対論1


慶次佐助政宗幸村元就、鶴姫が少し

前回の翌日から。

慶+佐 佐助以外 慶→幸

長くて、会話が多いですm(__)m

の二人、(今までのを思うと)言ってること色々矛盾がある気がするのは、許してやって下さい;全部、私の考え・力不足のせいです。

の『→』感は弱し。幸村、台詞少ない。













あの事件以後、幸村のケータイは新しく替わったらしいのだが、こっちに戻ってから彼に会っていない慶次は、番号を知らなかった。
他の友人に聞けば良いのだが、それすらもできず、今に到る。

しかし、今日は学園を休むというのは、半兵衛より以前に、かすがから聞いていた。



(落ち着け…)


マンション下のインターホンを鳴らし、緊張の中待っていると、



「おはよ」
「──…」

肩を叩かれ、驚き眼で振り返る。
手の主は、…できればまだ会いたくなかった人物。


「旦那、やっぱり行くって。ま、考えが変わるように、俺様が仕向けたんだけど」

「…で、さっけは何でここにいんの?」

かすがちゃん連絡くれよ…と恨めしく思ったが、今日訪ねるとは言っていなかったのを思い出し、勝手を恥じる。

佐助も私服姿で、登校する気がないのは明らかだった。


「話があってさ」
「ちょ…どこ行くんだ?」
「いーから、ついて来なって」

こちらの意思などお構い無しに、佐助は背を向け歩を進める。

渋々ついて行くと、最寄り駅から一時間以上電車に乗り、郊外の土地で下車した。
そこからバスで数十分。…二人の間に会話はなく、席も離れて座った。


(何で、わざわざ…)


着いたのは渓谷で、大きな橋から山や川が見渡せる場所。秋に来れば、紅葉が綺麗であるのだろう。

だが、周りには何もなく、最適な季節以外は閑古鳥が鳴く──それがよく窺える、のどかな風景だった。
現に、観光客など一人もいない。


「静かなとこで、話したかったから」
「なら、お前ん家でいーじゃん…まぁ、いーけど」

風物が好きな慶次なので、その目に色が映ると、心にも彩りが落ちていく。

どうせ憂鬱な話だ、背景はこういうものの方が、まだマシかも知れない。
それを思ってくれての行動なのかは、不明だったが。


「…俺は、幸と話したかったんだけど?」
「うん。後で、好きなだけ話しゃ良いよ。でもその前に、ワンクッション入れといてやろうと思って」
「何…?」

慶次の表情に、怪訝さが増す。


「一昨日さ、旦那に『幸せにさせてくれ』って言われた。で、俺様こそが旦那をそうする、って応えたよ」


──春らしく陽気な気候。ウグイスの鳴く声が響く。

慶次は、急に青空が眩しくなったように感じた。


「…何、らしくもなく気ィ遣ってんの?俺は、元々それ聞くために…」
「うん。だからさ」


慶次は顔をしかめ、

「すっげー余計なお世話……何で、お前から聞かなきゃなんねーわけ?逆に、全然優しくねぇから。クッション…?釘の間違いだろ」

「あ、分かっちゃった?」

少しも悪びれず、佐助はクスクス笑い、


「でも、全部は分かってないね。…少しは考えたら?いつもそうなんだから、最後まで優しくしなよ…旦那に」
「え?」

その返答に、佐助は呆れたように首を振る。


「旦那、どんだけ悩んだと思う?記憶戻って、さすがに慶ちゃんの好きなのが自分だって分かって──アンタを悲しませるのは、二度とごめんだろうに」

「……」

それは、刃となって慶次の胸へ突き刺さる。ずっと抱いていた葛藤を、改めて口にされたせいで。


(…分かってた、けど、…でも)


「政宗のときだって、きっとすごく辛かった…なのに、またそれを背負わせるの?それも、倍以上の辛いものをさ」


「仕方ないだろ…」

暗い声だったが、どうにか答えると、


「そうだね。けど、分かってたんだよね?旦那からも、同じこと言われるって。だったら、もう良いでしょ?これ以上、苦しませないで」
「………」

佐助の静かな声に、慶次の聴覚と視覚が鈍くなっていく。
音は小さく響き、視界は狭まる。


「──言われなくても、そのつもりだったよ。幸が幸せなら、俺も…って。…ちゃんと、あいつがそこまで気に病まねぇで済むように、笑顔で」

毎日毎日、必死で伝える言葉を考えていたのだ。
ずっと会わなかったのは、それをシンプルにするのに、手間取ってしまったから。

そして、最高の祝福を捧げようと…


「やっぱり慶ちゃんだね。…良かった」
「──…」

佐助は安堵したように、それからニッコリと微笑み、


「安心して、絶対幸せにするから。昔と今の俺様は違う…もちろん、旦那も。…だけど、好きなんだ。関係なしに、大切で大事でしょうがないんだよ」


(…知ってるよ)


今さら言われなくとも、嫌ってくらい。

…嫌というほど、同じものを抱き続けてきた。


「──よく分かったよ。てか、分かってた。…やっぱ、お前らはそうでなきゃ。俺は、」

「うん。本当、良く出来た人だよね、慶ちゃんは」


「……は?」

妙な、というより嫌味な言い方に、慶次は眉をひそめるのだが、


「ん?思ったまま、言っただけだけど?」

と、佐助が歩み寄ってくる。

橋の手すりにもたれていた慶次の横に並び、視線は下の渓谷に落とされていた。


「ここってさー、名所なんだって」
「え?」

佐助は、慶次を見ようともせず、


「この下、年に何回か調べるらしいよ?」
「…?何を?」

「必ず一人は上がるんだってさ。…行方不明者」
「ああ…」

下の川や茂みまでは、かなりの距離がある。
言われてみれば、なるほどな、と簡単に納得できるほどだ。

だが、だから何なのだ?と思っていると、


「今、誰もいないね、俺らの他に。…落ちても、分かんない」


(はぁ…?)


こんなときにブラックジョークなど、面白くも何ともない。

慶次は、苛立ちが湧くのを感じていた。


「失恋したからって、んな馬鹿な真似しねぇよ。つーより、怖くて飛べるか」

「はは…だね。慶ちゃんは、絶対ないよな。で、これからもずっと、そうやって隠し続けんだね。──お疲れ様」

「…何だよ、さっきから?いちいち引っ掛かるよーな言い方」

だって、と佐助は苦笑すると、


「分かってくんねーんだもん。…俺が言ってんのは、こういう意味だって」


と、手すりの外側に向けて、慶次の背を押した。

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