芽生え3


もう、仕事のことを全て話してしまおう。
そう思ったとき、


ヒラリ


「ん?何か落ちたぞ」
「え?」

旦那が拾い上げたそれは…
あのポラロイド。

「これ…」
「うっわ!それ駄目だって!」

慌てて取り返そうとするけど、旦那も俺様に負けないくらいの瞬発力持ち。

「…お前か?」

「……変な顔だろ?」

拗ねた顔とか、本当にガキみたいだけど…。旦那の前ではどうしてかやってしまう。

「…違う者かと思うた」
「うわー…やっぱり?」

「お前、こんなに…。――ああ」

旦那は、何だか照れたように、

「あの表紙の者より数段良いではないか。…知らなかったぞ、お前がこんなに…格好良いとは」





…え





てか、『格好良い』って。



時代錯誤も半端じゃないこの旦那が。




今、誰にそれを言ったんですか?



え?





…何か、顔熱いんですけど何で…




「…俺は、こちらの方が良いなぁ。あの者も凛々しいとは思うが、お前のこれは」



「だ、旦那ッ!」



(俺様は、…後で、一体何をしようとしてたんだと延々悩むことにはなるのだが――)

その行動を止めるかのように、ケータイが鳴った。


「はい。あ…お疲れ様です」
『お疲れ!――で、早速なんだけどさ』
「は…い」

俺様は、旦那を見ながら空いた自分の手を握り締めた。

『あのな、最近のお前見て思ってたんだけど』
「はい」
『実は、今度の企画の新刊な、イメージがまた違うヤツでさ。何つうか、割と大人向けなわけ。落ち着いた』
「…はあ」

『でな、お前にそれがぴったりなのよ。いや、これまでの感じもすっごい合ってるし良いと思うんだけど、是非今のお前を筆頭に作っていきたいっつーかさ。だから、いよいよ親御さんにもちゃんと話してもらってだな…』
「……え」
『あ、スマン。どうかな、やってみる気ない?詳しい話はまた…』

「ああ、あ…ったり前――いえ!やらせて下さい!あの!」
『いやー、良かったぁ。お前最近元気ねーから、もしや辞めたいとか言われたらどーしよって』
「そんな!俺こそ、ずっと出来に納得できなくてクビになったらどうしようかと」
『え、マジで?全然気付かなかった』

カメラマンは向こうで爆笑している。

佐助は、唖然としていた。

『お前って、ホント器用なんだな。でもま、殊勝な心構えは良いことだ。何か安心したわ、お前もちゃんとガキやってたんだな。――てかさ、今日の試し撮り。あれを創刊号に載せることにしたから、今度返せよ?』
「えぇぇぇ!そんな!」
『だって、あれ最高の一枚だったしさ!…ところで』
「?」


『あのとき、何を考えてたわけ?』






…何を、って。




俺様は、律儀にも電話が終わるのを待ってくれている旦那の方を見た。

…あのポラロイドをまだ見てる。

顔を上げて、俺様に笑った。

思い違いかも知れないけど、その写真と俺様を、見比べては感心するような――そんな感じ、が。




『若いってな、良いよなぁ!…そんな感じで、これからもよろしくな、ウチのエース!』



―――………



「佐助?電話終わったのか?」
「…うん」

「どうした?何か…」

旦那が少し心配そうな顔になる。
その手には未だにあの写真がいて。


「うん、あのね…」


聞いてもらいたいことが沢山。
どれから話せば良いか分からない。
だけどまずは。

短期だった家庭教師の契約期間を、高校卒業するまでに延長してもらえるよう、ひたすら頼み込もうと。

……そう、思った。







‐2011.6.21 up‐

あとがき


読んで下さり、ありがとうございました♪

また長い;上に何だろこりゃ
若者らしく色々悩む佐助が見たかった…んだろうか

家庭教師というシチュエーション全然生かせてないし;旦那出番少ないしで。
だのに、ちょっと続き書きたいかも

モデル等の背景微妙ですみません;

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