理由は至って簡単3







(懐かしいな…)


高校の入学式を迎えた日の帰り道、幸村は行き交う小学生たちを目にし、頬を緩ませていた。

ランドセルを卒業してからもう何年も経つが、学校指定のバッグには、あのお守りを未だに付けている。


「これで、九年目だねぇ」
「あと二年で達成だな」
「もー表彰もんだよね。誰かしてくんないかな」

何だそれは、と笑うと、佐助も同じ顔になる。


これから一年経てば、二人が同じクラスで過ごすのは、十年になる──という話だ。

周りからは「運命だ」とからかわれながらも、佐助が飄々とした態度で、「そうなの〜♪羨ましいっしょ?」などとかわすので、幸村はそれについて嫌な思いなど、一つもした試しがない。

というより、そう言われてむしろ嬉しいのだから、全く問題がなかった。

(これを佐助に言うと、『どっちの意味なんだろ…』と、複雑な顔にさせてしまうのが、最近少し気になるところなのだが)



「そのお守り、結構効くのかも」
「え?」

「それさー…実は、交通安全祈願じゃないんだよね」
「そうなのか?」

うん、と佐助は苦笑気味に、


「実はさ、……『縁結び』」


「──ああ」

なるほどな、と幸村は頷くが、佐助はカクッと脱力する。


「いや、分かってたけど…」
「どうした?」

「…んや、何でも」

哀愁を帯びる佐助に、幸村は首を傾げるが、


(…あ。だからか……?)


佐助の方のお守りは、小学校卒業後は、バッグに付けられていない。
が、ポケットにいつも忍ばせているのを、数年前に偶然知った。

そうかそうか、と幸村は、また佐助の知らないところで胸を温め、


「しかし、佐助は本当に、思いやりのある良い子であったよなぁ」
「へ?」

ポカンとする佐助をよそに、幸村は、ほんわかと昔話を語った。

赤いランドセルと、彼のイタズラっぽい顔や、照れた顔。
…今でもすぐに思い出せ、胸がきゅうと鳴る。



「いや、旦那……買いかぶり過ぎだって、それ」
「照れることないだろう。俺は、本当に嬉しかったんだぞ?」

「あー…そりゃ、俺様も嬉しいけど」

佐助は、再び苦笑いすると、


「だって、そんな優しいこと考えてなかったし」
「え?」

きょとりと瞬かせる幸村に、非常に居心地が悪そうな顔になる佐助。

しばらくためらっていたが、観念したようにまた笑い、


「単に、旦那とお揃いにしたかっただけ。男であの色選ぶ奴、他に絶対いないと思ってたし。…てか、ヒデー奴でしょ、俺様」


「──…」

幸村は、正に開いた口が塞がらない。

あの日、小学校の前で佐助の姿を見たときと、ほとんど同じほどの呆然とした顔。


「あー…やっぱ、言わない方が良かったかなぁ」

「い、いや…、」

幸村が、あせあせ否定すると、佐助は照れ笑いを浮かべたままで、


「大好きだったから、旦那のこと。──あ、もちろん今もさ」


……彼の片手は、ポケットの中に。


よく、周りの友人たちにする冗談。それを、自分の前で言うのは珍しいな、と幸村が笑うと、


「いつも冗談じゃないし、これも違うぜ?」

と返ってくる。

だが、顔は変わらず、笑ったままだ。
なので、幸村もいつものごとく、「おぅ…」と、頷くのみ。


先の言葉に、『…これからも、ずっと。』が付け加えられ、幸村の疑問が解消されるのは、この約三年後。

その後も、二つのお守りは決して離れることなく、その効力を証明し続けたという。







‐2012.5.22 up‐

あとがき


読んで下さり、ありがとうございます!

これでも佐幸と言い張る(´∇`)

だからか、と旦那が思ったのは、『佐助も、いつも同じクラスになりたかったんだな』と分かって、嬉しくて。
で、肝心なことには気付けてない。

佐助は、長年耐え忍び頑張る。それが、当サイトに多く見られる佐幸。
やっぱ、いつもこんなんですみません。

あのとき友達になった同級生は、慶次・家康・元親ですね^^ 三成は気に入る紫がないから黒にして、政宗や元就はノーマルに青と緑で、目立ってなかった…みたいな。


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