芽生え1
高校生佐助→大学生幸村。
佐助が、わりと若者らしく人生頑張ってたり。元親が少し登場。
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はっきり言って、俺様は、顔は格好良いし背は高いし、均整のとれた身体つきの三拍子。
昔から飽きるくらい女の子にモテてきたし、芸能スカウトのかわし方なんて、お手のもの。
だから、当然モデルなんて軽々やってのけられる。そう思って受けた話。
写真になった自分は、見たこともないくらいキマってて。これ以上の男前なんていねーだろ、って本気で思ったくらい。
俺様は、すぐにこの仕事にのめりこんでしまい。
だけど、案外イケメンってのは他にも結構いるもので。…そんな奴らの中で刺激を受けつつ、さらに自分を磨いて。
最近じゃ、他のことが見えなくなるほどの熱中振り。
なので、一つと言わず問題が複数。
…それは、俺様がまだ高校生で、家族にも友人にも仕事の話を隠していること。
そして、以前は良かった成績が、見るも無残に地を這っている現状。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
「初めまして。真田幸村と申しまする」
「…よろしくお願いします」
親が、勝手に家庭教師を雇った。
…二つ上の大学生になんか、到底見えない。
何だか、武士みたいにかしこまってるし。
顔は…まぁ、結構…
「?某の顔に、何か?」
「あ、いや…」
初日で分かったのは、彼が顔に似合わず大分男らしくて、嘘みたいに真面目なこと。
俺様は、彼のことを旦那と呼ぶことに決めた。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
「よぉ、お前何か最近ご機嫌じゃねぇ?」
「あ、親ちゃん」
恐らく一番親しいと言える友人がニマニマしながら寄って来た。
「そうかなぁ?」
「ああ、何か丸くなった」
「え!俺様太った!?」
「いや、んな意味じゃねぇ。…ちょっと前、オメー余裕ねぇっつうか、しんどそうっつーか…」
「えー…?」
親ちゃんは笑って、「まぁ、いーや!元気ならよ」
よく思うことだけど…俺様、女だったら絶対親ちゃんに惚れてる。
なのに、女ってのは見る目がないのが多い。
彼はやたらむさ苦しい野郎共ばかりに男惚れされ、女が気に入るのは、俺様やもう一人の眼帯パーリィ馬鹿とかみたいなチャラーい奴ら。
世の中、色々間違ったことが多いよなぁとしみじみ思う。
「…カテキョのお陰で、成績一気に戻ったからかも」
「あー。てか、すげぇよな。どんだけ教え方上手いっつんだよ」
「うん。俺様も最初は、えーと思ったんだけどさ、旦那は絶対教師に向いてる。やる気出させるのが上手だし。やっぱ大学生なだけあんだね、話も面白い」
「ほぇー…。どんな話してんだ?大学生な…大人な話か!?」
親ちゃんはワクワクした目で見てきた。
「うーん…あのね…」
……
あれ?
そういや、話…って。
大学生っぽい話?大人な話?
…してなくね?
今、思えば…。
子供の頃は何して遊んでたとか何が好きだったとか。
高校生活はどうだとか、旦那のときはこうだったとか。
俺様の、普段他人に言わないような、社会だとかに対するわけわかんないぐちゃぐちゃした青臭い考えに、旦那は嫌な顔見せず真剣に答えてくれて…。
…あれ。
ほとんど俺様がしゃべって…る?
「あはは…。良く考えたら、俺様の話に対して返ってくるやつが面白いんだった。旦那ってば、いちいち真面目にさぁ…」
「へー…」
期待させやがって、とか突っ込まれるかと思ってたら、拍子抜け。
親ちゃんは目をちょっと大きくしただけだった。
「今度、俺にも紹介してくれよ」
「うん、いいよ」
何か、親ちゃんには旦那を見てもらいたい。で、今日の話を実際分かってもらいたいなぁ…。
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