告白5



「何でだ?…佐助に告られたからか?」

「いえ。それ以前に、話すつもりで心に決めておりました。…大晦日の夜、舞を観た際に」

「舞…?」

幸村は頷き、政宗を正面から見直す。


「見事なものでござった。…政宗殿のお気持ちが思い出され、あの瞳が浮かび…苦しくなり。──政宗殿への自分の思いが、はっきりと分かったのです。
もしかすると、本当は前からそうだったのかも知れませぬ。…某は、政宗殿の優しさに甘えきっておったのです…」

「甘えじゃねぇよ…俺がそうしてくれっつったんだからよ」

静かに呟く政宗に、幸村は申し訳なさそうに視線を落とした。


「某は、政宗殿…──政宗殿と、ずっと、こうしていたいでござる。…考え申した、何度も。きっと、政宗殿は言葉通り、某を幸せにして下さる…喜ばせて下さる…。今でさえ、充分そうしてくれておるのですから」

「………」

「ですが、それ以上に…某は、今の関係が愛しくて止まないのです。おかしい表現でしょうが、他に言いようがなく…。
某、政宗殿には他の誰に対してもない、何か特別なものを持っておりまする。勝手な思い込みですが、それがたまらなく好ましく、…手放したくないのでござる」


「つまり…恋愛対象としちゃ、毛ほども見られねぇって訳か?ずっと…この先も一生…」

「──…」

幸村の頬が、ぐっ…と震える。


「謝りませぬ…それは、違うという気が致しまするので。…しかし、失いたくがないために避けていたことは謝らせて下され。それは、政宗殿のお気持ちを踏みにじる行為も同然でござった…」


人との関わりが人を生かすと言うのなら、自分がしていたのは真逆のもの。
傍目にはそう見えずとも、無視し拒否しているのと、どこも違わない。

…舞の後、慶次のあの言葉を受け、それを痛感した。


「──俺も同じもん持ってっから、…まぁ、そりゃ嬉しいな…正直」
「え?」

政宗は笑って、

「『特別な──』ってヤツ。…俺もあるよ、お前だけに…恋愛感情とは違う、別の」


(…っ!)

幸村は、こんなときであるのに、内から大きな喜びが湧いてくるのを感じる。


「その分、ぜってー無理だって話が堪えるがな」
「………」

自嘲するような笑いに目を背けたくなるが、頭の中で自身を叱咤し続けた。


「俺はよ…、お前にフラれんのは、お前に誰か好きな奴ができて、しかも上手くいったとき──って勝手に決めてんだ。だから…」

政宗は、幸村へ近付き、


「言えよ…あいつに惹かれてんだ、って。嘘でも良いから」

と、瞳の中の光を揺らした。


「…佐助には、某の方が既に振られ…」

「──じゃあ、」


押された、と思った直後、幸村はベッドに仰向けになっており、政宗が上から覗いていた。


「嫌えよ、今すぐに。…俺のことが大嫌いってよ。言わねーと止めねぇ…」

「っ、…さむね、どの」

部屋は暖かいため、二人ともホテルのバスローブ姿だった。

幸村は、物珍しさから着していたのだが、政宗は自分と違って板に付いているな──などと悠長に考えてまでしまい、反応に遅れた。


「…ぅあ、の…っ、…っは…」

手早く紐を解かれ、素肌が晒される。
そこに、間髪入れず顔を寄せる政宗。

舌を這わせ唇で吸い、軽く噛み再び吸う。

熱い息がかかり、その度幸村の心臓は震え、喉の奥から甘い音が零れた。


「政宗殿、離し…っ」

「………」


両手への拘束の強さに、幸村は眉を寄せ、

「逃げませぬから…」


「──あ?」

その一言に、ピタリと止まり、幸村を見下ろす政宗。


「今、何っつ…」

「…逃げぬ、と申しました。──嫌いまする。ちゃんと嫌いまする、政宗殿がそれを望むならば」


政宗は呆然とし、

「お前…分かって言ってんのか?」


幸村は、緩んだ彼の手から離れ、

「分かっておりまするよ。…ただ、優し過ぎまする…。嫌えと言うならば、そうなれるようして下され」


「お、前…馬鹿か?馬鹿だろっ?──好きでもねぇ奴に、こんな」

「………」

唇を震わせる政宗に、幸村は哀しみの目で笑った。


「そうですな…。某は、何も知らぬ…何も分からぬ。恋しいという気持ちも、重ねたいという気持ちも。ですから、こんなことが言えるのでしょう。…きっと、某はおかしいのだ…」

「──……」

政宗は、声もなく幸村を見つめるまま。


「政宗殿のためならば、何でもしたいのです。楽になれるのなら、恐ろしくもない。さほど、大したことではないように思えまする。決して、罪悪感などと傲慢に考えてはおりませぬ…」


「幸、村…」

掠れ声で呼び、政宗は横たわる白に目を細める。



「嫌う前に許して下され。


──好きです、政宗殿。…心から」



幸村の耳の傍に着いていた手の甲に、小さな滴が一粒落ちた。







‐2011.12.3 up‐

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

キレ悪くてすいませんm(__)m
続けようとしたら、ゴチャゴチャになりそうなので;

デート背景、色々あやふやで申し訳ない。


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