失恋日和2


「なぁ、幸!今度の日曜空いてる!?」
「…慶次殿」

彼は、最近やたらと自分を遊びに誘って来る。土日でも部活があることを知っているだろうに…

「何度も言いまするが、次の試験前まで空いておりませぬ」
「あちゃー、そうだった」

残念、と嘆き、「皆でどっか行こうと思ってたんだけどなぁ」

「皆?」
「政宗と元親のことが好きなコに頼まれてさぁ。こう…自然に皆でグループデート〜って」
「で、で、でーと!?」
「うん。まぁ俺らは脇役だけど…」
「そ、そのような!!某には不要でござる!」
「うん、だから俺らは…」
「破廉恥でござるぁぁ!」
「だからぁ…」


しばらく騒いで気が付くと、慶次殿は何も言い返さずに自分を見ていた。


「ごめん、ごめん。でもさ、幸」
「な…何でしょう」

一人で騒いでいたのが後になって恥ずかしくなり、ボソボソと聞き返す。


「やっぱりさぁ…。失恋ってのは、次の新しい恋っつーのが一番の薬になると思うんだよな、俺は」

「…は!?」

失恋!?

何の話だ、一体…


「幸のこと好きっていうコ…沢山知ってるよ、俺」
「は、はあぁぁぁ!?」
「部活ばっかじゃなくてさ、ちーっとそういうのにも目を向けてみたらどーかなと思ってさ?そうすれば、お前も」
「な、何を…」


何を言っているのだ、慶次殿は…


唖然としていると、彼はニコリと笑って、


「俺もそうだったからさ!…あんときゃ、幸に世話になったよな?」
「慶次殿…」


中学に入ったばかりの頃、慶次殿は失恋した。ずっと好きだったという相手は、ご友人の恋人で…。

…自分は、何も力になれたようには思えぬが。

ただ、慶次殿がまたあのように笑ってくれたら、と。
毎日毎日しつこく登校時に迎えに行ったり、すぐにどこかへふらつく彼を強引に引き戻したりと、今思えばとんでもなくウザったい仕打ちを働いていた。



「だからさ…今度は俺の番だよ」

「…某は、失恋などしておらぬ。お門違いも良いところですぞ」


しかし、慶次殿は仕方ないものを見るかのような顔で笑う。



それから、彼は毎日のように自分に付きまとってきた。

その話をされればすぐに不機嫌を露にしたが、それ以外のことの方が多く、結局最後には自分こそが話に夢中になっている。


そうしていると、最近つい考えては気が沈む『それ』から切り離されるので、口には出さなかったが、慶次殿のお祭り好きには感謝していた。
普段なら、「慶次殿も少しは真面目に…」などと小言の一つも言ってしまうところなのだが。



「最近、通り魔とか引ったくり多いよなー」
「そうですなぁ」
「幸んちの近所でもこないだあったって…。気を付けろよ?」
「ふん。そのときは某が捕らえてやりまする」
「馬鹿、危ねーだろ」
「馬鹿とは何です、馬鹿とは」


部活帰りに、どうせ遊んでいたのだろう慶次殿に会い、一緒に下校した。
最近、彼は政宗殿と仲が良いらしい。ほぼ毎日、うちの近所にある政宗殿の家に寄るからと、自分と帰路をともにしている。




「――あ」
「あ」




佐助の家も…すぐ近所で。



その家から、佐助と彼女が出て来て…。





――二人の顔が近付いて。





その後、彼女を駅まで送る為だろう、二人は並んで歩いて行った。

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