赤緑兄弟の冒険4



最終ステージは、さすがに他よりも難関だった。
だが、絆を深め合った兄弟には、向かうところ敵なしである。ボスの部屋まで縮むことなく来られ、士気は上々だ。

が…


「……?親玉が出て来ぬな…?」

「ビビって逃げ出したとか?」
「…それよりも、姫を探さねば」

こっそり目配せし合う、準備万端なさすージとなりージ。


『みしみしぃ!』
『ズズーン!!』

「「「!?」」」

部屋が派手に揺れ、三人は音のした奥へと走った。

「こ、これは…」

悪者のボスらしい、ものすごく大きな亀?が大の字でのびている。完全にノックアウトされており、一体誰が…


「マリむらー!!」
「ふぉ!?」

その巨体の上からバッと影が跳び、マリむらにしっかりと抱き付いた。弟二人の目の端に映る、はためくピンク色のドレス──


(こいつがぴーち…!)

覚悟!とばかりにさすージはブロマイド集を手に、なりージは顔を拝むため回り込むが、


「…!!?アンタが姫ぇ…!?」
「──…」

なりージに至っては、言葉もないらしい。
それは、二人の予測を激しくそれた人物で、


「あんだァ…?文句あんのか?」

「大アリだよ!!何で鬼のダンナ!?おかしーだろ!男がやるとしても、アンタだけはないでしょーがァ!!」

あああ見たくなかったぜこんなもんと、さすージはえずく。なりージも、ほぼ同様の表情である。


「姫ぇー!良かった、無事だったんだぁっ!」
「おう、キノ吾!お前か?こいつら呼んだの。ったく、俺なら平気だっつったのによ」

「で、では、これは姫殿が…?」
「おうよ。結構強ぇー奴だったが、俺の敵じゃねぇ。国で暴れちゃマズいと思ってよ、わざと拉致られたんだが…」

マリむらは、それにいたく感動したようで、

「さすがは姫でござる!国を思い自ら、それも一人で…何と勇敢なのでござろう!」
「へへっ。いや〜悪ィな、台本無視しちまって。一応、さっきの(抱き付く)だけはやっといた」
「…あっ!それで…」

「でもありがとよ、来てくれて。俺のために、苦労かけちまったな」
「そ、そんな…」


「………」
「………」

広がる二人の世界に、不穏な空気を放つ弟たち。ゴツいドレス姿を見せられ、さらにこの仕打ち。さぁどうしてくれよう…武器を後ろ手に持ち、


「ねーねー…ところで何で、鬼のダンナが姫なわけ?」
「どこに共通点があるというのだ?まさか、金髪銀髪の『やや近くね?』程度の理由ではあるまいな」
「それなら、いつきちゃんっしょ!あり得ねぇー…衣装桃色なんだから、お市さんで良かったんじゃねーの?」


しーん

何故か静まり返る場を動かしたのは、マリむらだった。


「それについては、俺から説明しよう」
「お兄様が?」
「では、兄は既知であったのか?こやつが姫であると…」

マリむらは「いかにも」と頷き、

「俺と姫殿は、お館様の目を逃れ、幼き頃より想い通わせた許嫁同士…」

「嘘ぉぉ!!?アンタ、いつの間に四国行ってたの!?」
「たわけが。あれを見よ、キノ吾がカンペを読ませておるに過ぎん」

「…そして!」
「あっ」

演技に熱が入ってしまったのか、マリむらはキノ吾からカンペを奪い、今までで最も情熱的な声と顔で、


「ここにおわす麗しの姫君は、真の名をびーちく姫と申すがゆえに…!!」




びーちく……








「……(姫)『もっ、もぉ〜!恥ずかしいから、ぴーちって呼んでって言ってるのにぃ〜』」(台本棒読み)

「はっ、これは失礼を…!しかし姫のそれは、世にもお美しいと聞き及んでおりまする。恥じ入ることなど…」

「…お前、意味分かってねーだろ」
「え?」

「もう良いじゃない、細かいことは。それより、国では結婚式の準備で大賑わいだよっ?主役に早く帰ってもらわないと!」

「け…(しゅ、祝言のことか…?)」
「そりゃ急がねーとな!俺らが着かねぇことにゃ、劇も終わんねぇ」
「そ、そうですなっ!これは劇にて、」
「あんたを口説くのは、それが終わってからだ」

「…えっ?」

「何でもねぇよ(苦笑)。後でゆっくりな」


そして、キノ吾の魔法(使えたらしい)で五人は国へ戻り、あれよあれよという間に結婚式へ。祝福の鐘は、人々の歓声とともに長く鳴り続けた。

新王夫婦の治めるもと、王国はいつまでも平和であったそうだ。緑の弟も、大臣として兄を支えたとのことである。


〈おしまい〉












〜舞台裏A〜




「──ま、総合的に見りゃ、俺様たちが一番美味しい思いしてるよね」
「…で、あるな」

「はい、これで終了」
「ああ」

撮った写真を、きっかり同数ずつ分かち合った二人。これで、もう休戦する理由はなくなったわけだ。が。


「結婚式で、全国民が七日も休みをもらえたし…」
「最後に二人で旅をするのも、乙やも知れぬな」

「…やっぱ気が合うね、兄弟」

二人は笑みを交わし、旅行の計画を練り始める。

……行き先はいさかい一つ起こらず、真っ先に四国で決定したそうな。


〈終幕〉







‐2012.11.11 up‐

あとがき

お付き合い下さり、ありがとうございました!さっむいオチと、アニキへのひどい仕打ちすみませんんん;

以前相互様に、マ○オパロで佐幸絵か、幸&就ブラザーズがぴーち(かすがとか)を助けに行くけど、びーちく姫の間違いでした〜な漫画をリクさせてもらってたのが、全部混ざって。描いてもらった佐幸ブラザーズは、お宝部屋に奉ってあります^^

緑と赤といえば佐幸ですが、就幸の並びも大好きで。あと他作品でもよくしてるけど、就様と下ネタのコラボも。
黄&紫よっしーは、出したら誰がぴーちかバレバレなので断念。


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