僕らの夏休み(中)-1
ゴマ様へのお礼・捧げ文。(前タイトルの続きです)
素敵リク「幸村総受け、皆で海」(中編)
親・慶・家・就・政・幸・三・佐。捏造脇役少々。
(↑登場順。出番はまちまち) 高校生設定。
前編からの続き、〜夕方へ。流れは同じような感じで、やり取りばかりです。長文ゆえ、お時間のある際にどうぞです。
※ぼんやり下ネタ少し。
海関係、無理ある設定や状況全てスルーで。
タイトルは【biondino】様から拝借・感謝^^
(全4ページ)
結構な時間をゲームに使うと、「そろそろお開きにすっか」という声が上がり、皆また自由に泳ぐ形になった。
「慶次が、トロくさくてよ〜。お前、結局何回鬼やった?」
「…四回?」
慶次は情けない顔で、「だって、皆バンダナ隠してんだもんなー。ひでぇよ」
「ワシはちゃんと腕にしたぞ?」
「場所指定は、ルールになかったであろう」
「だからって、足首はないじゃん」
「元就、絶対捕まらねーとか言ってなかったか?」
元親がニヤニヤと言うが、
「鬼らがあまりに鈍重で、退屈過ぎたのでな」
獲物を追い詰める方が、断然楽しかったらしい。
「捕まらなかったのは、真田と政宗と三成か。一体どこにいたんだ?」
「Ahーあっちの洞窟とか、その辺。幸村、お前は?」
「そっ、某はひたすら潜って、ウロウロしておりました!」
「Oh〜、そりゃ会わねぇわけだ」
「ですなぁ!」
いけしゃあしゃあと言う政宗に、幸村も精一杯の演技で返す。
「……(疑)」
「ぁんだよ石田。何か文句あんのか?」
「みっ、三成殿はどちらにおられたのでっ?」
幸村が焦り聞くと、
「洞窟の陰にいた…貴様は見かけなかったがな」
「!!」
瞬間、汗が吹き出る幸村であるが、
「Ha!お前が鈍かっただけだろ。俺の方が、上手く隠れてたっつーこった」
「…何?」
三成が眉を動かすと、政宗はあおるように挑発の言葉を吐く。
即座に二人の水上バトルが始まってしまったが、そのお陰で幸村の焦りは消えた。
「喉が渇いたので…」
「あ、そっちの浜からも戻れるぜ?」
「そうなのですか」
元の砂浜から大分離れていたので、そちらの方が楽だということだ。
幸村は、元親が教えてくれた小さな浜辺へ上がり、言われた通りの道筋をペタペタと歩いていく。
こちらの砂浜はほとんど人の手が入っていないようで、転がる石や尖った貝殻を踏まぬよう気を付けながら、上の舗装された道に行き着いた。
(おぉ…何やら涼しいな)
道の端には立派な木々が立ち並んでおり、絡まり合った幹が自然のアーケードを作っている。
そのせいで気温もかなり違うらしく、木漏れ日が白い道にまだら模様を落としていた。
出口の向こう側に知った風景が見え、『こう繋がっていたのか』と面白く思っていると、
「(おっ…)佐助!!」
「っ!?」
つい大声で呼び掛けてしまい、当然の反応で振り返られた。佐助は一瞬ビクッとし、しかしすぐに幸村の方へ駆け、
「あれ…?泳いでたんじゃ…」
「ああ、あちらにも上がれるところがあってな、そこから来たのだ。行ってみるか?」
「あ、ううん」
佐助は手を振り、
「あのさ……さっきは、本当にごめん」
「え?」
「…貝…」
よく見ると、佐助は著しくしょげた顔。
あ!と、幸村は即合点がいき、
「良いと言ったのに!…まさか、それで来なかったのか?」
「ゃ…」
「貝は、無事だったのだから。鬼ごっこ、すごく楽しかったのに…」
佐助がいれば、また盛り上がったことだろうに。
落ち込ませていたのだとは思ってもいなかったので、気付けなかった自分を戒め、幸村は胸を痛める。
「…じゃなくて、俺様の分集めてくれてたって…」
「──あぁ」
「あー…っ、時間戻したい…!」
佐助はへたり込み、おいおいと嘆き始めた。
おどけたような調子だったが、幸村のためにそうしたのだろうことは、すぐ察せられたので、
「それこそ、気にしなくて良いのに、」
「気にするよ……(絶対欲しかったよ…旦那が、せっかく俺様のために…)はぁぁぁぁ…」
ぁぁぁぁ…と唸り続け、頭を垂れる佐助。
(ん…?)
ふと、しゃがんだままの彼の膝に目が留まり、
「血が出ておるぞ!どうしたっ?」
「…あー、ちょっと切っただけ。で、そこの水道で洗ってたとこでさ。大丈夫、その内固まるって」
「しかし──あ!」
「えっ?」
幸村の大声と、何故か嬉しそうに笑う顔に佐助は当惑するが、
「なに…?」
「良いから、ちゃんと座っておれ!」
椅子として手頃な岩に佐助を座らせると、幸村は水着のポケットに手を突っ込み、
「これだ!」
「…えっ、救急セット?旦那がっ?」
「これも防水なのだぞっ」
ふぁっはっは!と誇らしげに笑い、幸村は小さなポーチを開ける。
「えーっと、ここがこうで……む…?」
「…俺様、見てみよっか?」
「えぇい!怪我人は大人しくする!」
「へぃ…」
やっぱり、という風に佐助はすぐに引き下がった。
佐助の両脚の前で膝を着け、ポーチの複雑な作りに頭をひねっていた幸村だが、やっと消毒液を見付けられ、治療に移る。
「…よし、これで良かろう。テープも耐水性のやつだからな、大丈夫だぞ」
「おー、ありがと。お世話かけまして」
佐助は頭を下げると、羽織っていたパーカーのポケットを探り、
「旦那、手ぇ出して?」
「ん?」
言われた通りにすると、
「これは……」
幸村の両の手のひらには、様々な色合いの貝殻が乗せられていた。
「そっちの砂浜にもあるって聞いてさ。で、ドジ踏んじゃって」
「佐助…」
「旦那が集めてたのとは、全然違うと思うんだけど…」
「いやっ」
幸村は佐助を見上げ、「俺が拾ったものより、断然綺麗だ!すごいな…やはり、佐助はセンスが良いからなのだろうなっ?これだけで、もう作ってしまえそうだぞ!」
「……………そぉ?」
大分自粛と反省をしていた佐助であるが、一瞬で吹き飛びそうになる。のを、どうにかこうにかこらえると、
「いや、やっぱ旦那のには及ばないよ(価値的な意味で)」
「そんなわけがあるか。絶対こちらの方が良いし、お前はこれの方が似合う!」
「…そっかな」
「そうだ」
「でもさ、実はこれ、二つ作ってもらおうと思ってて…」
佐助の指が、幸村の手の中で貝殻を選り分けていく。
「ピンクとか、ちょっと微妙かなぁと思ったんだけど」
「いや、俺は良いと思うぞ!しかし、俺に似合うだろうか?──ぁ」
佐助は、一言も『旦那に』と言っていないのに。サッと顔に熱が集まり、自分が恥ずかしくなる幸村だったが、
「絶対似合うって!俺様が選んだんだから、間違いないよ。ただ、色がどうかと思ってただけでさ」
…どうやら、佐助は気付いていないようだ。
こっそり安堵した後、幸村は改めて、喜びの笑みでもって礼を告げた。
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