宴夜7




「…旦那ってば、美人過ぎ」



(…………!!!)



「さ、佐助…ッ!!?」

バッと離れ、目を丸くするが、



「まーまー、このくらい良いじゃん」
「……ッッ!!」

幸村は真っ赤になり、無言でぶるぶる震え出す。


──その手は、佐助の唇で触れられた片頬へ、覆うように置かれ…


元親だけは、その後に来るであろう事態に、青ざめきっていた。



「あら?あまりのショックで、言葉になんない?」
「……Ha」

だが、ひけらかすよう笑う佐助に、政宗は余裕綽々な様子で、


「ま、左の『初めて』は譲ってやんよ。…っつっても、俺がしたのは、そこだけじゃねーけどなァ…」

「!?ままっ、政宗殿、ちょちょちょっと…!」

途端に頭から火が出る幸村だが、しかし佐助は冷静に、


「バレバレだし。旦那にゃ、土壇場でヘタレ」
「…Hum。つまんねー…」


((ほっ…))


平和とまではいかないが、収まる場に、幸村と元親は深い息をつく。



「佐助…」

「俺様の愛!これで安眠間違いなし。明日も美味しい手料理で、もっと元気になるよ?だからさ」


「………」

…その先を言われる前に、幸村からそれを見せた。


彼が最も好む、幸村の、





(…俺様が、これを引き出せたんだ…)


内から押し寄せる何かに、胸が震える。



まさか、自分がこんな風に、


想い、

感じ、

考え、

伝え、


……笑える日が、来るだなんて。





( ──── )





佐助もまた、今日の宴会前に見せた以上の笑顔を見せる。


そんな二人を、他の三人はただ静かに見守っていた。














「親ちゃん?」
「お前も来いよ、政宗ん家」

「Ah〜?(こいつがいりゃ、話せねぇじゃねーか)」
「(そうだぞ、まだまだやり足りぬのに。あれだけでは)」

「…筒抜けですけどぉ?…何、まぁた邪魔する気ぃ?」
「るせー。お前、言える立場かよ?ったく、幸村の奴…。こんな馬鹿の、言いなりになりやがって」

「あのね…人聞きの悪い…」
「しかし、良いではないか。それだけのものを手にするのだ、痛くも痒くもないだろう?」

「そーそー。俺らからの『餞別』だろ。友情・愛情、たっぷり詰まった、この世に二つとねぇ──な。ってことで、ありがたく受け取ってもらうぜ」



(友情…ねぇ)


佐助の脳裏にあの言葉が浮かび、ふっと口元が緩む。



「そういうことならね。…ま、俺様は親ちゃんの『好きな人』の話を、ゆっくり聞かせてもらうし」

「は?お前、まだ…」

「それは、我も聞いておきたい」
「しゃーねぇ、先にそっから片付けとくか」


「はぁぁ…ッ?んでだよ、おかしーだろ、さっきからよぉっ…」


元親の叫びが、虚しく響き渡る。…だが、やはりこの場の誰よりも心優しい彼。


最後にはもう逆らわず、今晩もまた、その役目に大人しく従じたのだった。







‐2012.4.1 up‐

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

キャラ多いと、やらかしてるとこも沢山だと思うんです。けど、多過ぎて気付けない、忘れてしまうという間抜けさ(;_;)

とにかくこの長編、他キャラ→幸村(恋愛・家族愛・友情)って図と、キャラ同士を色んな組み合わせで絡ませたかったのが目的で。

こじゅや教師キャラたちをほとんどそうできなかったのが口惜しいのですが、いつも周りにはいてですね、そんな明るく楽しい学園と街〜みたいな…

次回で、完結すると思われます。長くなっても。


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