おめざめA-3


暫時、夢中で腰を動かしていた彼だが、そろそろ限界が来たらしく、


「…っ、も、出る…っぁ、出る…」
「えっ…、たッい゙!」
「もちょい、っだから、」

有らん限りの力で押し付けられ、幸村が悲鳴を上げる。さすがに悪いと思ったのか、彼は速度を加えた。ベッドがギシギシ軋み、腰が痛覚と快感に飲み込まれていく。

短い呻き声とともに揺れが止まり、すぐに生温い感触が──


「…っ、ぅ…く」

下着の上に吐き出された様を目の当たりにし、あまりのショックに幸村の視界が滲んだ。しかも塗り込めるように手で撫でられ、身をすくませる。

「ベッドに落ちたら、お前ナニしてたんだって話になるんじゃね…?」
「っ、う…ぁ…」
「そうそう、こぼさねぇようにな。…うわー…てか、お前その顔…」

やっべ治まんねーわと、放心した幸村を横向きにすると、背後からまた突き始める。汗などで湿り気を帯びた内股は温かく、一層心地好い。思わず力が入り、幸村の身体にすがるよう全身を密着させた。

いくらか落ち着いてきたところで、手を前に回し、

「ゃ…ッ」
「さっきの詫びだって、今度はお前も良くしてやるから」
「い、いら…ぃりませぬ、ぅ…っん」

さわさわともどかしい愛撫に、幸村が腰をひねらす。後ろから見てもそそる姿態に、悪戯は止まらない。
しかし、

「っ?」
「シッ…」

先輩は急に動きを止め、幸村の口を手で塞いだ。…保健室の廊下側の窓を横切る、二つの人影。


『あれ?鍵かかってる?』
『まさかぁ、いつも開いてんじゃん』


(……!!)


ガタガタと戸を揺らす音に、幸村の血の気が引く。パニックになりながらも、薄い布団を引き寄せるが、

「ァ…!」
「しー。一人でヤってるって思われても良いのか?」
「ん…ッ、ゃ…は、な」
「修行修行、精神力の向上な」

「は、ぁっん、…ひどぅ、ござ、ぁ…ぁ」

外の二人の会話が届く中、彼は音を立てぬよう小刻みに身を揺らす。かつ幸村への愛撫も止めず、むしろそちらは強くなっていた。
羞恥の炎に焼き尽くされ、幸村はもはや耐えることしか出来ない。

長く感じられた時が過ぎると、「行ったみてーだな」との背後からの声。が、ホッとする暇もなく、また激しい振動が始まった。


「ぁ、ぁ、ひゃだッ…、ぅ、ン…!」
「次もこぼすなよっ?で、お前もイっちゃえ、よ…ッ」

「っ、や…、…ぁッ──」












“明日から、また自主トレ始めっからな?”


写真はアレだけだよ、マジで。
トレーニングのレベル上げっから、それクリアできたら解放してやるわ──





(着替えねば……)


しかし、自分の部屋に落ち着いてしまったのか、身体が一気に重くなる。担任教師の案ずる声を前に、懸命にこらえたことの疲労もあるのだろう。

ズボンと下着は替え、前者は簡単に処理できたが、後者は洗わなければ…しかし、あまりの気だるさに今は無理そうだ。
袋に入れ、布団の中に隠した。風呂の際に洗おう…

そう決めると佐助の顔が浮かび、目頭が熱くなった。



──嫌だ

佐助に知られるのだけは、絶対に嫌だ…



自身の身体を現実から隠すように、幸村は布団を肩まで引き上げた。















「………」


起きてまず鏡を見ると、そらもうヒッデェ顔だった。


──あ、だいじょぶ安心して。

旦那、あんな目に遭ってないから。全部、俺様の夢だったってオチだから。すんませんねホント、夢のくせに細かくて。



(観んじゃなかった……)


パソコンの傍に置いてたDVDを手に取ると、こないだのケータイと同じようにベッドに放った。その、タイトル『ひみつの保健室〜狙われた後輩〜』を、やるせない思いで。

DVDの内容は、まさかあんな素股オンリーで終わるような、ショボいもんじゃなかった。ただ、設定が似てるってだけで。同じ部の先輩に目ぇつけられてて、盗撮で脅されるとかそんなのは。
あれが本当なら、旦那があんな野郎に負けるかって話だよ。ケータイも、迷わずぶっ壊すだろうし。

それより問題なのは、また悪夢が再来したってことだ。

……俺様、こないだのDVDんときよりも興奮してました。夢ん中で。


下着こそ穿いたままだったけど、明らかに旦那に間違いない身体にまで。必死で解いて出した答えが、こんなにもあっさり粉々に。
これ起きたら確実に勃ってんな、せずにいられるんだろーかと恐々しながらもで、ほんとに拷問な夢だったんだけど…


最後の最後で、目が覚(冷)めた。
旦那の、俺様への思いに。

あの夢が本当だったら、俺は本気で前科者になる運命決定だけど。最後のあれは、あながち夢想じゃない気がする。旦那は、昔から俺様と肩を並べようと頑張る子で、カッコつけて強情になったり、落とし穴にハマって出られなくなるような性格だったから。


(今回も、やっぱり手助けが要る状態なんじゃないかな…)


反抗期だ、思春期だといっても、まだまだ子供なんだし。てか、やっぱまだ離れんのとか無理だし。口出したいし。
……俺様の性欲とカオスの問題は、とりあえずさておきで。



(てか、もうこんな時間!)


朝飯朝飯、と慌ててキッチンへ。
けど、今朝は大将がやってくれてて、


「幸村の奴、昨日の分を取り戻すと、早ようから登校したわ」

「え゙…」

「自主トレも強化されるそうでな、今晩は遅いやもと言っておったぞ」


「………」




──いや!

正夢とか見たことないから、俺様!



大将はまだ何か言ってたけど……何がなんでも、今日帰ったら聞き出してやる!
固く胸に宣言し、ヤケクソ然と朝食をおかわりした。







‐2013.1.11 up‐

あとがき

読んで下さり、ありがとうございました!またまたすみません;

モブ+幸は状況説明のみの予定だったんですが、Bと分けたかったので、描写にしちゃおかと。夢オチだし。手ぬるいのは、佐助の妄想だから。モブ先輩、ほんとはちゅーとか肌の味見したかっただろうけど、その時点で佐助の目が覚めてしまいそうな。

@のDVDは、家・政が協同で発掘したらしい。
Bは、佐幸な話になります。良かったらまたご覧下さい(´∀`)


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