続・愛しの御主人様3



「俺も、さっきのやっていい?」
「え?」

これ、とケイジは素早く幸村の頬を舐める。


「…あれは、菓子が付いておったのを、取って下さって…」
「あ、そうだったんだ?…だよなぁ、人間は普通しないんだったよな」

ごめんな、とケイジは首をすぼめ引き下がる。
幸村の目に、今度は(幻の)垂れる耳と尻尾が映り、


「し、しかし、今は家で、二人だけですし、」
「…えっ、良いのッ?」

やった!とばかりにケイジは顔を輝かせ、幸村を畳に押し倒した。



『ぺろぺろ』
『ちゅっちゅ』


「(わー、久し振りの幸村の味〜…)」

「…っふ、…ぁは…っ、くすぐっ…」


(可愛いなぁー…)


赤くしてくすぐったさに耐える顔もだが、その声をもっともっと聴きたくなる。
頬を堪能した後で首筋に甘く噛み付き、撫でるように舐めた。──それはしつこく、何度も何度も。


「っ、それ…ッんゃっ……ぁ、め…もぅ…っ」


(はぁ……)


うっとり目を細め、ケイジは再び頬に鼻先を戻す。
幸村の桃色で艶やかな唇は震え、『ここ、すごい甘いんだよな』と、嬉々とし口に含もうすると、



「…あ、皆戻るみたい。ちぇー」


(た、助かった…)


胸を撫で下ろす幸村だが、ケイジのやろうとしていたことは知らぬまま。

甘えさせてやりたいが、人間になる前とは違う感覚には、どうすれば強くなれるのか…
喜ぶ顔は嬉しいものの、それだけが幸村の小さな悩みというか、羞恥なのだった。













モトナリと、志を同じくした家康のプッシュにより、つつがなく合コンは開催された。(『幸村とねんごろになるには、まずは男女交際から』と彼らを操縦中)

家康は気さくな社長なので、女性陣からも煙たがられはしない。
そして、初めは怖じ気付いた幸村だったが、彼らへの責任感から参加することにした。

だが、女性への気遣い等、自然で紳士なスキルを、いつの間にか身に付けていたサスケたち。(男性ばかりの職場なので、幸村はそれを一番心配していた)…ので、早々に安堵できていた。


「いや〜、旨いねっ!」
「飲み過ぎんなよ?ケイジ」
「分かってるって!」

元親や幸村らが一緒の際だけ、飲酒を許されているケイジ(含む五人)。今日は久々なので、かなり上機嫌。
が、宴もたけなわになると、

「ケイちゃん、なでなで大好きだねー」
「かわい〜」

「んー…」

ケイジは、テーブルに突っ伏していた。
頭を撫でると嬉しそうに顔を緩ませるので、女性たちから面白がられ人気者だ。


「…なに?何か付いてる?」
「あ、いやっ…」

ケイジを撫でていた彼女は幸村の隣で、彼の視線に頬を染め尋ねる。幸村は己の不躾な態度を悔やみ、少しでも解消すべく、

「も、もしや、犬がお好きで…?」
「えっ、うん!すごい好き!何でッ?」
「い、いえ、何となく」
「真田くんも好きなの?」

そこからは親しい友人のように気兼ねなく話せ、幸村もホッと寛げた。

一次会がお開きになると、


「今晩は、皆うちに泊まってもらうから」
「我もおるゆえ、安心致せ」

「すみませぬなぁ」

二次会は家康の家の近くの店でやるらしく、元猫の四人と、意気投合した女性たちは、そちらへ行く話に。

元親と幸村は帰宅することにし、ケイジは結局酔いつぶれていた。


「旦那、俺様頑張ってくんね!まずは『デート』の約束、バッチリ取り付けてくるから!」
「Ha!俺ぁ『告白』まで行くつもりだぜ?」
「面倒だが、それが手順ならば致仕方ない…奴の家など虫酸が走るがな」

『で、デート!?』と焦る幸村だが、三人の真剣な顔に、


「が、頑張って下され……?」

そう言うしかない。



(あいつら、心底幸村とヤりて…いや、好きなんだなこいつのこと…)


とにかく幸村を守りたく、あと彼らにも真っ当な人生を送って欲しくて『教え込んだ』のだが、何だか騙したような気に心が痛む元親。

家康とモトナリの黒い思惑を知れば、自分がどれだけ人が良いのかを自覚することだろう。












『今日は家に帰るわ。お前も、たまにゃ羽伸ばしとけよ?』

ぐっすり眠るケイジを布団に下ろすと、元親は真田家を後にした。


(ふーむ、しかし…)


賑やかなのに慣れてしまい、何をすべきか思い付かない。とりあえず、風呂にゆっくり浸かってみる。
明日は休み、本でも読むことにするかと髪を乾かし居間へ行くと、


「あっ、お風呂?」
「──起きられたので?」
「うん、目ぇ覚めちゃった。皆は〜?」

それが…と説明していく内に、ケイジは期待に満ちた表情へと変わり、

「じゃ、今度こそ二人だけ…っ!?」
「あ…はい、ですな…」

「……!!…っあ、あのさ、じゃあさっ……、またお願いしても良い?犬のときの…」


(うっ……)


固くなる幸村だが、やはり彼らは今の姿でも変わりない、可愛くて愛しい存在である。犬のときと同様、遠慮がちに向ける瞳に、幸村の胸は『キューン』と締め付けられた。

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