失恋日和1
彼女持ち佐助(←)幸村(←)慶次。
高校生くらい。
他、元親と政宗、捏造脇役が少し。
(全3ページ)
佐助に恋人ができた。
「わ〜!佐助くん、上手ー!本当に料理得意なんだぁ」
「そーお?」
「うん!切るのも速いし、何から何まで手慣れてるし。格好良い!大人って感じ」
「そーかなぁ?そりゃありがと」
「私、立場ないなぁ…。恥ずかしいかも」
「いやいや、んなことないよ。俺様、お菓子とか作れないもん」
「あっじゃあさ、今度ウチで――」
べたべた
イチャイチャ
「……」
ぬがぁぁああ!!
…お主ら、今は調理実習とはいえ授業中なのだぞ!? 一体何を考えておるのだ!
始まって以来、ずーっとずーっと、ずぅぅぅっと!そのように!!
全く、破廉恥極まりない!!
見ておれ!佐助のあの締まりのない顔に、この布巾を――
「きゃっ、痛!」
「おいおい、平気?――ほら」
「あ、ありがと…」
あ、手を…。
…し、しかし、水で洗い流すくらい自分でできるだろう?わざわざお前が手を掴まずとも良いではないか!?ほら、彼女殿が真っ赤に…。だからお前は破廉恥だというのだ全く、早く手を離…
「――はい。これで大丈夫っしょ」
「わぁ、用意良いんだ」
…あれは、いつも自分の為に持ってくれていた絆創膏。
ザク、ザク、ザク、ザク……
「うぉおい!おまっ、それどこまで切る気だよ!?」
「は?」
手元を見ると、キャベツの千切りがまな板一杯、山盛りになっていた。
「誰がこんなに食うんだ!?」
「…食物繊維は多く摂った方が良いと言いまする」
「だからっつって、これ…。てか、千切りになってねーしよぉ。ただの切れたキャベツじゃねーか」
「キャベツはビタミンCも豊富らしいですぞ?元親殿は、身体が大きいゆえその分食べませんとな」
「ちょっ…やめっ」
「元親くん、カワイイ〜」
周りの女子たちが騒ぎ始め、自分たちの班は一時クラスの注目を集めた。
――が、あの二人だけは見向きもせず、最後までふわふわな世界にいるままだった。
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放課後。
部活は自主練だったので、政宗殿の野球部に行き、投げさせて頂いた。
子供の頃からやっているバッテリーごっこ。野球漫画に影響され、よく二人でそのシーンを再現したりと熱中していたものだ。
政宗殿がいないときは、佐助と二人で…俺がピッチャー、佐助がキャッチャー。
佐助は、性格的に見ても、絶対こうだよね、と笑って…。キャッチャーは女房とかって言うじゃん?俺様、オカンなんて呼ばれてさぁ…、きっと一生アンタの面倒見てるんだろうなぁ…
――と。
言っておったのに。
あやつは。
「Hey!幸村、テメーどこ投げてやがんだ!」
あ、しまっ…
ボールは、そのままフェンスの外へ。
「Oh〜……」
政宗殿が絶望的な声を出す。
確か、あそこは…
「――政宗様!どこぞの不届きが、ボールを勝手に使ったらしく…!」
政宗殿をも大人しくさせる凄腕教師、片倉先生がすぐにやって来た。…片手にはボールがめり込んだ跡のある大根を持って。
普通にグラウンドで部活をしていればそんな場所にボールが入るわけがないので、先生も初めは部を心配してのことだったのに。
すぐにバレて、みっちり二時間は説教を食らった。
遊びに誘ったのもボールを飛ばしたのも自分だったというのに、政宗殿は隣で一緒に正座をしてくれていた。
いつもなら不甲斐なさで情けなくなるところだが、何故か今日はそれを感じなかった…。
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