晴朗4











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「……で、」



「…んで、急に」





「“ かくれんぼ ”……?」





ギギギギ、と軋ませ、こちらに回る三つの首。

無表情の中、黒く静かに光る六つが、元親の心臓を縮み込ませる。



「あああああいつら、どどっ、どーしよーもねぇガキだな!!?いや、てか慶次がな!浮かれ過ぎてよ、いきなり、そーいうのしたくなったんだろ!なぁっ?」

舌が面白いほどに絡まり、焦りばかりが先行してしまう元親。

どうにかそれらを抑えようと、必死になるのだが、



「『どうしようもなくて』……」


「『慶次が』……」


「……『したくなった』、と…」


へぇぇ…、Huーm…、ほぉぉ…?と、ブツブツ噛み砕くように呟く三人の身体からは、黒い陽炎が立ち昇り始めた。



「うぉぉぉいッッ!?よぉぉっく聞いて下さいぃぃッ!!?落ち着いてぇぇぇ!!今出てったら、全部パーっすよぉぉ!?プライドとか男前とか、幸村からの信頼とかぁぁぁ!!」


「それすらも凌ぐ罪じゃない?」

「俺は、そのためなら悪にだってなるぜ。Good bye、慶次…幸村は俺に任せて、成仏しな」

「生ぬるい。死をも勝る慈悲を、存分に与えてやろうぞ…」


「やめて、ヤメテぇぇ!!せめて今日だけは、夢心地にさせたげてぇぇ!!」



「…つーかさ、誰もいないってのに、何でわざわざ?」

「そ、そりゃオメー…、何か恥ずかしいからじゃねーか?少しでも………いやいやいや、何がですか!?何の話か、全く!」


「わざわざ、幸村と別れてよ……そのまま連れ込みゃ良ーじゃねーか」

「…お前じゃねんだから。あいつは、そーいう演出がいかにも好きそうじゃねーか?ほのぼのっつーか、じゃれあいっつーか、……いや、かくれんぼがな?」


「こちら側にも同じ茂みがあるというのに、何故向こうだったのであろうな?」

「たまたまだろ、たまたま!偶然!!良かったじゃねーか、見付からずに済んでよ!」


「そーだねぇ……だったら、やばかったよねぇ……二分の一の確率だもん。……本来なら」

「あいつは、能天気のくせして、たまに鋭かったり」

「幸村が来た時点で普通なら疑うが、あの単純な脳では思いも付かぬと…少々侮っておったな」


「…てことは、さっきまでのイチャイチャも、見せ付け…」

「………」
「………」

炎が増す三人に、元親は恐怖で涙目になりながら、


「んなわけねーって!あいつがそんなタマじゃねーのは、お前らがよく」


「人間って、金や名誉にあっさり踊らされる生き物だからねぇ。最強武器を手にすりゃ、どんなヘタレでも図に乗んのは、必然だと思わない?」

「あんのやろー……今の今まで羊だったくせによ」

「では、制裁へと参ろうか」


「ちょっ……!」

元親の制止は虚しく響き、三人は茂みから身を乗り出す。

力及ばずを嘆き、二人に頭を垂れる思いの彼だったが、








「「逃げやがったぁぁ!!」」






……へっ




と思った次の瞬間に見えたのは、三つの影が並び駆ける姿。


マジか?と、向かいの草地を見てみると…


あの二人は消えており、何の気配も見当たらない。




(…やるな)



驚きながら感心する思いも湧き、元親の口端が上がる。





「元親!てめ、置いてくぞ!」

「何をしておる、グズが。取り返しのつかぬことになれば、寿司どころでは済まさぬぞ」


「へいへい……
ったく、良いダチに恵まれて幸せモンだぜ、俺は」

苦笑混じりに言い彼らに追い付けば、「何を今さら」「分かりきったことを」などとの、ありがたい返しを頂戴する。





「ああああ、やっぱ邪魔しねぇとかぜってぇムリ!!ご隠居なんか、俺様のキャラじゃねぇし!!あと千倍は男磨いて来るまで許すかよ、あのやろぉォォ!!」





……やっぱりな。




すぐさま他の三人の中に湧いた、同じ思い。


「旦那ぁぁぁ」と叫び散らす様子に変わらぬ未来を予想し、笑みが漏れる。



天を仰げば、約一年前に四人で見上げたあの空に似ていた。


だが、明らかに今日のものの方が清々しく、またどこまでも澄みきって見えるのは、きっとここにいる自分たちだけではない。



晴朗の下、友人の背を照らす光に目を細め、元親はその隣へと肩を並べた。











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