宴夜1


※幸村たちメイン他、生徒会メンバーや、親しい人々。
台詞なかったり少ないキャラもいますが、今まで出てきた方々を、これで全員文字だけでも出せた…はず。(前々回まで含め)

初めは、幸村+かすがと小十郎のそれぞれのやり取り。
その後は、他キャラとの会話やり取り三昧。最後のカオス。幸村が無口;(他が喋り過ぎ)

ひどい捏造話がたんまり。元親と三成には、本当にすみません。
キャラへの愛が、色々間違っています(--;)

乱文長文ですm(__)m













打ち上げの店はこのホテルの三階だということで、幸村は広いロビーのソファにて寛いでいた。


「おぉ、早いな」
「そっちこそ。まだ時間あるのに。…あいつは?」

「先に、店の方へ行ってしもうた。姫殿も来ておるらしく、俺はゆっくりしていろと」

幸村は苦笑するが、かすがは、


「じゃなくて…慶次。何だ、随分早く解放したんだな」
「あ…」

幸村は少し身を固め、

「最後に行った場所が、意外とここに近くてな。慶次殿のバイト先とは、離れておるしで」
「そうか…」

そのまま沈黙する幸村を、かすがは何か言いたげな顔で見ていたが、「そうだ」と、いつもの調子で、


「始まるまで付き合って。ここ、初めて来たし」


ホテルの二階には、ブティックやいくつかのブランド店が立ち並んでいる。
彼女の買い物には何度も付き合わされているので、幸村ももう慣れたものだ。



「幸村?」
「…っあ、おぅ、」

ハッとする幸村の隣に立ち、かすがは彼が見ていたものに視線を向け、

「着たいのか?」
「なっ、ばっ、」

幸村は呆れ顔で小さく叫び、「…お前に似合うかな、と…」


「…っ!」

かぁっと、かすがの頬に朱が差す。

すると幸村も釣られ、言ったのを若干後悔する始末。


──綺麗に飾られた純白のウェディングドレスが、二人を見下ろしていた。



「こ、こんなの、私の柄じゃ…だいたい、まだ先のっ」
「しかし、卒業すればすぐの話であろう?大学卒業までは、とても待てぬと」
「そっ──、だけど…」

かすがは、恐る恐るといった風にドレスを再び見て、

「やっぱり、私には…」

「そんなことはない。きっと、似合うと思う。和装も似合うだろうが…俺は、こういうのも見てみたいぞ」
「…お前な、いきなり…」

さらに赤くなるかすがだが、幸村はドレスに向いたままだったので、少しは救われる。


「あのとき…」
「ん?」

「死を覚悟したときな、」
「っ!」

幸村は、かすがの方に顔を向け、


「これを見ずにいくのが、すごく心残りだと思ったんだ」

と、眉を下げ笑んだ。


「──…」

かすがは返答に詰まったが、幸村の笑みは消えず、


「初めて会ったとき、本当に嬉しかった。両親を亡くして、だが生まれて初めて、懐かしいと思える…探していた人に会えて。お前は『お互い見付かると良いな』と言ったが、俺は、たとえそうでなくとも良いと思ってしまったり…」


「…私、だって」

かすがは、彼の様子に観念したように、


「少し……ほんの、数ミリだがな…っ、
…お前が、その相手であればな、…みたいなことを、…一瞬だけ」


「そ、そうか…」
「そのときだけだぞッ?後は考えたこともないから、安心しろ」

「分かった」と頷きながら、幸村はまたドレスに目を向ける。


「あの出会いが、ここまで連れて来てくれた。…真っ先に浮かんだのは、お前やお館様、皆の顔で…」

「(──ああ…)」

かすがは、やっと幸村の気持ちが分かり、同時に、未だに懺悔の心情が残っているのかと呆れつつ、


「馬鹿だな…それも、お互い様だろ」

との苦笑には、慈しみが混じっていた。


「きっと、誰もが同じように思うんだから」
「………」

幸村の顔から、徐々に陰が払われていく。

かすがは穏やかな声と表情で、


「私は、お前が私に思ってくれるのと同じくらい、幸村が幸せであってくれたら…それで幸せだよ。…二人を誰が何と言おうと、私だって、お前を守るから…」


「──…」

胸に込み上がり、幸村は一瞬震えるが、





「……いつ、から……?」
「すまん。邪魔するつもりは…」

人の気配に二人が気付くと、…気まずそうに立つ、小十郎の姿。


「…私も、先に行っておく」
「あ、おぅ──」

かすがは、恥ずかしい台詞を聞かれた…と、赤く渋い顔で、逃げ出すように背を向ける。


幸村と小十郎は見送り、どちらからともなく、向き合った。











政宗も一緒に来たのかと思った幸村だったが、彼は元就とあのまま学園に残っていたらしく、小十郎とは別で向かうとの話だ。

では、二人も制服か…と、小さなことに幸村は安堵を得る。


「前田先生たちから預かって来た。急に、明日の朝早くに用が入ったらしくてな、行けなくてすまんと…、前田の奴が捕まらん、と腹も立てていたが」
「あ、昼からずっと、某と一緒で…」
「ああ。『そういえばバイトだった』と、二人して笑ってやがった」

渡されたのは、前田夫婦からの退院祝い。
幸村はすぐに電話で礼を言い、慶次にもよろしく、…とは結局口に出せずに、切った。


「…立ち聞きするつもりは、なかったんだがな」
「あ、いえ…かすがも、怒っているわけでは、」
「ああ、そりゃ分かってんだが…」

小十郎は苦笑し、


「本当に邪魔しちまったな…と。せっかくの兄妹の語らいを」

「…そんな」

幸村は、照れたように笑う。

担任である小十郎は、当然二人が血の繋がらない間柄だと、初めから知っていた。


「やはり、きょうだい…なんだな。お前ら二人は、どっか似てやがる。だから…」
「(え…)」

そうだろうか?どのようなところが?
…と聞き返したかったが、小十郎がその先を考えるように止めるので、ためらってしまう。


「政宗様が、よくあいつに要らんこと言っちまうの…何でか分かるか?」
「え?」

いきなり政宗の名が出てきたことに、今度は面食らう幸村。

彼のかすがへの暴言というか、からかいというか…それはあまりに日常の風景で、理由を考えた試しもなかったのだが。


「実はな、少し似ているんだ。俺の叔母──つまり、政宗様の母親に」


「え……」


思いもよらなかった答えに、幸村は目を見開き、小十郎に向く。

写真を見たこともなく、彼は父親似であるようなので、想像しようとすら思えなかったのだ。

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