続・学んだ悪魔4





「そうそう──可愛いね、旦那…その服似合う。俺様、またギューってなっちゃった」
「っ……さ、サンタだが…」

「石田様、これが本当の『可愛い』ってことなんですよ〜」
「…あぁ。ようやく分かった」
「いつも可愛いんだけど、普通が百だとしたら、こういうときは千になるっていうか」

「さ、佐助…」

幸村は、頬の熱をまた上げてしまう。
そんな彼を、二人はじーっと眺め、


(あの男、この功労は認めてやるが…)
(絶対おかしいこと考えてたよね、もう一人もさ)
(…次こそはそれを暴き、まとめて粛清してやる)

そう言葉を交わすと、人型に戻った。

「大丈夫なのでっ?」と、幸村は心配するが、


「旦那が沢山くれたから、もー完全復活♪あいつらが戻るまで、今度は俺らとクリスマスしよ?」
「秀吉様から賜与されたお言葉通り、遊楽して帰らねばならん」

「佐助、石田殿……」

佐助は笑顔で幸村の手を取り、三成もかすかに瞳の奥に笑みを浮かべる。

幸村も、「はいっ!」と元気良く応え、予想通りの楽しい聖夜を過ごせたのだった。











「Hey……どーなってんだよ?もう二時間は経ったぞ」
「…まさか、自宅で迷子になるとはなぁ…」

──何故か、そんなことになっていた政宗と家康。ケータイは圏外、使用人や来客に一人も会わないという奇妙な状況を経て、最後には無事辿り着けたのだが、


「えっ?(パーティー)会場にいたではありませぬか…?モニターに映っておりましたが」

「お手伝いさんが、俺らが部屋に戻ったの、伝えに行きませんでした〜?」

「会場での役があるので、私たちはここで楽しんでいてくれ、と伝言を受けたが」

…と、帰宅寸前の幸村たちに告げられ、首を傾げたまま彼らを見送った。













パーティーからの帰り…

秀吉宅の前で三成と別れた後、幸村の家までの道を行く二人。


「ホントは旦那と二人だけでいたかったけど、色々勉強できたのは良かったよ」
「そっ…そぅか…」

「クリスマスに二人で過ごすと、もっと仲良くなれるんだって聞いてさ。旦那も早く、俺様にギューってなってくれないかな〜って」

と、笑顔の佐助。

幸村は、「な、なんだそれは」と目を泳がし、熱くした顔でうろたえる。
ハロウィンの出会いを経て自分の気持ちを理解した佐助は、ずっとこんな調子だ。幸村は、とかく翻弄されっ放しだった。


「旦那、イルミネーション見に行かない?」
「え、…うぉ!?」

驚いてすぐ、幸村の身体は民家の屋根の上空にいた。
いつの間にか黒マント姿に戻っていた佐助は、「しっかり掴まっててね」と笑むと、そこから高度を上げていく。


「そっ、空も飛べたのか!?」
「悪魔だからねぇ、一応は。それより、ほら」
「おぉ…!!」

佐助が示す眼下には、街の灯りがキラキラと輝いていた。
夢のような空と光の海での遊泳に、幸村は声を上げてはしゃぐ。

それを味わい尽くすと、超高層ビルの屋上に降り立ち、広がる夜景を二人で見下ろした。


「こんなところで見たのは初めてだ…!ありがとう、佐助!」
「綺麗?」
「あぁ──ぉっ、おぃ…」
「下より寒いっしょ?風もあるし」
「…ぅ、まぁ…」

佐助に後ろからマントで包まれ、どぎまぎする幸村。
薄い生地なのに、幸村のコートよりも風を通さない。温度は感じられなかったが、それは幸村自身が発するもので充分だった。


「……っえ?」

「クリスマスプレゼント。旦那、好きか分かんないけど」
「プレゼント…」

幸村は目を見張り、「魔法で…?」と、それに触れる。
佐助は、「俺様、お金持ってないもんね」と苦笑し、


「作ったんだよ。魔力でじゃなくて」
「え…!」

さらに驚かされ、幸村は首に巻かれたマフラーを見た。暖色系で、売り物に違わない作りである。

お市に話を聞き、自分も贈りたいと思ったのだとの言葉に、幸村は「ありがとう…」と頬を染めた。


「…実はな、」
「だんな」

「ん」


と──…顔を上げたときには、もう唇が重なっていた。


やっと離された後は頬にも軽くされ、幸村はわなわなと、

「さっ、すけ…!」

「だって…もう我慢できなくて。して良いか聞いたら、絶対ダメって言うし」
「……っ!」

殴ろうにも、マントの中でがっちり腕ごと包まれている。
幸村は顔を燃やすが、嬉しそうな目で見つめる佐助に、『ぅ…』と怒りだけは治められてしまう。

確か、『主に』と請われたはずだが、この遠慮のなさはどうなのか?
…が、あの行為はともかく、そんな彼の気質は気に入ってしまっているので、突き出す弱味にもならないわけである。




「あったかい?」

「……ぉぅ」


マフラーで頬から下を隠し、何とか視線を合わせた幸村であった。










*おまけ*



「そういや、さっき何言いかけてた?」

「…いや、俺もお前に何か…と思ったんだが…」
「ホント!?」

だが、結局買っておらんのだと、幸村は謝り、


「お前に似合いそうで…しかし、魔法で服を出せるのであれば、無用の長物かと…」

「(ぁ…!)」

服を変えたときの幸村の反応を思い出すと、佐助は感激顔に変わり、


「俺様それ欲しい!魔力でも出来るけど、別に着ても良いんだし!」

「そっ…、そうかっ…?…では、明日ともに店に行ってくれるか?」
「もちろん!明日もクリスマスなんでしょ?」

「あぁ、そうなのだっ…!」



……………………………………



翌日、服とアクセサリーを買ってもらった佐助。

…たとえ、それらが人型では着けられない代物でも、幸村には満面の笑みで返したはずである。







‐2012.12.15 up‐

あとがき

読んで下さり、ありがとうございました!

拍手で意見頂きの続編。前作の政・家の虎視眈々さを気に入ってもらえ、黒猫ズを『可愛いの三乗でござるv』と我慢できず可愛がる幸村…というネタを、そのまま拝借^^
さわ様、本当にありがとうございました。

悪魔なのに弱すぎ。何でも叶えてやれるはずなのに; マフラーの毛糸は、お市から使わないのをもらった。就様たちは、黒猫のナイト振りを割と気に入ってる。

服はバンダナとか…首輪は嫌がるかもで、アクセサリーに。三成にも着けたがりそう。
黒猫も『佐助・三成』なので苗字だけ名乗り、幸村も気を付けてたという。
猫や幸村の可愛さが全然で申し訳ない。


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