理由は至って簡単1


佐幸。ほのぼの、甘さ控えめ。お館様も登場。

小学生〜高校生(最後に少し)

当サイトの佐幸は、いつもこんなんですみません。佐→幸な感じですが、佐幸のつもり。

またもや、キャラの色ネタ。


(全3ページ)‥最終pは短め。













…あの場で泣かなかったのは、随分成長したものだと、褒めてやりたいくらいであるのだが。


先ほど、一人門の外へ飛び出した彼。

追い付いてみれば、道の端で小さくうずくまっている。それを腕で包むように抱き、嗚咽を洩らしながら。


「…すまぬ、幸村。ワシが、気付いてやれば良かったのう」

慰めるように肩を叩くと、幸村は顔を上げぬまま、ふるふると首を振った。


──今日は、小学校の入学式。

その主役である幸村と、先月行った買い物でのやり取りを、信玄はじわじわと思い出す…











『もーいーくつねーるとー♪』のあの歌をもじって、小学校入学への楽しみを、終始笑顔で表す幸村。
たまに、『ともだちひゃくにんできるかなー♪』に変わったりしながら、他の買い物客たちの微笑を誘う。

大きなデパートで、入学までに用意するべきものを買い揃え、朝からずっとルンルンである。

好きなキャラクターものの文房具や、学習机──彼の反応の一つ一つが喜ばしく、信玄も笑顔が移りっ放しだった。


だが、幸村が本当に喜んでいる理由は、それが一番なのではなく…



「おやかたさま、にゅうがくしきがおわったら、いっしょにかえられまするかっ?さすけと!」

何度聞けば気が済むのか、と呆れてしまうが、信玄は笑いながら、


「ああ。あやつの荷物は先に届くし、猿飛殿は、入学式の後飛行機に乗るからの。それを、お見送りしてからじゃな」

「たのしみでござる〜!はやく、にゅうがくしきがきてほしいでござらぁ…!」

そうじゃな、と信玄も微笑み答える。


話題の猿飛家も、彼らと同じく父子家庭(信玄と幸村は、実の親子ではないが)で、この度父親の長期海外転勤が決まり、息子の佐助を武田家で預かることになった。

両家は、昔から親戚ぐるみの付き合いで、幸村と佐助も、親友であり兄弟のような間柄。

幸村は、もうずっと前から心待ちにし、それは佐助も全く同じであるのが、信玄にもはっきりと伝わっていた。



「それがし、これにしまする!」

最後に来た売り場で、幸村がハツラツとそれを指し示す。


(やはりか……)


信玄は、女性店員に視線で救いを求めるのだが、


「まぁ、嬉しいです!私も、このお色大好きなんですけど…最近、こちらの方を好まれるお客様が、多くて…」

と、コソコソと苦笑混じりに言い、


「ですので、周りとカブりにくくて良いと思うんですね」



(しかしのぅ…)


信玄が、少し不安げに表情を固くしてしまうと、


「大丈夫ですよ。今は、こんなに沢山展開されてますから。どんな色を持とうと──…それに、やっぱり子供さんの好きな色を贈ってさしあげるのが、何よりだと思いますし」

熱心で、嘘とも思えない彼女の言葉に、信玄は大きく心動かされる。

確かに、最近の小学生たちの姿からすると、大昔とはまるで違う。
日頃から、その固定概念は失われているように思えていたので、それが確実に証明された今、彼の迷いも消え、


「…うむっ!似おうておるぞ、幸村!」

「!まことにござりますか!!?」

目を輝かせ、頬を紅潮させる彼に、すっかり上機嫌になる。


そうして、待ちに待った入学式がやって来たのだが──…













『こいつ、おとこのくせに、ランドセルあかだってよー!』

『おんなみたいだな〜!おとこのふくきてるのに、へ〜んなの〜!』

『おかまなんじゃねーのー?』


意気揚々と小学校の門から入った途端、矢継ぎ早に浴びせられた、残酷な言葉たち。

(親は、それぞれで盛り上がり、子供たちの愚行に気付いていなかった)

何と口の悪い、とムッとした信玄だったが、恐れていたことを防げなかった後悔の方が強く、すぐに幸村を窺うと、


『…やっぱり、さすけがくるのを、そとでまっておりまする』
『幸村──』

気丈にも、『ちがう!おとこにござる!』と食い付いていた彼だが、彼らが『なーなー、聞いてー!』と、他の子供たちの方へ行ってからは、パッと駆け出し、門の外へ……



…………………………



で、今に到る──というわけであった。


行き交う新品のランドセルは、皆確かにカラフルではあったのだが、男の子はやはり黒や青がスタンダードで、茶や緑、オレンジなどがチラホラ。

女の子は、男の子たちが持つ色に加え、水色などのパステルカラー、ピンク……
よく見てみると、元祖の「赤」色というのは、あまりいない。少しピンクがかっているものが多いというか。

黒色にピンクの縁取りのデザインもあったりと、『あれなら、男が赤を持っても良いではないか』とも言いたくなったのだが、それよりも幸村を追うのが先だった。



「(…たーいしょ)」
「(!佐助…)」

佐助が、小声で静かに二人へ歩み寄る。

門の近くにいる彼の父親を示してみせ、目配せした。


(お主……)


信玄はわずかに目を見張ったが、『…任せるわい』と苦笑し、門の方へ移動する。

佐助はそれを見届けると、


「…だんな」
「っ!!」

その声に、俯きしゃがんだままの幸村はピクリとするが、顔は上げなかった。


「たいしょう、しょうがっこうにもどったよ」
「………」

佐助の優しい喋り方に、幸村の嗚咽は大きくなっていき、

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