ファーストは誰のもの?3
「――結局、テメーかよ、あいつの初めては」
「…だが、向こうはそのつもりはないではないか」
「だよな。…ま、いーじゃん。甘い思い出ってことにさせといてよ」
「…残念だったねぇ、慶ちゃん」
「え?」
「あのね〜、それ一番最初にされたの俺様だし。その魔法」
「………」
「だから、やっぱり旦那の初めては、俺様」
「それも、向こうはそのつもりねぇじゃねーか」
「アンタなんか、無理やりだけどね。ホント最低。俺様、ちゃんと旦那からしてもらったもん」
「お、俺だって…!」
「だから、幸村にはその気は…」
「何の話でござるか?」
「Ah〜、今皆のファーストキスはいつだったのか、っていう…」
「ファーストキ…ッ!?」
「――あ、旦那…」
「は、は、破廉恥でござるぁぁぁー!!」
…幸村は、教室から飛び出して行った。
「…小学生のときまでの旦那の方が、破廉恥だよね」
「あ、さっけ、そんな風に思ってたんだ?言い付けてやろ」
「だって、そうでも思わないと悲しくなるじゃん。…分かってますよー…カウントに入らないってのは」
「…つまり、本当の初めては、これからということになるのか?」
「Haha!次こそは俺だな!」
「………」
ずっといたのに、完璧に空気扱いだった元親は、いつものように溜め息をつき、一人教室を後にした。
「――あり?帰ったんじゃなかったのか?」
昇降口で佇んでいた幸村の姿に、元親は少々驚く。
「――皆、まだ帰らぬのですか…」
(ああ、何だ…)
元親は、心の中で笑ってしまう。
飛び出したは良いが、一人で帰るのも寂しい――しかし、さっきの手前、戻ることもできず…
「もう置いて来た。――帰ろうぜ。たまにゃ、こんな静かなのもアリだろ?」
「……」
幸村も微笑み、元親の隣に並ぶ。
普段のように、気の合う二人はいかにも男臭い話に盛り上がっていたが…
それぞれの家への分かれ道で、幸村が立ち止まった。
「…?幸村…?」
「……」
押し黙っていた幸村だが、
「も、もも…」
「桃?」
「も、元親殿のっ――」
「俺の?」
「ファ、ファースト、キ…ッ」
「……!?」
――元親は、目を丸くした。
(な、何で、んなこと…)
…元親の唇に、初めて触れたときのあの感触が、まざまざと浮かび上がってきた。
「いきなり、どした…」
「そっ、某は……」
幸村は、顔を真っ赤にさせながら、
「某の、ファースト……は」
「お、おう……?」
とうとうこいつも思春期らしい成長を遂げてたか、一体誰の名前を挙げるのだろう……そんな思いが元親の頭を駆け巡る。
妙に緊張しながら、次の言葉を待っていると…
「――つい、この間の。……遠足の、
……帰りの、バスの中で……」
「――……」
くるっと踵を返す元親。
「元親殿っ?」
「――そりゃ、夢だろ。あるわけねーよ、俺がお前に」
「…某、元親殿と申してはおりませぬが」
「………」
「元親殿…」
「――俺の、初めては、幼稚園のとき…」
「あ……」
ポツリと呟かれた声と内容に、幸村の顔は陰る。
「……同じこと、した。
――同じ、相手に……」
「……え」
幸村が顔を上げると、元親は後ろ姿のままだったが、いつもの白い首筋と耳が、自分の好きな色に染まりきっているのが目に入る。
…幸村の胸が、甘く疼いた。
「あのっ、某はあの日から何故か――」
幸村の言葉が、一体どうしてそこで切れたのかは分からないままだが、彼らからしてみればこの一番の狡猾者――
その制裁は、それからしばらくの長い間、ネチネチとどこまでもしつこくなされたのだった。
‐2011.7.26 up‐
あとがき
読んで下さり、ありがとうございました♪
総受けと言えますかね、これは(^^;
ホント突発文で、よめるオチ申し訳ない!突然、元親に美味しいとこ持ってってもらいたくなり、止められませんでした!
初めはそれぞれ別の話にするつもりが、くっつけちゃえってなり、こんなことに
お粗末さまです〜;
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