みんな家族2-4






さっきの話は、確かに前半は捏造だが、幸村が政宗を犬から救おうと〜は、だいたい正しい記憶であるのだが…


『そっ、そのこを、ぉおおはなし、くだされぇ…!』

──と、涙目で。

政宗はまずその顔に一目惚れし、たい焼きを投げるときの真剣な顔(悲愴感だったらしいが)と、逃げ切った後の汚れた顔(これもたい焼きへの涙だった)に、参ったわけだが…

木登りで〜の話はとんと覚えておらず、幸村の心配顔だけがそれと混ざっていたらしい。


「Huーm……俺、そんなcoolなことしてたとはねぇ」

と、にやけ始める政宗。

幸村は、まだ少し言いたげな顔で、

「それより、嘘はいけませんぞ」
「悪ィ悪ィ。けど、あっちの方が本人よりcuteだよなー…」

「……」
「Jokeだって」

政宗は笑い、「格好つけたかったんだよ。分かるだろ?」


「………」

沈黙の後、幸村はぽつりと、

「これからは、つきませぬよう…」
「てか、あいつらにはもうバレたしな」

「…某は覚えておるので……次に話す機会があれば、ちゃんと言っておきまする」

落ちた幸村を、政宗がどんなに格好良く助けてくれたのか。…ぼそぼそと小さな声で伝えると、


「…Thanks」


照れを隠すように、それだけ言う政宗だった。



…………………………………



「帰っか」

「はい!…あ、」
「アん?」

ケータイが同時に鳴り、二人はそれを取り出す。──メールで、政宗へは小十郎から、幸村へは佐助から。

『今晩は、武田家の庭でバーベキュー』のお知らせだった。


「うぉぉぉ!肉ゥ!!」
「ヒュ〜、やったな」

「こうしてはおられぬ!政宗殿、ただちにッ」
「慌てんなって。ああ、夜はどっちの部屋にする?」
「そちらが静かですが、佐助が寂しがるので──」


そんな話を明るく交わしながら、二人は校舎を後にしたのだった。










「…やっぱ、そういうことなのか?」
「どうなんだろうなぁ…」

↑先に帰った振りをして、実は廊下で見てた友人たち。


「『夜は』って…」
「どっちの家で遊ぶか、って意味だろ」

「真田の顔が見えたら、分かったのになぁ」
「伊達はにやけてたぜ」
「あいつには普段からああだろ、二人して気付いてねーけど」

「でも真田、全然ビビってなかったよな」

「…ああ……」

皆頷き、『そこなんだよな』と顔を見合わせる。

──今日のダベリの論題は、『初恋の話』だったというのに。



「『初恋』が何なのかは、分かってるよな?破廉恥破廉恥言ってたし」
「…いくら何でもな」
「あ、あいつのことだから、怒りで主旨飛んだのかもよ?」

「うーん……どっちだよ、真田…」

彼らは首をひねりながら、楽しそうに帰る二人の背を、廊下の窓から見送る。


「──…心の準備、しとくか」
「あぁ……俺らだけでも、応援してやろうぜ」
「…そうだな」


と、最後はシリアスに決心した友人らだが…

後日に二人の保護者たちを目にし、その苦悩がいかに不要だったかを、思い知るのである。











‥おまけ(幼児期)‥


二人の出会いから半年以上が経ち、幸村もすっかり武田家の一員になった頃。


「まさむねどのは、かっこいいですなぁ…」


(──Ha…!?)


突然の爆弾発言に、政宗は硬直した。
顔に熱が上がっていき、慌てて背ける。「そ、そうか?」とは言い、しばし幸村の顔を見れずにいたが、


「ゆきむらは……、…か、わいい……よな…」

「ふぉぉお!!」
「っ!?」

幸村は急に叫び、ダッと走り出した。Haっ?と政宗が顔を向けると、

「ほんに、かわゆうござるぅ…!」


「……」

──前から歩いてきたらしい散歩中の犬に寄り、きらきら顔を見せた。

飼い主の女性が、「ありがとう」と顔をほころばせる。小型犬で大人しく、幸村に撫でられるがままになっていた。


「まさむねどのー?このわんわどの、こわくないですぞ?」

「っ、こわがってねぇよ」
「では!はやく、なでてあげてくだされ〜」

「……Ahー…」



(…すっげー、はずかしかったのに……)


何で聞いてないんだよ、と文句をつけたくなるも、あれをまた言う勇気はない。…はぁ。

しかし、犬を可愛がる姿がまた可愛かったので、そのわだかまりもすぐに消えるのだった。









そして、その晩。


「さすけっ」
「ん?なぁに?」

「あ、あのな…あの…」
「ん〜?どーしたのー?」


(…はぁぁ、旦那は今日もかわいいな〜)


モジモジ恥ずかしがる幸村の姿を、ほわほわしながら楽しむ佐助(当時小六)。

またオモチャ壊しちゃったのかな、一応注意はするけど、直してあげたらまた喜ばれるんだよね〜、などと思っていると、


「お、おれ、あしたまさむねどののいえで、おとまりしてもいいか…?」


「………」

──ニコニコ顔のまま、固まる佐助。




「さすけ……」


「……だん……な…?」

ぴしっ、ぱりっ、と硬化を解きながら、佐助は表情に陰を漂わせていき、


「なんで、そんな…、…そんな、不良みたいなッ……

──おっ……『おれ』だなんて、絶対ダメですぅぅぅっっ…!!」



………………………………………
………………………………
………………………



『まさむねどのは、かっこいいですなぁ…』


(…そうだ!ゆきも、これからは『おれ』にしよう!)


と思い、(初めてなので)照れながらも言ってみたのだが…
佐助があまりにも悲しむので、家族会議の末、『それがし』を使うことに。

しかし、やはり憧れへの未練を持ってそうだったので、『俺様にだけなら使って良いよ』と、佐助は泣く泣く許した。

…が、呼ばれる内に特別感が生じ、数日後には早くも上機嫌に──で、それが通常になったという話である。







‐2013.6.21 up‐

はるひ様、素敵ネタをこんなにしてしまい本当にすみません(つд;*)

「慶次は家出人で居候/政宗は犬に襲われ時幸村に助けられ、一目惚れ/幸村は小さいとき政宗の『おれ』に憧れるが、佐助が不良みたいなのダメですぅ(泣)で、『それがし』に」から、好き勝手に妄想。謙信様の収入源は謎(^^;

慶次そんなに要らんだろう、と冷静判断しないで〜(;∀;) 好きなのでどうしても。続編では野良犬慶次を拾わせて…と決めてて。彼の年齢は私の勝手な設定。中高生かなぁとも思ったけども。

(出会い編)政宗の方が後で引っ越してきたのかもですが、これまた勝手に。武田家で七夕一回体験させるため、年中組4月頃の設定。

ネタ通りに書かず、本当に申し訳ない…幸村、怖がらずに助けたと思われる。思い出話からの政幸にするつもりが、すごい中途半端(+_+) 元が家族ほのぼの話だから、あんまりベタベタはどうかなーと思ってたら、そんなことに。あと、佐助不憫すみません。

メインは瀬戸内(次回予定)なのに; そっちはもっと可愛くしたいです。意気込みだけは。良かったら、またご覧下さい。

[ 134/138 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -