続・愛しの御主人様5
「幸村…」
「ッ?ケイジ殿…!?」
その声と、起き上がり身体を折る彼の様子に、幸村は血相を変え飛び起き、
「どうされましたっ!?どこか」
「痛ぇ……すっげー痛い……」
「ケイジ殿ぉ!!どこが痛いのでっ?病院!」
救急車!と、幸村は慌ててケータイを手に。
「あのな、ここ……」
(心臓…!?)
幸村はもう涙目で、どうしようどうしよう、せっかく人間になってくれたのに!これでは、犬のときよりも早く──とにかく大パニックだ。
ケイジは、そんな幸村の震える手を掴むと、
「変だな…急にさ、痛くなって。…幸村、すごく可愛いなと思ったら、いきなり、…いてて」
「!?某がッ…!某のせいでっ……」
(───ん?)
『すごく……』
(……聞き間違え──てはおらぬよな?)
とりあえず、救急車を呼ぶのはとどまってみる幸村。
「ケイジ殿、あの……」
「……あ、ちょっと治ってきたかも。ドキドキいってるけど、痛みは引いてきたみたい」
「そ……、れは良かっ…」
「あー……でもダメだ、こっちはまだ痛い。…ちょっと見てみて良い?」
(え?)
幸村が聞き返す前に、「ごめん、もうキツくて無理!」と、ケイジは服を脱ぎ始めた。
そんなに苦しかったのか、と幸村は放られたズボンを手に取る。ルームウェアで、そうきつい仕様ではないはずだが…
そのズボンの足先の部分に、それよりは小さい一枚が『ポイッ』と置かれた。
「うわ!!何だこれッ!?」
「………」
驚愕の声を上げるケイジ。
そして、その背後で凍結する幸村。
元親の言葉『男同士だろ、…』が浮かぶ。そう、女の裸を見ることより、幸村にとっては何倍も容易い。温泉で他人のものを見ても、ちょっと恥ずかしいくらいですぐに忘れる。
……普通の状態であれば、の話。
(ケイジ殿、まさか)
見た目から、てっきりもう大人だと思っておったが、まさか…
「幸村、どーしよ!!これッ…」
「ぅゃああぁ!!」
とうとう自分の方を向かれ、情けなくも幸村は腰を抜かす。
恐らく、色々なショックと、自分にとっては可愛くてたまらない彼が、こんな──(思考解析不可能)
「ゆ、幸村ぁ…(半泣)」
(怖がってる?てか、嫌がってる…?)
「あ、ち、違っ…!すみませぬ、そうではなく!!」
(い、いかん!ケイジ殿は何も知らぬのに…!某がきちんと『教えて』やらねば……)
って、何を、
どうやって……?
「(…きゅう)」
「ゆっ、幸村ーッ!?」
最後の力を振り絞り、どうにか元親に連絡した。
まだ起きていた元親は、幸村の息も絶え絶えの声に数分で駆け付けた。
話を聞いて笑いこけたかったが、二人があまりにしょげているので、ケイジにきちんと『教育』を施すことに。
これで晴れてお前も大人、病気じゃねぇし、喜ばしいことなんだぜ?と励ましつつ。
こんな風に見えて、幸村だってな…と言いかけ、彼の無言と視線にそれは納めた。
「ケイジ殿、驚いたでしょうが…」
「後で俺が良いの(夜のお供的なの)貸してやっから、んなしょげんなって!」
「………」
体育座りのケイジは、「でもさ…」と二人を見上げ、
「『あれ』は、好きな女の人に『あげる』ためのもんなんだろ?…幸村、男なのに。俺、変なんだよやっぱ…」
「け、ケイジ殿…」
「あー…まぁ、幸村にもお前と同じもんがあるってのは、事実だが…」
その言葉に、ケイジを思うと心が痛む幸村だが、
「あってもなくても関係ない…幸村が好き。好きで、触りたかっただけ。二人だけなんてめったにないから、くっ付きたかったんだ。幸村すっげぇ可愛くて……なのに俺、あんな」
「す……」
「(あーあー、スゲー自然にぶっちゃけた)」
幸村には予想できたものだろうが、はっきり言葉にされると、認識の度合いも格段に違ってくる。その証拠に、幸村の顔は真っ赤っか。
しかし、ケイジは未だ消沈した面持ちで、
「俺、女の人としないから、『これ』要らねぇ…」
「「!!?」」
(そ、それはあまりに…っ!)
(待て待て待て、早まるな!?)
二人は青ざめるが、
「幸村、嫌がってたし……だから、こんなの要らねぇよ…」
は──
幸村は、冷水を頭から浴びたような、あるいは雷に打たれたような、はたまた業火に見舞われたような心地に、衝撃と目眩を起こす。
その姿に元親は解決を確信したが、また面倒が増えそうだなと頬杖をついた。
「申し訳ござらぬ、ケイジ殿…!嫌がったのではなく、情けなくも耐性がないだけでして!嫌いになど……某も、ケイジ殿が好きでござる!大好きなのです、ケイジ殿──」
元親の目にも確かに、元気良く揺れる尻尾が見えた。
翌日の昼過ぎ、四人組は家康に家へ送り届けられた。
「旦那、ただいま〜…って、」
「Ahhhh!!?っんで、コイツと寝てやがんだ!?」
「とうとう謀反か…穏和面した輩は、皆貴様と同胞か家康ゥゥゥゥ!!」
「あのなー…お前らは、毎日朝から晩まで幸村独占してんだろ?たまにゃ譲ってやれよ」
「そうだぞ、皆。ケイジはお前たちと違って、まだまだ子供なんだ。大目に見てやろう?」
「『子供』なら、ここにももう一人いるけどな〜」
──で、マサムネとミツナリは庭へと退場。
「あいつら、どうだったんだ?昨日と全然変わんねーな」
「…相手が悪かった。幸村以上の女でなければ、あやつらの頭は修正できぬようだ」
「つーか、お前の頭もな」
「困ったなぁ…やはり、手術が一番じゃないか?」
「…な、それ冗談だよな?お前、優しくて人望のある、素敵な社長さんだよな?」
「そやつのことより、さっさと女を見繕え。幸村より上回る者を」
「んなもん──」
「いるわけがないだろう」
「………」
作戦は、失敗に終わった。
「なぁなぁなぁ、お前だけは女と消えたって?」
どうだったんだよ?と、ニヤニヤ聞く元親。
尋ねられたのはサスケ、しかし照れもせず、
「うん、ちゃんと先生に教わった通り、優しくしてきた」
「おお!マジかッ?…つか、お前持ってなかったろ?次からはちゃんと、」
と、元親は(何故か箱ごと持っていた)避妊用具を手渡そうとするが、
「や、いいよ」
「いや、よかねーよお前」
「いいんだって、必要ないから」
「ああ?」
顔を険しくする元親だが、サスケは明るく笑んで、
「女の子には優しくしたけど、交尾はしなかったよ。つーか、反応しなかった。俺様の、やっぱ旦那専用みたいね」
「…………」
多分、それが×6(名)…なのだろう。
ケイジとのやり取りに、そろそろ幸村の『保護者』をやめる時が近付いてきたかなとも思った彼だが、完全撤回した。
庭では凶暴な二人が乱闘、居間では腹黒い二人がお茶、台所ではサスケの笑顔に達観した元親、そして幸村の部屋には、実はラブラブな二人がすやすや。
真田家は本日も、賑やか・平和で何より──
‐2012.10.18 up‐
あとがき
読んで下さり、感謝です^^
拍手でリク下さった名も無い野良猫様、本当にありがとうございました!リク頂戴から三ヶ月以上経っての更新、前作と同じような感じ・管理人の私利私欲ばかりで、大変申し訳なかったですが…;
三成が事実どちらなのかは、想像におまかせです。幸村以外触れる気しない堅物なのも、いざ彼とするときのために準備万端なのも、どちらもニヤニヤする。(っつっても、猫時代の話ですが;)
慶次、無理あり過ぎっていう。犬設定から全部ファンタジー。頭がピュア少年なんですきっと。あと、幸村以外に反応しないんで知らなかったんでしょう。
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