愛慕5







「ところで、呼び出しって何で?」


三人は、人気のない公園…と言うのもおこがましいような小さな広場の、木々の陰で身を潜めていた。

遊具などはほとんどないのだが、周りを囲む緑は多い。
ベンチに寝そべる政宗も、三人には少しも気付いていない。


「…多分、女?そっち関係」
「あーねー、やっぱり」

だが、他人のことをとやかく言える身分ではない佐助。

幸村との出会いも、今の政宗と同じ状況だったな…と、懐かしむ。


「むっ、来たようです」

幸村の声に二人が視線をやると、十人弱の少年たちがベンチに近付くところだった。


「汚ぇ…!んだ、あの人数!」
「底が知れるね〜、…でもホント、しつこそう」
「政宗殿…」

三人は、いつ加勢に入っても万全な状態である。その人数を見たことで、士気は一気に上がった。


政宗もベンチから立ち、彼らに近寄る。

しばらく、何か言葉を交わしていたが、それで解決する問題ではなかったようで…


「ああ、やっぱりね」

佐助が呟くと、乱闘が始まった。


初めは、少しだけ様子を見ることにした三人だったが、


「あ、り…?」
「…ヘェー…」
「おおお…!!」

それぞれ感嘆の声を上げ、展開に目を凝らす。

三人の力など少しも必要ないほど、政宗は次々敵を倒していく。
文字通り、やられた彼らは地面に転がり、互いに支え合い、公園から逃げ去る者が続出した。

いつの間にこんなに鍛えていたのだろうか、政宗は素手であるというのに、一瞬の隙も見当たらない。


「すごい…」

完璧に見入っている幸村の横顔に、佐助は面白くなさそうに唇を波立たせた。

元親は、そんな彼を密かに笑う。


「出番、なかったな」
「…だね」
「はい…」

三人が感心している内に、少年たちは全員散っていった。

一人残った政宗は、少々肩を上下させているものの、ほとんどダメージを受けていない様子。


「あれで、諦めてくれるかなぁ?」
「こっそり、片倉さんに言っとこうかとも思ってよ」
「明日からは、一緒に帰れば良いのでござる。武田の車で送るという手もありまするし」

そう言うと、幸村は茂みから抜け出した。
…政宗の方へ駆け寄る気で、満々である。


「バカッ、隠れてた意味ねーじゃねーか!」
「もー諦めな、親ちゃん。今まで大人しくできてたことが、奇跡でしょ」


「政宗殿!」
「…!?」


(いつから、そこまで強くなられて──?)


尊敬心とライバル心が燃え上がり、紅潮させた顔ときらめく目で、政宗のもとへ走った。


「!危ねぇ!!」
「えっ?」

突然の大声に、幸村は立ち止まる。政宗の視線を追うと、


(──ッ!?)


何かが飛んで来る。

避けられないと悟り、幸村は腕で頭を庇うが、


『ガシャッ』


硬いものが砕けた音がし、幸村の覚悟は無用に終わった。


「大丈夫か、幸村!…つか、何でここにいんだ!?」

政宗が寄れば、

「何っ?何なの!?」
「どしたぁ!?」

と、佐助たちも出てくる。


「What!?──Ahー、テメェかよ」

政宗は元親を睨むが、


「どうでも良いでしょ、今は。…瓶?」

佐助が、政宗が投げたバッグの下を覗くと、そこには割れた瓶の残骸と、


「何、これ……焦げた…?」

バッグの布地に、穴が空いている。…残骸は、何かの液体に浸かっていた。

異臭もし、四人は鼻を覆う。


「Hey…jokeじゃ済まされねーぜ、こりゃ…」
「警察行かなきゃ。この辺、交番ある?」
「今見てる」

幸村以外の三人はテキパキ動き、公園で待機、交番に行く者、と二人ずつ別れることに決めた。
佐助と幸村が交番へ行くことに決まったが、


「政宗殿、あの、お怪我は」

今さらのように、また我に返ったが如く、幸村は政宗を窺う。


「いや、俺は何ともねぇ。…それより、すまねぇ…マジで。俺のせいで、危うくひでぇ目に」

「いえ…!おそらくあの位置では、手に瓶が当たった程度でしたでしょう。そのまま政宗殿に当たれば、…っ」

──恐ろしいことになっていた。
幸村は、背筋が今になり凍るのを感じる。


「…確かにね。アンタ、旦那に感謝モノだよ?旦那が出て行かなかったら、直で頭から被ってたでしょーよ」

佐助の言葉に、幸村はさらにゾッとした。


「とりあえず、ここに掛かんなくて良かったぜ」
「…そーだな」

政宗が、冗談なのか何なのか、股間を手で庇うのに、元親は真顔で返す。

幸村と目が合うと、ニヤッと笑う政宗。

幸村も、つい吹き出してしまった──

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