連繋1


幸村小十郎慶次政宗元親元就孫市かすが鶴姫佐助

小+幸 全員(小・佐以外) 佐→幸

前回の翌日〜。は短め。からは、時間軸が再び戻ります。

カオスで乱文ですm(__)m














『…だから、お前もそれまで──…』



よく見慣れた、不敵な笑み。…だが、どことなく違う気もする。

確かに言えるのは、それを向けられた自分が、大きな歓喜に打ち震えたはずだということ。

…でなければ、このような悲痛に絡め取られるわけがない。



(政宗殿…っ)


追いかけるように伸ばした手の先が、虚しく空を切る。


(誓ったというのに、…某は…)


もし、再び会えるのならば。
次こそは必ず、果たしまする。貴殿は某の、唯一人の──

身体は朽ちるとも、きっとこれだけは永遠に続く。
この心は、貴殿のものなのです。…お伝えしたあの日から、ずっと…






「──どの、…政宗ど、の…ッ」

「真田!おい、しっかりしろ!大丈夫か!?」

「…っ?」

急に辺りが明るくなったかと思うと、肩を強く揺さぶられる。
声の主を探せば、ベッドの脇に立つ小十郎の、険しい顔に行き着いた。


「片倉『殿』──」

「…!?」

驚きの目で見返す小十郎だったが、幸村は再び瞼を閉じ、


「…す、みませぬ…先生…。寝惚けて…」
「あ、ああ…」

小十郎は即座に窺っていたが、…幸村の記憶は戻っていない。


「あっちまで聞こえるくれぇ、うなされてたぜ…大丈夫か?」

と、半開きになったドアを示す。
隙間から膨らんだ布団が見えたが、起きているようには思えない。


「すみませぬ…。妙な夢を見ていたようで。大丈夫…あ、起こして下さり、ありがとうございました!」

幸村は慌てて起き上がり、ベッドの上で頭を下げた。


「いや、別に…」

──が、小十郎の言葉はぷつりと途切れる。

バスローブを着たまま眠ったらしい幸村の、露になった胸元から首筋を、凝視していた。


「政宗殿は、まだ起きませぬよな。朝食は…」

そんな彼に気付かず、さっさと服を着替える幸村。
Tシャツの上からニットに袖を通そうとしたところで、


「先生?」

それを掴み、ベッドに放る小十郎。戸惑う幸村の前で、突然自分の着ていたハイネックを脱ぎ、


「これ着ろ。…頼む」

ついでに鏡を見て来い、と言うと、首を捻りながらも幸村は従う。


「あっ…」

短い声を上げた後、幸村は大人しく着替えて戻って来た。

顔は真っ赤な上、袖の長さが合わず、まるで子供のような姿。首をすぼめ、恥ずかしさから小さくなろうとしているのも、手を貸していた。


「おい…」
「へっ、平気でござる」

母親の如く袖をまくろうとしてやる小十郎の手から逃れ、幸村は片手で引き上げた。
…が、生地の作りのせいか、すぐにタルンと指先まで落ちてくる。

ややむくれ顔になり、結局は袖を折る幸村。
小十郎は、ちょっと笑いそうになったのを堪え、


「髪も、もう下ろしとけ」
「………」

幸村も、反論しなかった。


「朝食は、部屋に運んでくれる」

その言葉に、またもやポカンとしてしまうが、間もなくその通りになり、二人はテーブルに着いた。

眠る一名はとりあえず放置…いや、そっとしておくことにする。


「…俺は、猿飛と前田と毛利と妹に殺されるな。教え子をムショ行きにしちまうとは…」

「大丈夫ですよ。昨晩のことは、決して知られませぬ。先生が話さぬ限り」

「おい、まさか──」

冗談のつもりだった小十郎は、みるみる青ざめるが、


「先生が思っておられるようなことは、何も」

と、幸村は苦笑する。


(………)


…昨晩。

深夜になっても政宗からの連絡がなかったので、小十郎は痺れを切らして部屋に戻った。

すると、幸村と政宗はそれぞれの部屋で寝ており、間を仕切るドアはきっちり閉められていた。

政宗の枕元に酒の缶があり顔をしかめたが、どうやら持参していた物らしい。
…閉じた瞼の下が少し赤くなっている気がし、小十郎は目をつむることにした。

──なので、予想もしなかったことに激しく動揺してしまった。大いにホッとしている自分を、小十郎は嘲笑する。


幸村も落ち込んでいるはずだと察し、話すよう柔らかく促してみた。
喋る内に自分の中で整理できれば、と思っての行動だったが、案外素直に聞いてくれた。

やはり、色々と抱えたものの圧力は弱いはずがなかったのだ。



(政宗様…)


聞き終え、小十郎の胸が痛む。
だが、褒めてやりたい思いに熱くもなる。

そして、幸村の今の状態にも心から安堵した。


「…二度と、そんな真似するなよ。絶対後悔したはずだぜ。──あとお前、他の奴らに黙ってられるのか?何もなかったんだ、別に話しても」

「いえ、誰にも話しませぬ。…あれは、某と政宗殿だけのものにすると決めたのです。…先生も、『忘れる』という条件なのですから、必ずそうして下さいませよ?」

固い意思を見せる目に、小十郎は圧され頷く。
第三者に示すことで、さらに固まったのかも知れない。


「それに後悔はしませんでした、絶対。…昨日は、政宗殿のことだけを考え申した。ですから…」

「…お前は、知らねぇくせに要所要所は掴んでやがる。──なかなか容赦ねぇ…『嫌うから』ってよ」

政宗から言い出したこととはいえ、何と残酷で優しい囁きであることか。
そのときの二人の心情を思うと、苦しくなる小十郎だった。


「政宗様に『何でもしてやりたい』のに、自分を騙して受け入れることは出来なかったんだな」
「…政宗殿に、嘘をつきたくなかったのでござる」
「それで良い。…だから惚れたんだ、政宗様は…」

幸村は、小さく笑い、


「実のところは、ついたのかも知れませぬがな。…『嫌う』など、きっと…」

──と、目を伏せた。

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