告白4



「何だ、開けたのか?」

「はい!こちら十体あるのです、ちょうど」
「ちょうど?」

髪をタオルで拭きながら、政宗は幸村の前に腰を下ろした。

ベッドの上には、先ほど獲得した賞品のマスコットが散らばっている。
キーホルダーにもストラップにもでき、同じキャラクターの服や小物の色違いや、違うキャラクターのものなど…

よく見てみれば、別に男が持っていても変ではなさそうな、クールな感じである。


「はい、政宗殿」
「Ah?」

幸村は、その内の一体を渡す。…青い色の小物を着けた。

「某は、当然こちら」

と、赤のものを見せる。


「黄、紫、緑…ちょうど良いでござろう?」
「Ha〜n、なるほどな。pinkは姫──おい、この悪そうなfarmer!小十郎にぴったりじゃねーか」

「悪そう…後で、しっかり伝えておきまする」
「褒め言葉だって。…このcow girlは孫市だな。スゲー強そうだしよ。んで、この怖そうなのが妹だろ?」

「それも言っておきまする」
「よく見たらprettyっつーか、lovely?この服、お前が学祭で着たヤツみてーだな。髪も金髪だし、うん、あいつに似てんな」

早口で言う政宗に、幸村はおかしそうに笑った。


「──で、この迷彩はあいつか」

「………」

政宗の言葉に、幸村は微笑んだ。


「元気でやっておるようですよ。メールも、あれから何度か」
「Huーm…」

政宗は、冷蔵庫に入れていた飲み物を口にした後、再びベッドへ戻り、マスコットを眺める。


「…初めは、ぜってぇ上手くやれねーって思ったんだがな」
「え?」

迷彩のマスコットを指で弾き、政宗は苦笑した。


「少しは知ってんだろ?俺らが、スッゲー犬猿だったこと」
「あ、ああ…」

「それがなぁ…。不思議だよな、マジで。まぁ、今も大して仲良しでもねーけど」

幸村は、再び笑ってしまう。


「元親殿に、コッソリ聞きましたぞ?元親殿と慶次殿は初等部の一年生からの仲で、お二人が、政宗殿と佐助を出会わせたのだと」

「前から知ってたけどな、お互い目立つし。あいつは、いつも妙にヘラヘラしてて、すげぇイラつく奴だった。…と思ってたら、案の定でよ。あの一件で、やっぱ本性隠してやがったな…ってな」

「佐助は佐助で、政宗殿の相当な横暴振りに──だったのですよな?二人とも、想像がつきませぬがな」

「俺らも大人になったぜ、ホント…」

冗談っぽく言うが、それを心底良かったと感じているのだろう…と、幸村は密かに温かく思う。


「まぁ、元親と慶次は苦労したろうな。元親、佐助が謹慎食らったときに一緒にサボッてよ…あんときにピアス開けたんだぜ、二人。で、また問題になったけどな」

「おお、それは知りませんでした…」

「母親を中傷されたとき、ついでに髪のことも言われて…向こうが、元親の名前も出したみてーでよ。そんときゃ別に知り合いでもなかったんだが、元親が勝手に感動してな。てっきりあいつが、自分も庇ったんだと思ったらしくて」

馬鹿だろ?と、政宗は笑ったが、本気でないのは見てとれる。


「慶次は…ああ見えて、実は周りからよく笑われてた。親元離れて、前田先生たちもまだ若かったしでな。昔からあんな感じだったから、冷めた目で見られてたり…。自分より他人でよ、しょっちゅう馬鹿見てたぜ。何回騙されりゃ気が済むんだコイツ、って」


(…知らなかった…)


元親、佐助、慶次の過去…初めて聞く話に、幸村は驚きを隠せない。


「あいつは人に優しくしてばっかで、逆の立場に慣れてねーから…」

政宗は、そこからは口をつぐんだ。


「…まぁ、そんなの見ててよ、あんまりイラついたんで、周りの奴らぶっ飛ばした。したら、懐かれた。…別に、あいつのためじゃなく、気に入らなかっただけってのに」

「政宗殿、その頃からお優しかったのですな…」

「………」

政宗は、フッと笑い、


「──O〜K〜!」

「は?」

突然、今までのシリアスな感じからチャラけた雰囲気になる彼を、幸村はキョトンと見返す。


「いきなり昔話なんざ、おかしいだろが?──最終、それを分からせるための語りだ。Ah〜、長かった!クッセェし」

「は、は…あ…」

目をパチパチさせる幸村をよそに、政宗は座り直すと、


「今日…楽しめたか?」
「あっ、はい!それはもう!」

幸村も、心からの答えを返す。


「俺もだ…。…なぁ、俺といて、お前楽しいか?別に、こういうとこじゃなく、普段の…っつー意味だが」

「政宗殿と一緒だったので、尚楽しかったのだと思うのですが?」

「答えになってねー…」
「それは、言わずとも分かっておられるはずなので。…あえて」

「…Ha」

政宗は、目を伏せ少し笑う。

その髪がまだ湿っていることに気付き、


「政宗殿、乾かさねば風邪を…っ?」


思わず片手を伸ばすと、政宗と同じものに軽く掴まれた。


「──じゃあよ、それで良いじゃねぇか。…俺は、急いでねぇっつったろ?」


(あ…)


政宗の手から伝わる冷えた温度が、幸村の胸をじくじくと刺していく。


「どう…し…て」

「んなもん、決まってんだろ。惚れてんだ…そんくれー分かるよ、声聴いた時点で」


(…では、初めからそのつもりで…)


だというのに、今日一日をあんな風に。…あんな、顔で。


──幸村の胸は、痛みを増す。

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