おめざめB-3


至高の眼福に酔いしれてると、旦那が睫毛を震わせながら目を開けた。


「さす…けぇ…」

下がった眉と潤んだ瞳で、見上げてくる。──どうやら、達することに恐れをなしているらしい。
初めてで、しかもこんな状況じゃ無理ないか…

ねだるようにも見える姿に満足し、「仕方ないなぁ」と旦那の手をどかせる。再び俺様が握ると、もう抵抗はされなかった。

「っふ…ぅ…」
「手、乗せて良いから」
「…ぁっ…」

向き合う形で彼を膝に跨がらせ、ゆっくり動かしてやる。

膝は着いてるけど腰は浮かさなきゃなんない体勢で、大人しく受け入れる旦那。俺様の両肩に置いた手が震えるのは、快感だけでなくしんどさもあるのだろうと、

「旦那、自分で動いてみ?」
「え…?」
「好きなようにさ。そっちのが、早く終わるかも」
「…ん……」

少しでも早く解放されたいんだろう、旦那は素直に応じた。しやすい位置に置いた俺様の手の中を、緩やかに行き来していく。


「っ…はぁ…、…っン…」


(…エッロ〜い……)


奥へ押し進める度に、甘く切ない吐息がこぼれる。表情も同じくで、思わず喉が鳴った。
無性に抱き締めたい気に駆られたが、ふと冷静な思いが湧く。


…いつかは旦那も、こうやって女と。


こんな風に、一生懸命腰動かして。この可愛くてやらしい顔さらしながら、相手の名前を呼んで。
終わった後は、『一生大事に致しまする』とか言っちゃうんだろうな。で、二人は幸せな家庭を築いてくんだ。

当たり前のことなのに、胸がズキリと痛む。…もういい加減、その理由も分かってしまったわけだけど。
自嘲の笑みを漏らすと、今にも止まりそうな旦那の腰を片手で支え、握ってた方を大きく動かした。


「!?さ、ぁあ…っ!」
「…やっぱ、俺様でイって?」
「やっ…め、…んな、した、らぁ…っ」
「我慢しないで出して。怖くないから…ね?」

「ン、んん…ッ!ぁ…あっ、も、──ッ」

「っ……」

一際わななかせた瞬間、こらえきれずその身を抱き寄せる。

服に滲み肌に広がる旦那の熱を感じながら、震える肩や背中を優しく撫でていった。














射精後の虚ろから醒めた旦那は、俺様の濡れた服を見て青ざめた。

「洗えば良いんだし…」と言ったら今度は真っ赤になり、ベッドから突き落とされる勢いで押された。
慌てて降りると、旦那は布団で身体と顔を隠し、


「最悪だ、こんな…!」

涙声になってて、次はこっちの血の気が引く。俺様の頭も、やっと覚めてきた。

…どうしよう、完全に嫌われた。
AV見て旦那をオカズにした、以上のことやらかした。何でこんなことになったんだっけ?とにかく謝んないと、


「ごめん、旦那…」
「なら初めからするなぁ!これから一体、どんな顔で接しろと!?あんな…あんな…っ」

「ごめ…ッ、ごめんん…!!最初はホントに、トレーニングを止めさせたくて…っ」

──ダメだ、どー考えても俺様が悪い。
もっと冷静になって、説得するべきだったのに。俺様が駄目でも、大将からそれとなく言ってもらって……あぁぁぁ、何でんな簡単なこと思い付けなかった!?


「だからといって…っ」
「忘れる!絶対忘れるし、誰にも言わないから!」
「忘れられるかぁぁ!!」

ばかたれぇぇと嘆きながら、「同じ目に遭ってみろ、どれだけ恥ずかしいか…!」

その言葉に、俺様はハッとし、


「…遭えば、許してくれる!?」
「なにっ?」
「旦那!」

バッと布団をめくり、そのまま床へ投げる。…あ、旦那まだ下穿いてなかった。隠すものを失った状況に立ち往生し、怒りよりそっちに気を取られてる。

「ぎゃ!!さすけ、何を!」
「俺様も同じことするから、許して?」
「は、ぅわ!?あぁあゃ!」

ズボンの上から俺様二号に触れさせると、旦那は叫びながら抵抗する。…やっぱ駄目か。
早々に離し、ズボンと下着を膝まで下ろした。俺様は真剣です。


「!?!?さ、す…!?」
「見ててよ、俺様もするから…っ」

さっきのショックは大きかったけど、二号はまだ元気だ。謝罪の念で一杯なのに、旦那の前だからか、すぐ気持ちよくなってきた。ほんと救いようのない愚息だな。

旦那は目をつぶろうとしたが、俺様が「その間にソコ覗くかも」と下半身を示せば、ぐっと留まった。ベッドに膝で立ち、旦那が嫌でも見ざるを得ないようにして、手を動かす。

旦那は、本当に泣きそうな顔で、

「もうよい、さすけぇっ…」
「…むりって…、もう止まんな…っ」

ヤバい。
嫌がられてんのにまた興奮しちゃってんよ、二号。ていうか俺様。

頭の芯が痺れてきて、腰が戦く。
こんな、確かに恥ずかしい姿見せてんのに、胸が苦しくて切なくて仕方がない。旦那…


「ごめん…俺様、ずっと勃起してた。旦那のさっきの姿見て」
「……!?」

「それだけじゃなくて、最近見たAV女優が旦那に似てて、今までになくたぎっちゃった。昨日は、旦那がエッチなことされてる夢見て、それ以上に興奮した。…気持ちわりー、よなぁ…っ?」

旦那は目を丸くし、また顔を真っ赤に染め上げた。だけどもう我慢が出来なくて、俺の口はどんどん軽くなっていく。

「…めん、な…無理やり…。イかせて、自分と少しでも同じだと思いたかったみたい。最低だな…やっぱ俺、汚くて気持ち悪い…」

動かす手を止められ、えっと見下ろす。旦那は、俺様の目を見つめてくれていた。


「あれは、俺も言い過ぎた…佐助は汚くない。…意地は悪かったが」

「…旦那…」

慈悲深い言葉に、俺様はもう涙目で、

「つい…あんまり可愛い反応してくれるから、苛めたくなって。小学生が好きな子苛めるアレと似てると思うんだけど」
「…ッ、っ…」

「ずっと旦那に近付きたかった…中学入ってから部活ばっかで、寂しくてさ。挙げ句避けられちゃって、実は泣きそうだったよ」

って、多分泣き顔より情けない面してるんだろうけど。

その前に、モノ握ったままの格好の方をどうにかするべきだろうが、今んとこ旦那の意識はそれてるようで助かった。

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