続・愛しの御主人様2
そこで、もう元親が教えることにした。のだが。
「つーかよ…お前らも猫んとき経験あるんだろーから、分かってんだろ?正しい交尾ってのはだな、」
「先生、しつも〜ん」
「何だ?」
「じゃあ何で、旦那はあんなに可愛いんですか〜?何で俺様は、オスの旦那に反応するんですかぁ?」
「………」
「そーだよな、幸村以外のオスなんざ喰う気にもならねーし。やっぱよー、俺らじゃなく幸村に原因があんじゃねーの?」
「あのな…」
「それにさぁ、会社の人らも旦那にメロメロじゃん。同じ作業服着てるのに、外部の人からいつも女に間違われるし。こないだも、オッサンに尻触られてたんだよ?後でちゃんと殺っといたけど」
「あー…、あの作業着なぁ…」
(家康が、幸村のだけ特注にしてんだよな…)
↑見た目には分かりにくいが、幸村のセクシーポイントを上手く引き立たせるような作り。
「そんなことよりも、人間の交尾法の詳細を話せ」
「あ、だねー、俺様もそれはまだ経験ないし」
「元親じゃあ、あんま当てになんねーけどな〜」
(…マジで去勢させてぇ)
ぷちぷちと青筋を浮かべる元親だが、これは無理もない話である。
「どうだ皆、正しい知識は得られたか?」
と、そこで家康が笑顔で出現。(今頃だが、ここは幸村の家)
「イエヤスゥゥゥゥ!!おのれ、性懲りもなくまだ敷居を跨ぐかァ!!」
「ははは、ミツナリはいつも元気だなぁ。会社でもあんなに叫んでいたのに」
「先生、これはぁ?この社長様は、俺らとどう違うってのよ」
「いや、まぁ…」
「俺らより、こいつの方が危ねーと思うがな」
「…とにかくよ!」
元親はホワイトボード(一応用意してた)を叩くと、
「幸村とどうにかなりてぇんなら、まずは常識を知りやがれ!今のお前らみてーなのに、あいつを渡せるわけねぇだろ!いきなりヤれるもんじゃねーんだよ、人間の交尾はッ!段階踏まえて、両人の合意のもとでだなぁ──」
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
「皆、熱心にされておるようですなぁ」
別室で、幸村とモトナリは食後のデザートタイムだった。
「モトナリ殿は、よろしかったので?」
「ああ。既に独学で知っておる」
「何の勉強なのでしょう?何故か教えてくれませんでな」
「………」
モトナリは、フッと口角を上げると、
「お前が恥じらい、最も不得手とする分野についてだ。他所で間違いを起こされては困るであろう?」
「……っ!!」
理解すると、幸村は真っ赤になり後悔した。…ものの、『元飼い主としては、分かっておかなければ』と、納得に努めた。
「もっ、モトナリ殿は、さすがで、ござるなっ…!きちんと、全てのことに、抜かりなく…ッ!」
「備えあれば患えなし、ぞ」
「(そこで使わないで下され…っ!)」
幸村の熱は上昇の一途を辿る。
「お前の知識は軽く越えておろうな」
「……ぅ(…反論できぬ)」
「試してみるか?」
「え?」
モトナリの指が頬に触れ、その顔が近付いた。
(えっ、えッ?もっ、モトナリ殿…!!?)
何を試すのかという疑問は吹き飛んだが、やけにシリアスで美しく整った表情に、幸村の身体は硬直した。
これは、自分の性別が違っていれば、よくテレビドラマや映画で見る、あのシーンに酷似してるようなそんなバカな──
『ぺろ』
「………」
「またも付いておった。…ここまで来ると、わざとにも思えてしまうが」
「──な、ちがっ…!!」
慌てる幸村に、モトナリは小さく笑い、
「戯れよ。単なる我の願望ぞ」
「は…っ?……ぇ…??」
しかし、モトナリは笑むだけである。
(…嬉しそうなので、構わぬか)
幸村はどうにか熱を振り払い、楽観的に考えることにした。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
「二人とも、ただいま〜」
「あ、ケイジ殿!お帰りなさい」
気付けば、彼が顔を覗かせていた。
彼は、勉強中は五人の中で最も苦労していたが、社会に出てみると俄然楽しそうな毎日を送っている。元々の人懐っこさから多くの友人ができ、仕事の後で遊びに行くのもしょっちゅうだった。
だいたい元親が付き添うのだが、ケイジの世渡り上手さ(元犬だとかは決して口を滑らさない等)に、最近では一人立ちをさせているらしい。
「今日さぁ、別の部の女の子たちも来てて『合コンしたい』って言われた。俺は今日友達になったんだけど、皆ともなりたいんだって〜」
「ごごっ、合コンにござるか…!?そ、某は…」
「どこの部署のだ?」
モトナリは詳しく聞くと、
「正に打って付けの話…早速知らせてやろう。まずは、正しい『交際』から始めねばな」
ほくそ笑み、部屋を出ていった。
ケイジは、辺りをキョロキョロ見渡し、
「皆は?」
「え、と……」
だが、幸村に言える勇気はない。
「じゃあ、今二人きり?」
「あ…」
ケイジの背後に、懐かしい揺れる尻尾が見えた。…気がした。
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