっと気合い入れて探せ」
「しかし…。――朝方の方が捕りやすいのでしょう?」
「あくまでそうなだけで、昼間でも奴らはいる!お前、そんなデカい目二つも持って情けねーぞ?」
「む…」

心の声が、すぐにもれる幸村。
だが、目のことを言われると、彼の手前弱い。

二人は今時珍しいことだが、山の中、カブトムシの捕獲に必死になっていた。

どうやら、先日田舎から帰って来た元親が、向こうで捕ったという大きな一匹を、それは得意気に見せていたのが悔しかったらしい。


「あいつの暁丸以上にデケェ奴捕んぞ!飼い主は、お前と二人ってことにしといてやっから」
「…某は、お二人のよりも大きいものを捕りまする」
「(こんの負けず嫌いが…)――OK、んじゃ、勝負だ」

ジリジリと照らす太陽。
夕方前とは言っても、その熱はなかなか下がるものではない。


「――あ!幸村、見ろあれ!」
「えっ?」

政宗の指す先を見てれば、太い幹に留まる、立派な――黒々と輝く…

「ま、政宗殿!」
「シーッ…!…そーっと行くぞ、そーっと…」
「は、はい…」

ゆっくりと近付く二人。
しかし…


『ブブブブ…』


「「ああ!?」」

飛び立つカブトムシに、慌てて――

「追うぞ!」
「あ、待っ――」



―――………



「……もうちょいだったのによ」
「悔しゅうござるな…」

…散々追ったのだが、結局は届かず終い。


『ぐぅぅ』


「…腹、減りましたな…」
「――帰るか」

そうだ。
今晩は、あの邪魔なあいつもいねえ、めったにない日だったってのに。


(カブトどころじゃなかったぜ)


二人は、そう引き返そうとするが…


「……」
「……」

…ゆっくり、顔を見合わせる。


「あの……」
「あ、あっち!…じゃなかったか…?」
「そっ、某もそう思ったところで…」

そのまま歩くのだが…

…確実に、見たことのない風景ばかりが広がる。木々が、多く…森が深くなっていく。

空は既に、夕方の…。
しかも、この時期に多い、曇天がいつの間にか迫っている。


「あ、ケータイ…」

と、幸村はポケットを探ろうとし、「…あ」

「………」


幸村は、普段それを持ち歩いているのだが、自分からは一つの電話番号にしかかけられない、単なる防犯用の代物。
その一つというのが――佐助の番号で。

今日は、どうせいねーんだから別に良いだろ、と政宗が家に置いて来させていた。

…それがあると、佐助も一緒に行くような気がして、面白くなかったから――という気持ちが、一体何から来るものなのかは、まだ分かっていない政宗だが…

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