真実の愛3
「…だから、当然こうなるって分かってたでしょーに…。あんなに格好付けといて、バカみたい」
「うるせぇ!ビービー泣いてばっかだった奴だけにゃ、言われたくねぇ」
「──まぁ、良いけど。…こうして、旦那もいることだし」
───………
「どうも〜、初めまして。やっと話せるね、二人とも」
「「……!?」」
突然の僕の登場に、二人は固まっている。
…残念ながら、幸村くんはまだ目を閉じた状態だ。
「何だ?テメーは」
「ちょ、見てあれ──羽!…天使とか…?」
あ、さすがは佐助くん。
「当たり〜!」
と、満面の笑顔で返してみれば、
「ウッソぉ…。旦那はともかく、俺様が天国に行けるなんて…信じらんないんだけど」
「そーだよなぁ…。俺と幸村だけで良かったのに」
「いや、天国とかじゃないよ、ここ。実はですねえ…」
──僕は、これまでの話を聞かせた。
…二人の顔つきが、徐々に強ばっていく。
「てめぇ…!」
「うわ…っ!?」
殴りかかって来た政宗くんの腕を、翔んでかわす。
「い、いきなり何を…」
「うるせぇ!全部、お前のせいじゃねーか!今までのことも…」
「…オネショも、誘拐も…アンタがいなければ、なかったってわけなんだ…」
佐助くんは、冷淡な目と顔で見ている。
「お、オネショはともかく、誘拐は違いますって!」
「今の状況なんざ、一番最悪だろ!天使のくせに、人陥れやがって」
「ホントに天使?死神の間違いなんじゃないの」
僕は、さすがに慌てて、
「今回は、予想外だったって言うか…。幸村くんはここに来ないで、二人だけが──って予定していたので」
「何だ?俺らだけなら、殺っちまって良いってか?」
「…予定は変わっちゃったけど、僕の一番知りたかったことが分かるチャンスかも…ってね。…これを、レポートの締めにするからさ」
「…何。どうすりゃ良いの?」
佐助くんは、相変わらず睨んでるけど…
「幸村くんを幸せにするための、君らの選択を教えて下さい」
と、僕は二人に紙を渡した。
そこには…
□佐助くんと幸村くんを返す
□政宗くんと幸村くんを返す
□佐助くんと政宗くんを返す
「選んだ項目に、チェックしてね。返すってのは、ここから元のところへって意味です。あ、海じゃなく、ちゃんとしたとこに帰してあげるからね」
「…残りの一人はどうなるの?」
「それは内緒です」
「てか、選択問題にすらなってねーけどな。最後のなんかあり得ねぇし」
「ホントホント。こんなのわざわざ聞かなくても、分かってるでしょ」
二人は、サッとチェックして、僕に紙を戻した。
僕は一瞥して、
「……これが、君らの想い……」
彼らのお陰で、無事合格。
僕は、とうとう昇進することができました。
珠の中に、試験中に撮った彼らの思い出が、映し出される。
三人は、誰よりも幸せそう。
…幸村くんの笑顔は、何よりも素晴らしい。
「……」
珠に触れると、幸村くんだけの顔が映る。
…一番、新しい情報。
見たことのない哀しい表情に、僕の胸は痛んだ。
───………
『…どうしてこれを選んだの?』
政宗くんと二人だけの空間で、僕は尋ねる。
『Ha?お前が言ったんだろ、幸村を幸せにしろって』
『うん、そうだけど…』
『俺は、気が長くなるほどあいつを見て来た。知ってっかぁ?あいつの一番イイ顔ってのはな…』
『──……』
───………
目の前の佐助くんは、少し嘲るような笑みを浮かべている。
『これで、アンタが悩むこともなくなったでしょ?二つの答えは一致したんだから』
『…あー…』
佐助くんは、クスクス笑うと、
『アンタも、昔から俺様たちを見てるんだから、分かってると思うけど…。たとえば、あのオネショのとき。──助けてやる代わりに、手に入る予定だったのになぁ…』
『………』
『…あいつの歯、すっごく綺麗でしょ?ほとんどが偽物だからね。アレ取ったときの顔、超笑えるんだよ〜知ってる?』
『──……』
『手の火傷もね……まぁ、キレイにはなった方だけど』
『……』
『…で、今回。…また、こんな間抜けなことしてくれちゃって。あんな奴に、任せられるわけないでしょ…旦那を』
佐助くんのその笑みに、僕は次にやることへの心が決まった。
さよなら、皆。
最後に二人と話せて良かった。
僕は、きっと合格できるよ、ありがとう──
…そう思いながら。
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