喜楽な世界



※佐幸、病んでます注意。

でも多分、明るい狂気(@゚▽゚@)


突発的乱文m(__)m


(全1ページ)













人間、楽しいことや嬉しいことよりも、苦しくて悲しいことの方が、なかなか忘れられないんだって。

どっかでそんな話を聞いた気がするんだけど、不思議だよねぇ。
前者はずっと覚えておきたいし、後者はすぐにでも一切忘れたいのに。
上手くいかないよね、人間の頭って。

でも、実際本当にそうだよなぁってつくづく思うよ。

アンタといると、楽しくて嬉しくなることが毎日溢れる。
俺の脳なら、それを一つたりとも忘れることなんてないんだけど、たとえばそれが百個あったとしても――辛くて悲しいこと一個に、たちまち負けてしまうんだ。

あ、辛くて悲しい、じゃないな。

暗くて底無しで。
冷たいのに熱いって。…意味が分からない。

憎らしい
妬ましい
浅ましい

二人だけなら、嬉しいものばかりで、ずっと幸せでいられるのに。

どうすれば、アンタは俺だけを見てくれるようになるのかな。


寂しいなぁ。


いくらくれても、足りないんだよ。

だって、俺が欲しいのは多分、そういうのじゃなくて、

………



「一番、忘れたくても絶対できない記憶って、何だと思う?」
「何だ?謎々か?」
「ううん、単に俺様の考え。…多分ね、これだと思うのね。真っ先に浮かんだから、ホントはもっと他にあるのかも知れないんだけど」
「……何だ?」

「好きなの選んで?」


目の前に置かれた、包丁と革紐。


「………」
「別に、この二つじゃなくても良いけどさ」

と、その両の手を幸村の首筋に当ててくる。ヒヤリと伝わる冷たさは、昔から少しも変わらぬそれ。


「…じゃあ、それにする」
「え?ホントに?」

佐助は顔を明るくし、「嬉しい。…実は、これが一番良いなって思ってたんだ」


「そうか。良かった」

幸村も微笑い、目を閉じた。

しかし、


「違う違う。旦那、そうじゃないんだよ」

クスクス笑う声。


「え?」
「逆、逆。――さっ、お願い」

佐助が、幸村の手を自身の首元へ誘う。


「あ、大丈夫だよ?後始末は頼んであるからさ。お金は腐るほどあったし、一番信頼できるとこに任せたから、安心して?実際見て、確かめたし」
「……」
「もうね、ホント手際が良くて感心しちゃった。跡形もなく全部バッチリやってくれんの」


「…どうして?」
「え?だからさ、」

佐助は苦笑し、「絶対、忘れらんないでしょ?ほら、さっきした話」

「――……」


「あー嬉しいなぁ。最後に、そのあったかい手に触ってもらえるなんてさぁ…。そのときの感触も、俺の顔も声も、その身体と目と記憶に刻まれるのかと思うと、それだけで逝っちゃいそうだよ」

「……何故……」


佐助は表情を変えず、


「いやー、さすがに周り全員やるには、ちょっと時間も金もかかり過ぎるなぁってさ。で、ふと思ったら、あれ?これが一番お得なんじゃないの?って」

「得なものか。…お前は、いなくなるのだぞ。それを確認するのも、感じることも叶わなくなるのだぞ?」

「えー、だってこうする以外、もうないもん。旦那がいて俺様がいて、他にも色々なものがあるならさ。…いつかは、離れなきゃいけなくなる。この国の警察は優秀なんだから」

「………」


「さあさあ、早くっ。早く、俺様を旦那の中に取り込んで?首から熔けてドロドロになって、早く旦那の隅々まで行き渡りたい。…焦らさないでよ。俺様もう、我慢の限界。お願い、旦那ぁ…」


幸村の手に、力が入る。


「旦那……」


目を細め、恍惚の呼気をもらす佐助。


「佐助、聞いても良いか?」
「んっ……何?」
「俺は、この後どうしたら良いのだ?」
「どう、って?」
「お前がいなくなった後」

「俺様、これからは旦那とずっと一緒だよ…。旦那の中の、どこにでもいるよ。これで、旦那の身体の外側も内側も、全部俺様だけのもの。外側は、これからはそうじゃないかもね。でも良いよ。内側のが、断然旦那に近い…」

「しかし、それではもう、お前に触れることができぬ」
「別に良いじゃん、そんなの。こんなもんに触り続けてたら、冷まっちゃうよ。せっかくこんなに温いんだから…」



――幸村が手を離した。



「……」

佐助は、絶望的な顔になり、


「何でだよ……こんなに頼んでんのに。どうしてアンタはいつも、俺にこんなひどい仕打ちをするわけ?一度期待させておいて、それはないでしょ…」


俯く顔の額に、幸村が己の同じものを当てた。




「……もう、熔けた。――お前は既に、この俺の身体の中に、全て行き渡った…」




「―――え……」



幸村は悲しげな瞳で、

「すまぬ。お前をここまで苦しめて。俺への気持ちを、こんなにも…」


「旦那が悪いんじゃないよ…謝らないで」




「…お前は、本当に優しいな」


幸村の口が、歪に形を変える。




(……え?)




初めて見る、その笑み。
顔を上げると、やはり初めて目にする……




「へぇ…。旦那、そんな顔もできたんだ…?」

佐助の唇も、それと同じ形を作る。


「落胆したか?」

フフと笑い、どこか蔑むような幸村の表情。


「んーん。…でも何で?逝く前に知りたい」


幸村はクツクツと抑えるように笑うと、

「お前はどこにも行かぬ。俺とずっと一緒なのだろう?」
「え……」


「やっと叶った。…俺も、長い間、それだけを望み続けていた…。ありがとう、佐助。お前は鋭いから、きっと気付かれてるはず…
一生叶わぬだろうと諦めていたのだ…!」


「旦那…」

佐助は、にわかに驚いた目で、

「じゃ、俺の本当の気持ち知ってて」


「お前が悪いのだぞ?何度申しても、俺を信じぬゆえ。俺は、初めからお前だけをお前と同じほど想っておった。なのにお前は…。
俺ばかりがこのように堕ちるのは、悔しいだろう?ならば…と。……お前も、俺と同じところへ引きずり落としてやる。そう思って、な…」


「へぇ……」


「お前は、外側にも内側にもおらねばならぬ。当然の罰だ…俺をこんな人間にさせた」

「喜んで受けるよ。……旦那のその顔、最高だね。俺様、さらに参っちゃった」


「そうか……それは何より」

幸村は、今度はニッコリと無邪気な笑顔になり、


「では行こうか、佐助」
「え?」


「他には誰もいない、邪魔されずに二人でいられるところへ。…もしくは、周りを一人ずつ片付けるか…?二人ならば、全て上手くやれるというもの」


佐助は歓喜の声を上げ、


「うん、そっちが良いな!俺様、慎重派だからねぇ。そうしときゃ、もう怖いものなんてなくなる…。――ああ、何度も妄想してたから……興奮してきちゃった、旦那」


「俺もだ。早く二人だけになろう、佐助。楽しいことと嬉しいことだけに、思う存分この身を委ねよう」

ハハッと、幸村は子供のように輝く目で笑った。


「じゃあ早速…まずは、あの一番邪魔な奴から!…行こっ、旦那!」

「ああ、そうだな!」








ありがとね……旦那。





……掛かってくれて。





二人だけの時間が訪れた暁には、今度こそ全部、一つになっちゃおうね?


絶対だよ……















‐2011.8.7 up‐

あとがき


乱文、失礼致しました;
かつ、内容についても。


読んで下さった方、ありがとうございます。誠に申し訳ない(--;)

二人は付き合ってるんですが、佐助がなかなか自分の気持ちを信用しないんで、長年ジリジリしてた幸村。佐助は、初めから陥れるつもりで。今回、どっちに転んでも嬉しいわけだから、一つ確認してみようかなと起こした行動。

ラブラブ!


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