みんな家族4
(政宗様…また一歩大人になられて…)
小十郎は、込み上げるものを堪え、政宗と幸村の写真を見つめた。
政宗の表情と、しっかりと繋がれた手に鼻の奥が熱くなる。
そのとき、客人の知らせが入り、
「あのさー…、いい加減ウチの子返してくんない?そっちが言ったんでしょ?出発するまでの何日かで良いからって」
佐助を筆頭に、隣の一家が全員訪問。
「まぁまぁ、きょうがさいごなのですから」
「迎えがてら、こうして招いてもらったのであろう?細かいことを申すな、佐助よ」
「ウザい」
「ひどっ…、だってこっちが悪いんじゃん!俺様だって、鬼じゃないんだから我慢してやったってのに──」
そこで、小十郎が見ていたものに佐助の目が留まる。
それはアルバム機能付きの日記で、小十郎が肌身離さず持つ『政宗様成長記録』であった。
「だいたい…」
佐助は、眉を上げその最新ページを指し示すと、
「これのどこが『大人』なわけっ?
散々泣きじゃくって……結局、こっち残れることになったくせに!!」
『やっぱり、ゆきむらとはなれたくないぃぃ…!!』
わぁぁぁぁぁぁ(号泣)
『政宗様…!(男泣き)』
『坊っちゃん…っ、ずっと気丈に振る舞ってらして…!』
『だでぃー、まむ、ごめんなさいぃ…でも、おれ…っ』
『…この子がこんなに我を通したのは、初めてだな…』
『我慢させてたのね(泣)。ずっと寂しい思いをさせてたのに、ママたちの方こそごめんね…っ』
──で、涙は感動のものに変わり、ご両親とはお別れ。
『だいじょうぶでござるよ、まさむねどの。それがしは、ずっとまさむねどののおとなりさんでござるよ』
『ゆぎむ゙ら゙ぁ〜〜ずびずび』
二人手を繋いだところで、小十郎がカメラをパシャリ。政宗をなだめるためか、幸村はほわわんとした笑顔。
恐らく幸村は、外国も大人になるのも、そんなに遠いものとは分かっていないのだろう。
さらに、
(まさむねどのは、じつはさみしがりやさんなのだ。でも、きっとバレたくないだろうから、それがしはだれにもいわないのだっ!)
勘違い、かつ一方的にお兄さんぶっている事実は、誰も知らない。
「結局、その日からずっと返してくんないじゃん!人さらいで通報するよ!?」
「隣なんだし、良いじゃねぇか。──ご両親がいなくなり、寂しい思いをするかと…これからは、家族同然の付き合いでお願い致します」
「何を今さら!ワシは、元々そのつもりだったがのぅ?」
「こちらこそ、あらためて、わたくしたちもよろしくおねがいしますよ」
「あっ、おやかたさま!みんな!」
「だんなぁぁぁあ(俺様の名前も呼んでよぉぉ!!)」
「うわー、なんだあのかお。きっもちわりぃ」
「ぁんだと、このガ…っ、…ぉ子様、はぁ。その口縫い付けてやろーか?俺様得意だから、キッレーにやったげるよ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、走り回る三人。(幸村の手を取り、政宗が佐助から逃げるので)
「うちのゆきむらは、モテモテですね」
「ワッハッハッ!相変わらずで何よりじゃ!」
「…ないわ」
(それより何より、謙信様は今日もお美しい、嗚呼…!!)
──これなら、政宗様も寂しい思いをする暇はないだろう。
そう笑むと、今日も小十郎はそっとカメラを(佐助を外して)向けるのだった。
‥おまけ‥
「おやかたさま、ははうえさまー!あそんでくだされー!!」
「むぅん!望むところじゃ、幸村ァ!!」
「なにをしてあそびましょうか?」
「おふたりの、きゃっちぼーるがみたいでござるぅぅ!!」
「わっはっは!お主大好きじゃのう!あい分かった…ゆくぞ、謙信!」
「それこそ、のぞむところです…かかってきなさい…!」
…………………………
「こじゅ……catch ballって、あんなんだったか?」
「…あれは、もはや弾が大きいだけの銃撃戦…」
「はぁぁん、謙信様ぁ〜!お美しいぃぃん…!」
「ふたりとも、すごいでござらぁぁあ!!」
「──ちょ、かすが…俺らも後でやろーぜ」
↑良いとこ見せたい
「負ければ、もっと惨めだぞ」
「ぐっ…」
佐助は、今日も立場の維持に勤しみます。
‥おまけA‥
「家事は楽になったんじゃねぇのか?女手が増えて」
「…あ、まぁー…」
小十郎の言葉に、佐助は曖昧に答える。
…………………………
『料理は、母の務め…』
スパパパパッ!!
↑大根、空中瞬速カット。
『うぉぉぉ…!?ぜんぜんみえなかったでござる!ははうえ、もういっかい!!もういっかいみたいでござるっ!』
『ふふふ、しかたありませんねぇ』
…………………………
『謙信様のお手を煩わせるなんて…!かすがに任せて下さい!』
で、オシャレで美味しそうな料理がズラ〜リ。
『ぬぉぉ、美味じゃのぅ!お主、立派な嫁になれるわ!』
『ふ、ふん。(嫁になんか行くか)』
『おいしゅうござる〜。なぁ、さすけ?』
『う、うん、ほんとねー』
『かすがどのがやってくれるから、さすけとたくさんあそべるようになって、うれしいぞっ』
…………………………
「あぁ…分身でもできたらな…」
「何だ?分担できて、楽になったんじゃねぇのか?」
「ハァー…」
結局、料理は週に半分ずつ、佐助とかすがで担当することになった。
夫婦間と子供たちへのものはさることながら、息子から父への、兄から弟への、娘から母への行き過ぎるそれにより、
変わってはいるものの、どこの家族にも負けない、あふれんばかりの愛だけは確かである。
‐2012.7.28up‐
はるひ様、お誕生日おめでとうございます
素敵ネタをこんな捏造してしまい、本当に申し訳ないです;
慶・親・就のネタたちも絶対出したかったのに〜なんで、彼らのもいつか…!
本当に、はるひ様のお陰でサイトをやれるようになれまして、ご恩・感謝は尽きないです。誕生日以外でも素敵絵を沢山もらってるのに…と、ずっと思ってまして。で、謙信様の話をどうしても贈りたかったんですが、未だに信謙話を勉強不足で;
結局、自分が美味しい思いさせてもらって本当に申し訳ない。かすがと幸村のやり取り、ずっとやりたかったようで;
政幸寄りのつもりだったんですが、やっぱ佐助が出ばってて良い思いしてますね。でも、幸村はああいう政宗を皆には内緒にするのは、自分だけが知っておきたいから…とかそんな潜在意識。
キャッチボールは、アウトドアな夫婦のラブラブスキンシップ、とか私の間違った思い込みから。あれ、ラブラブのつもりなんです。絶対違いますね。
ファイブスピア(五本槍)は、幸村の好きな特撮戦隊もの。すいません、他に思い付かず。
はるひ様、こんな奴ですが、これからもどうぞよろしくお願いします(^∇^)
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