続・学んだ悪魔3





「痛っつー……思いきりやりやがって」
「お前が悪いんだろう?」

「──家康」

額を押さえたまま、「knockくらいしろよ」と唸る政宗。
そんな彼は放り、家康は幸村を窺うと、

「幸村、大丈夫か?」

「平気だろ…俺より頭かてーんだから」
「…政宗殿が、離してくれぬからでしょう」

幸村も自身の額をさすり、恨めしげに政宗を睨む。そして、

「家康殿…見ておらず、手を貸して下されば良かったのに」

「Ah…!?」

政宗は目をむき、「オメーいたのかよ!?」

家康は、はっはっはっと爽やかに笑うと、


「いやぁ、あんまり幸村が可愛かったんで、ついな」

「だから名前呼んだわけか…」
「うん、あれは良かった。ワシがしてるみたいで」

家康は、照れ照れと嬉しそうに頷く。(政宗は家康から他の服を借り、『本当はクリーニングで落ちるし、安物だ』と笑)
幸村は、すっかりむくれ顔で、

「二人して、某を馬鹿に…元就殿たちの言う通りでござる」
「ワシは違うぞ?政宗みたいな破廉恥な奴じゃない」
「お前だけに破廉恥な奴のがキメェよな、幸村?」

「はれんち…!?」

どういうわけで!?と混乱する幸村だが、家康は「そうだ」と、


「お詫びに、さっきゲームで当てたこの景品をあげよう」
「えぇ!?そんな」
「ワシには使えそうにないんだ、もらってくれないか?」
「良いのですか…?」

今度は申し訳なくなりながら、袋を開けてみると、

「おぉ、サンタでござる!」
「Huーm?似合いそうじゃねーか、着てみろよ」

景品は、サンタのコスチュームだった。パジャマとしても使えそうで、「はい!」と幸村は袖を通していく。
続けて赤いズボンを穿くのだが、そちらはウエストが大きくて合わなかった。


「むぅ…母上に直してもらおう」

「………」

上の服は丈が腿まであり、腰に着けた黒ベルトに絞られ、ズボンがないと一見ワンピースのようだ。裾には白いモコモコが付いており、

「(家康、お前コレ……景品なんか嘘だろ)」

「ん?聞こえないな政宗。…幸村、大きくなるまでズボンは良いんじゃないか?家なら、それで充分だろう」

「…まぁ…そうですが」
「寒かったら、このレッグウォーマーがあるし」

と、お揃いの白いふわふわしたそれを着ければ、


「いぇやすうぅぅ!!お前って奴ァ、こーいうのだけは最高のsenseだな!ありがとうッ!!」

「ははは、だから景品だと言ってるだろう?フードも被ると、また可愛いんだ」

「おぉっ、ぬくいでござる♪」

「ヒィィィィィ!!miracle…!!」

フードの顔周りにも白いモコモコが…政宗の悲鳴にキョトンとする顔が、二人を一層昂らせた。

「ちょっと首傾げてくれ」「次は上目遣い」「『プレゼントは某でござる』っつって」「よし、ベッドに行こう。いや、記念撮影のためにな?」……などと、キャピキャピハァハァする二人に連れられ、隣の寝室に移動するが…











「…!?二人とも…!?」

ツインのベッドに佐助らの姿がなく、幸村は焦り辺りを見渡す。


「トイレに行ったかな?」
「帰ったんじゃねーか?」
「それはあり得ませぬ!…もしや、どこかで迷われて…」

また倒れていたらと、幸村は顔色をなくす。
探しに行こうと、そのままの格好で出ようとするので、

「お前はここで待っててくれ、ワシらで探してくるから」

「何で俺まで…」とブツブツ言う政宗も一緒に、家康たちは出ていった。



(俺が誘わなければ…)


二人をあんな目に遭わせることもなかったのにと、幸村は気を落とし、ベッドの側にへたり込む。


『…ニャー……』


「(ん…?)──あっ!」

小さな鳴き声に顔を上げれば、ベッドの上に二匹の黒猫が。


「二人とも…!そうか、猫になっておったから…」

「うん」と佐助が頷き、

「身体にも匂い付いててさ、もう水で洗って来たんだ。…ごめんね、俺様たち全然役に立たなくて」

「え?」

聞くと、佐助たちは猫になり水浴びした後、人型になる気力もなく横になっていたらしい。
少し前に気が付き、自分たちの手抜かりを知ったのだと…
三成にまで「すまなかった」と言われ、幸村は慌てて、

「あの二人の冗談はいつものことですし、楽しくしておりましたので!それより、こちらが申し訳ござらぬ。せっかくの日に、あんな…」

「でも、これからは旦那と一緒だしさ」

佐助は明るく、「まずは回復させて?」と、幸村の懐に飛び込んだ。


「!だ、だが…っ」

「石田様には、指先で触るだけでいーよ。俺様より回復力強いから」
「食い千切っても良いならな」

その言葉に縮み上がり、幸村は三成も腕に抱く。

その戸惑う顔に、佐助が「どうしたの?」と尋ねると、

「猫で、いつも触られて嫌がっておるから、その…」

何だ、と佐助は吹き出し、

「旦那なら、嫌なわけないじゃん。まー、ちょっと情けない姿だけどね」

「ならば、貴様こそが指先だけにしておけ」
「それとこれとは別ですって」


「………」

幸村はポカンと、「そうだったのか…」
それから、表情を輝かせていき、


「だ、旦那っ?」
「何を…!?」

「そうだったのでござるか…!」

と二匹を抱えたまま、ベッドへ身を預けた。彼らをぎゅうっと抱き締め、頬をすり寄せると、

「では、我慢しなくて良いのですなっ?ずっと耐えておったのです、某…!」

心底嬉しそうな笑顔で、女の子たちにも勝るとも劣らない、正に猫可愛がりを二匹に与える。
「これぞ、可愛いの三乗でござる…っ!」と、うっとりほわほわとしたものを撒き、頬まで染めていた。


「か、可愛いって…えぇ?」
「三乗……だと?」

納得できない二匹だったが、幸村の顔と温もりに、身体は弛緩していく。

彼らの反応に、『いつも言われておろうに』と幸村は不思議がるが、人間嫌いから、余計な声は遮断しているのだそうだ。
なるほどそれでと理解し、引き続き二匹を『よしよし(*^^*)』する幸村。


(…こんな旦那が見られるんなら、この姿も悪くないかぁ)
(ただの器だと思っていたが…)


二匹は心で会話すると、幸村の姿を改め見る。

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