爛漫1


最終章・前編です。

メイン六人全員登場。

※恐らく見え見えでしょうが、こういう結末です。管理人の自己納得・満足にしか過ぎませんので、不快に思われる可能性大(-ω-)

キャラの台詞が今までに出したのとカブってるのや、色んなちぐはぐさ満載です。
思いきり浸ってます。な内容。














「…おぉっ…わぁー…」



(絶景……だねぇ!)



天には青空、地には緑、視界一杯広がる薄桃色…
目の先に延びる地面にも、それから離れた小さな欠片が、斑な絨毯を作り上げている。


──見事なまでに満開の、桜の木々たち。


慶次は、一人だということも頭から放り投げ、美しい風景への称賛を、遠慮なく表情と声に出す。



(すっげー…。ホントに穴場なんだなぁ…)


名所にも劣らぬ素晴らしさであるのに、見物客は誰もいない。
ここは、途中で声をかけられた農家の老夫婦に、教えてもらったのだが。

車がゆったり通れるのは大分下の方までで、民家もない山の上。観光地にはとても見えず、その理由は簡単に頷ける。

こういう『秘密』めいたものや、『特別』なものには、人一倍胸が躍る慶次であるので、気分は一層清々しくなった。


バイト連勤の数日を終え、いよいよ一人旅に発った今日。

電車で数時間の距離だが、自分の住む街と全く違い、自然一杯な、のんびりとした土地。
気候も暖かく、この上ない旅行日和である。

小腹を満たすため、ここに登る前に買ったものをツマミに、座って桜を堪能することにした。



『……例えば、桜のような……』


夏の花火の際に言われた、あの言葉が頭に浮かぶ。そのときに見た、表情も。


…これに、似ていると言われて。

桜が好きかどうか、それを聞くのにも緊張して…


(嬉しかった、なぁ…)


思わず手を握ってしまったのは、本当は、思いっきり抱き締めたくて、


「………」

頭を軽く振ると、食べ物の包みを開けた。



(花も良いけど、こっちも〜だよな)


わらび餅に似ているが、それより少し小さく、弾力性のある…この辺の銘菓らしい。
駅の店先で味見させてもらい、あまりの美味さに購入した。

ほどよくかかった黒蜜が、餅と抜群に相性が良い。


(んっま〜!)


慶次は、ホクホクしながらお茶も口にする。


(あいつなら、『もっと黒蜜を増やせば良いのに』…とか言って。

で、それ聞いたあいつらが、我先にと自分の分の黒蜜あげてさ。…幸せそうに、蜜だけ舐めてたりすんだろなぁ…)


まぁ、自身もその内の一人に、違いないのだろうが。
苦笑し、また桜を見上げる。



(…ダーメだ。考えない、…でいられるわきゃねーや)


だいたい、これからして心構えなってねーっつーの…
と、自分の格好を見下ろす。


胸の上のストールと、その下に潜むネックレス──トップには、羽やシルバーアクセサリー──が、チラリと覗いた。


(アホだよな…)


これでは、一人で来た意味など、最初から無に等しい。



(………)


ケータイのカメラを桜に向けていると、昨晩した、元親との電話を思い出した。



────……



『悪かった。…打ち上げのこと、知らせねぇで…』
『ああ…』

しかし、慶次は笑って、

『良いよ。後で考えて、よく分かったからさ。…俺がいりゃあ、幸、楽しめねーもんな。姫ちゃんたちにも気付かれちゃ、せっかくしてくれたのが台無しだし』
『あー…』

言い辛そうな元親に、

『気にすんなって!てか、礼言うよ。俺も多分ボーッとし通しだっただろーから、助かった』

明るく言い、『良いお土産あったら、何か見繕って来るな』


『…んなの、良いって』
『も〜、お前が落ち込むことないじゃん!俺は、ありがたかったっつってるだろー?』

『慶次…』
『ん?』

『じーさんがよ、すっげぇ美味ぇの送って来てな…お前帰ったら、二人で飲もうぜ』
『お、マジっ?さぁっすが、じっちゃん!でもま、せっかくだからさ、あいつらも』

『いや、二人だけで。お前に飲ませてーんだ、とことん…』

『……』

小さくなる声に、慶次もそれ以上は言わなかった。



────……



(泣きそうな声、出しちゃってさ…)


お陰で、自分は逆の態度を見せることができた。

…ありがたいな、と素直に思う。

彼だけでなく、昼間のバイト先でも──



………………



『お前ら、ホント最近仲良いよな』

店に現れた、政宗と元就。
慶次は驚き言うが、二人の間の態度は、お互い何も変わっていない。

しかし、やはり以前とは違う、柔らかく親い空気が流れているのは確かだ。
温かに思いながらも、指摘すれば反論してくるのが分かりきっているので、やめておく。


『近くまで来たからよ』
『お前の泣き顔を拝みにな』

『…残念でした』

慶次は苦笑するが、

『Ha』
『フン』

二人は、慶次もよく知る、人を見下ろす表情と不敵な笑みで、

『枕は、持参した方が良いのではないか?』
『Haha。自分の分も、毎晩ぐっしょりだろ』

『泣いてませんー(…あれ以来は)』

『ならば、旅行先では苦労するであろうな。我慢は身体に毒ぞ』
『そーそ、ぜってぇ泣くって。賭けても良いぜ?俺が勝ったら、ここのケーキ全部オゴリな』
『はいぃ?』

『分かって来たな、政宗』
『オメーのためじゃねぇ、幸村に』
『当然よ。我から、と渡しておく。安心するが良い』
『…慶次、裏切んなよ?』

『いやいやいや…(誰が言うかよ…)』

…たとえ、また流そうとも。



だが──



………………



一見、心無い言葉に思えるが。

あれが、彼らなりの励まし方であるのは、手に取るように伝わってきた。
──自分は、ほとほと恵まれている。


(あいつらのときは、俺何もしてやれなかったのにな…)


やはり、あの二人は格好良い。
だからこそ、彼があんな風に笑え、一層魅力的になって。

…自分も、二人のようにそうしなければ。


誓ったのだから。





(もう良っか)


何枚か撮り、再び腰を下ろした。

下から見上げる桜が青空に映え、それも収めておくかと、もう一度ケータイをかざす。

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