僕らの夏休み(後)-4






花火のラストは、派手な打ち上げ花火を連発させ、素晴らしい締めくくりに。
その規模は思った以上で、一般の花火大会で上がる、小さめのものにも匹敵しそうなほどだった。

思った通り、手持ち花火のいくつかは余ったので、『帰ったらまたやろうぜ』という話に。インストラクターたちを待たせているしで、素早く片付け車に乗り込む。

そこから今晩泊まる家康の親戚の家に送ってもらい、インストラクターたちとは別れた。(また世話になるかも知れないので、出来る限りの良い子振りは見せ付けておいた)

家康の親戚宅も海に面し、それは最高だったのだが、



「旅館だったとは…」

ライトアップされた立派な家屋風の宿に、頼んだ元親はそれから言葉もない。


「すまなかったな、元親。言えば気を遣うだろうと思い、黙っていたんだ。だが、寝るだけだし…ここは、親戚の家も同然だから」
「はぁ……悪ィなぁ、いつもお前にゃ世話んなって」

大浴場もあり、疲れを癒すには正直ありがたい。皆用意していたので、旅館のタオルや浴衣の世話にはならずに済んだ。

四組ずつ布団を並べ、仲良く就寝…などなるわけがなく。

幸村は、皆の誘導で中側の場所に決定。
その両隣と、頭を向け合う布団三組が取り合い(元親を除き)になった。勝敗は、シンプルにじゃんけんで。(幸村は、単なる場所の取り合いだと思っている)


「イビキをかいたらすまんな」
「某もかくかも知れませぬので」
「では、もう少しこちらへ寄ると良い。我は、いかにうるさくとも熟睡できる」
「ああ、大丈夫だ毛利。ワシもそうだから」

圧倒的な強さで勝ち進んだ家康と元就が、幸村の両隣の権利を得た。そして、


「もーやめてよ。旦那の髪が汚(けが)れるー」
「うっせーな、外野は黙ってろよ」
「…いつまで触れるつもりだ」

幸村の頭向かいが政宗、その両隣が佐助と三成に。
政宗は、枕の上から幸村の長い髪を手に取り、滑らかな感触をしつこく味わう。が、両側が彼らでは、長く続くはずもなかった。


「あーあ…(泣)」
「お前、今日は負け日だな」

自分と同じく幸村から一番遠い場所へ来た慶次を、元親は笑いとともに歓迎した。



「慶次殿、カメラを見せて下され」
「あっ、おぅ!──はい、見方は…」
「我が知っておる。大儀であった」

「…よろしくー」

↑すごすごと自分の布団に戻る慶次。


「ワシにも見せてくれ」
「見えまするか?」
「ああ、大丈夫だ」

三人はうつ伏せになり、一枚一枚を堪能し始める。元就が自分と幸村側に傾けるので、実を言えば家康にはほとんど見えていない。が、密着できて大満足だった。

そんな彼らをそのまま放っておくわけがなく、前の三人組も身体を少し起こし、観賞会に参加する。


「おぉ、これも…!すごいな佐助、よくこんなに見つけられたなっ?」
「さすが俺様でしょ〜?旦那にも実際見せてやりたかったんだけど、すぐ逃げるからさぁ、あいつら(魚)」

「俺が見つけたのは、もっとスゲェのもあったぜ?あっちのカメラで撮ってもらったからよ」
「見るのが楽しみでござる!」

その後の、家・政・三・幸ら四人の競泳の様子も、しっかり好アングルで納められていた。


「豆のようではありますが、某たちも写っておりまする、家康殿」
「本当だな!真田、よく発見したなぁ」

沖の小さな島の周りに、ポツンと浮かぶ二つの影。背中に感じた熱を思い出し、家康の笑顔に少々の朱が差す。


「おぉ、こんなところも……届くのが楽しみですなぁ、三成殿」
「ああ…。着けば、即知らせる」

「え、なになに?」
「ん?いや、竹中殿たちへの土産を渡す際、俺も家に邪魔させて頂こうと思ってな」

「Huーm…、じゃ俺も」
「断る」

「じゃー、俺様なら」「却下だ」


「……」
「……」
「……」

目付きがますます悪くなった三人の間で、険悪な視線とムードによる黒いトライアングルが。

しかし、もう一方の三人は気にも留めず、ニコニコほのぼのと画像観賞を続行中。


「見事な夕焼けだったんだが、ちょうど車に乗っているときでなぁ」

「(某たちは幸運でしたな、元就殿)」
「(そうだな。これも、我が日輪の加護を受けておるゆえだ)」

「何だ何だ、内緒話か?ワシにも教えてくれ」

「徳川ほど日輪が似合う者はおらぬ──と」
「えぇっ?…まさか毛利にそんなことを言ってもらえるなんて、思ってもみなかったな」

本気で騙され、照れる家康である。

その後のバーベキューや花火の様子も、盛り上がっているのが伝わってくるような、かつ綺麗に撮られたものが何枚も続いた。



(本当に楽しかった…)


見ている内にウトウトしてきたが、幸村の頭の中には、今日あった出来事がまざまざと浮かぶ。
カメラの中には、自分と同じように楽しんでいる皆の姿が沢山いて、それが一層彼の心を満たしてくれた。


(…またきっと、皆でこうして……)





「──あ。旦那、寝たね」
「相変わらず早ぇーな」

しかし時間も時間で、今日はあれだけ動いたのだ。かく言う彼らの瞼も大分重くなっている。カメラは政宗の手に渡り、それぞれ定位置にきちんと戻った。

家康と元就は、幸村を見守るように向いて目を閉じたが、佐助と三成は真逆だ。
斜め後ろに幸村の存在を感じながら、隣にはなるべく近付かない(近付きたくない)ようにする。

しばらくの後、いくつかの寝息が聞こえ始め……




………………………




「(Hey、慶次!…Shit、全っ然起きやがらねぇ…!)」
「(…んだよ、うるせー)」

「(アレだアレ、幸村のsexy写真!アレがねーんだよ!まさかコイツ消しやがったのかッ?あの、最高のgravureをよ!!)」

目をこする元親に、政宗はそれはもう必死のひどい形相だ。


「あー…?──ああ、何か別フォルダに入れたとか何とか…」
「What!?…そーか、佐助に見せねーためか!…Ahー、ビビったー…マジビビった。Haー、これでゆっくり寝られ…」



──振り向いた先には、それはそれは世にも素晴らしい笑顔が。




「最高のグラビアって?俺様も、是非お目にかかりたいんだけどな〜^^ で、どんな娘?」



「……ぐんな〜い、元親。See you tomorrow」

「…おー。会えることを祈ってるわ」


そして、元親は再び幸せな夢の中(未来デート)へ。

他の彼らも似たり寄ったりらしく、珍しいことに三成までぐっすりの様子。犬猿の二人も、舌戦であっても消耗は大きかったようで、同じく深い眠りへと就いた。


残念ながら、見られる者は誰もいなかったが…
そこには、幸村を中心に穏やかに眠る顔が並ぶ、楽しい一日の最後にはぴったりの絵が出来ていたのだった。

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