晴朗1
最終章・後編です。
メイン六人全員登場。
※まだシリアス風だった前編の雰囲気から、一転しております。やっぱりこの長編だなぁ、という感じです。色々ぶち壊しかも知れませんが、自分的には全キャラに愛を込めたつもりでして(´ω`)
相変わらず浸ってたり、色々クサかったり;
最初と最後は、ほぼ会話・やり取りです。
もしよろしければ、最終ページのご挨拶もご覧下さいませ(^^)
──ありがとね、旦那。
それを、見せてくれてさ……
二人を陰で窺っていた佐助は、口元に微笑を浮かべる。
そのままそこから静かに立ち去り、下の広い道へと向かった。
…ただし、頬は温かなもので濡れきり、これまでになく情けない表情で──…
「…って。
勝手に、人をログアウトさせんじゃないよ」
ジロッと睨むと、
「だいたい、だーれが泣いたって?あり得ない脚色、やめてくんない?」
と、佐助は頬杖をついた。
「いーから、早く戻れよテメェ。『邪魔しねぇ』っつってたじゃねーか」
「だから、してはないでしょ。俺様はねぇ、アンタらの邪魔を阻止するために」
「再び言うが、最たる邪魔は、お前であろうが?単に、打ち上げ後まで引き延ばすのみで、済む話であったのに」
「就ちゃんだって、意気揚々と賛成してたじゃん。しかも、『あれくらいでは、やり足りない』とまでさ」
「先ほどの幸村の顔を見て、後悔した。ミジンコほどは」
「うっそ、そんなに?さっすが、旦那の力は偉大だねぇ」
皮肉たっぷり、胡散臭さ満点の笑顔で応える佐助。
「ま、あれも、俺様からのプレゼントってことで。見てよ、あの嬉しそうな顔」
「あと、もうちょいだったのにな…」
「何が?」
「慶次め、我慢するなと言うたというのに」
「つーわけで、お前がオゴれ、ケーキ」
「はーあ?」
「泣いた奴が負けなんだよ」
「だーから、泣いてねーでしょーがよ。だいたい、それなら…」
「……、……っ…」
三人が静かになると、小さく聞こえてくる、
…嗚咽と、鼻をすする音。
「(この雰囲気で、よく泣けるよねー…)」
「(青っ鼻など、久方振りに目にしたわ。もちろん、他人のものであるが)」
「(スゲーな…俺、鼻ちょうちんってやつ、初めて見たぜ)」
「出してねーわッ!!」
声は抑えていたが、くわっと、正に鬼の形相を表す元親だった。
「んもー…まだ足んねーの?あんだけ泣いといて」
「う…っせぇ…」
憮然とした表情で、元親はそっぽを向き、
「ありゃ、代わりに泣いたんだ。…どっかの三馬鹿のよ」
(たはは…)
漫画のような台詞を、笑いもせず吐く様に、佐助はからかう気もなくなる。
…単純に言えば、『負けた』という話に過ぎないのだが。
「やっぱ親ちゃんは、あの日もサボらせて正解だったね。慶ちゃんに会った途端、全部バレてたわ」
「んなことねーよ」
元親は目尻をこすると、
「言うわけねぇだろ……あんな、…大事なもんをよ…」
(ちょっと、もぉぉ…)
人がせっかく、場を明るくしようとしてんのに…と、苦い笑いばかりが沸く。
まさか、彼の言葉に釣られそうになっているなどは、…いや、錯覚であるに違いない。
「お前ごときに案じられるなど、我も落ちぶれたものよ」
「余計なお世話だっつーの。つーか、俺らのせいにすんじゃねーよ」
他二名からの野次に、佐助も飛び付く思いで、
「そう…、ホントそーだよね。…親ちゃん、あの涙は本当に俺様たちだけのため〜?」
「あー…?」
ニヤニヤ笑いに、元親は眉を寄せるが、
「親ちゃんの『好きな人』。結局口割らなかったけど、ぶっちゃけもう、バレバレだし」
「…まだ言ってんのか?」
「ミイラ取りが、ミイラにな」
「『あれは俺だけのsweet memory』とかって、浸ってんじゃねーか?『クリスマスプレゼントにしような』も、ひどかったけどよ」
「………」
静かになる元親に、佐助は明るく、
「あれってさ〜、『惚れ薬』じゃなくて、『惚れられ薬』だったよね〜。しかも効き目は後から現れて、解毒剤なし」
と、満面の笑みを向けた。
「………」
「『良いアニキ面』かましながらな〜。あわよくばとかつって、狙ってたんじゃねーか?」
「油断も隙もない。慶次に忠告しておいてやらねばな」
「…………………はぁ」
元親は、深々溜め息をつき、
「もういーぜ…好きにしてくれ。…ま、俺なんかを警戒するくれぇの危機感はあった方が良いかもな。あの能天気なお人好しには」
「え、認めた?認めちゃった?」
「へーへー、そーいうことで良いっすよ、もう。オリャ嬉しーわ、お前らの、前より生き生きした姿見られて。どぉぞ、気が済むまでやってくんな」
「そう言われると萎えてしまうな」
「だな、面白くねぇ」
「だって〜。残念だねぇ、いつもいつも」
「………」
下の道で待機している車へ、今すぐ戻りたいと思う元親。
小十郎の強面が、こんなにも恋しいと思ったことはない。
…が、思い直したように一息つくと、
「おめーらは、男前だよ。今日なんかは、特に」
「「「…………」」」
一様に沈黙する三人。
「(…なになに?ちょっと、就ちゃん…頭思いきり殴った?)」
「(覚えはないが)」
「(こないだやったのが、時間差で出たんじゃねぇか…?)」
どこまで本気か冗談なのか、恐々と囁き合う声はもう無視し、
「なもんで、俺ァ今日は、あいつらのことしか考えねぇようにした。…したら、出た。
しゃーねーだろ、嬉しくてたまんねんだから。こん中で、俺が一番あいつと付き合い長ぇけどよ、あんなに良い顔…初めて見たぜ。
…だから、お前らはすげーよ」
「………」
訥々と口にする元親に、三人は再び黙するが、
「いやぁ…、何で『だから』なのか、サッパリだけどね」
「元親の言語能力では、致仕方ない。許してやれ、佐助」
「Haha…やっぱ、元就の拳は凶器ってことだな。気の毒によ」
しかし、三人の口元は緩んでいる。
気付いてはいたが、同様の笑みを浮かべ、もう反論しない元親だった。
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