サイレントブルー2
──そして、夜は更け…
良い子たちは、皆スヤスヤと寝静まっていました。
「まさむねどの…」
「ん…、!?」
眠りから覚まされた政宗くんは、ギョッと左目を開きます。
……何と、自分の隣に幸村くんが。
一緒に寝ていた慶次くんは布団から飛び出て、隣の陣地に進入している模様。
佐助くんと元親くんの布団に転がり乗って、後者を苦しそうにうならせています。
「ど、どうした?」
どぎまぎ聞く政宗くんですが、幸村くんは、目を潤ませて、
「ごめんなさい……それがしが、したのに…」
──あのチョコレートを入れたのは、本当は、幸村くんだったようです。
(…ああ)
寝起きだしで、すぐは思い出せなかった彼でしたが、
「いいよ。だっておれのせいだろ?」
「………」
「…あ、じゃなくて、おれの『ため』か」
ハハッと笑うと、幸村くんは悔しそうに眉を寄せ、涙を滲ませながら、
「あおはないって……それで、それがし…」
「おぅ。…チョコ、すきなくせに」
ぷぷぷ、と笑い、政宗くんは幸村くんの頭を撫でます。
「すっげー、うれしかったよ」
「!ほんとに…!?おいしかったでござるかっ!?」
「(ゔ)…お、おぉ」
「よかった…!」
涙は引っ込み、満面の笑顔になる幸村くん。
大好きなその顔の前では、政宗くんも何も言えなくなります。
「あれはおまえのためじゃねーし、きにすんな」
「え?」
「おまえ、だれにもいうなよ?ふたりだけのひみつだ」
「しかし…」
「おれは、そっちのほうがうれしいんだよ」
「えぇ…どうして…?」
「おとなになったら、おしえてやるって」
「…また、それでござるか」
むぅ、と口を尖らす幸村くんですが、政宗くんは大人びた表情の中、頬を少し色付かせ、それを嬉しそうに見つめていました。
「まさむねどのが、みんながいないときは、やさしいのも?まだ、ないしょでござるか?」
「Ohー…」
「ずっとまえに、ふたりでやくそくしたのも?」
「あたりまえだろ。ぜってーゆーな」
二人は喋る内、お互いの間を少しずつ詰めていきました。
「では、ときどきそれがしのくちに、」
政宗くんが離れると、幸村くんの目は再び潤み、今にも閉じてしまいそうになっていました。
いつも、眠る前のときのように気持ちが良くなるのですが、どうしてなのか、幸村くんにはさっぱり分かりません。
政宗くんに聞いても、『おとなに…』と、同じことを言われるだけ。
でも、必ず嬉しそうな顔をしてくれるので、つい何度も尋ねてしまいます。
「──いちどやくそくしたことは、さいごまでまもれるよな?」
「…むろんで、ござる……おとこににごんは、ござらん…」
だけど、子供だから、すぐに知りたくなってしまうんでしょう。
こんなやり取りは、既に何度も繰り返して来た二人。──彼が無事でいるのは、もちろん幸村くんの真面目な性格のお陰でした。
「まさむねどのも、ぜったいですぞ?ぜったい、おしえてくださるのですよ?」
「Ahー、わかってるって」
指切りを交わすと、安心したのか、幸村くんはすぐに寝入ってしまいました。
…さてさて。
思い出し笑いをしないよう、また明日から気を引き締めていかないとな。
などと、歳に似合わぬことを思いながら、幸せそうに眠る幸村くんの寝顔を、静かに眺める政宗くん。
顔を近付け、もう一度同じ行為をし──同じように満たされた笑みを浮かべ、彼の後を追いかけたのでした。
‐2012.4.17 up‐
あとがき
読んで下さり、ありがとうございます!
政宗の口調が、彼らしくないですよねぇ…; 幸村と二人だけのときの優しさ…を、どうにか表したいんですけども(-ω-)
皆にブチギレ叫んだのは、狂喜を隠すためと、幸村が『それは、それがしが…』と言おうとしてたのを、阻止するため。
皆の目をかいくぐり、着々と(*^^*)
「虎視眈々」「能ある鷹は…」「賢者は口を閉ざす」で、タイトル『サイレントブルー』。センスが欲すぃ(´`)
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