告白3
「…Hey、今のは笑うとこじゃねぇ」
「ははっ、申し訳…っ…──はい、政宗殿は男前でござる」
笑いの治まらない幸村を、ムスッとした顔で見る政宗だったが、
「嘘ではござらぬよ。…見惚れておったのです、白状しますると。先ほどの、笑った顔に」
サラリと言われ、驚き固まる。
幸村も、何故かためらうこともなく、素直に口にしていた。
「…どんな顔だよ」
「子供のような…」
「………」
てっきり、『Ahー!?』と、怒号を上げるものと思いきや、政宗は静かに、
「…の、どこが男前だ…?」
「しかし、某は最もそれが、」
幸村は、そこで台詞を絶つ。
「………」
政宗は冗談混じりに、「Your favorite smile?」
「はは……いかにも」
幸村も、自然に笑って答えられた。
「Like or love?」
「…えー…、と…」
「Love?──OK」
「ぁ、あはは…」
政宗のニヤリとした笑いに、幸村の笑みは尚も増す。
「何でか、知ってっか〜?」
「え?」
「お前が、その顔が好きな理由」
「──…」
何となく、英語表現よりも恥ずかしくなるせいか、幸村の頬に朱が浮かぶ。
政宗は、それをチラリと見てから、
「…ぜってー教えてやんねー…」
──と、苦笑した。
(な、何故…)
戸惑う幸村だったが…
催しの後の静けさが止み、周りは騒然とした様子に戻る。
再び、試合に白熱し出した二人。
その状態はゲーム終了まで続き、先ほどの会話は流れたまま、次の目的地へと移動した一行だった。
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「So wonderful!Good job、幸村!信じてたぜ、お前はきっとやってくれると…!」
「政宗殿…っ!」
「………」
感動的な表情で、両手をガッシリ握り合う二人。…最後の無言は、同じ席で様子を見ていた小十郎のもの。
「おめでとうございます!それでは、こちらの素敵な賞品をどうぞ!末長く、可愛がってあげて下さいね〜」
この店特有の、可愛らしい洋服を着た女性スタッフが、笑顔で二人に何かの箱を渡した。
「Thank you!」
「ありがとうございまする!やりましたな、政宗殿!」
「お前のお陰だぜ、よくやった!」
「いいえ、こんなものお安いご用でござる」
ニッコニッコと、二人して箱を眺める。
──あれから三人は、有名な大テーマパークに足を運んでいた。
着いたのは夕方だったが、金曜土曜などの休日前は、夜遅くまで開園している。
宿泊するホテルで夕食をとる予定だったが、ある看板を目にし、園内のこのレストランに入ってしまっていた。
『当店名物・ジャンボパフェ。時間内に完食できたら、限定品──をプレゼント!』
幸村の底無しの甘味好きを何かに使えないか、たまに、馬鹿みたいに真剣に考えたりしていた政宗。
これはチャンス!ということで…
乗り物にも散々乗り、堪能し切ったところだったので、お腹の準備もちょうど良かった。
「んじゃ、食うか」
「…さっきまでのを見た後では、食欲も萎えそうですがな…」
小十郎が、げんなりした顔で言ったが、
「某、こちらのポテトとサラダにしまする」
「「!!」」
その発言には、彼だけでなく政宗もギョッとする。
「さすがに、口の中が甘くなり過ぎ申して…。しょっぱいものが欲しくなり」
「…Oh」
「(ウプ…)」
全く当たり前のように言う幸村に、偉大なものを見る視線を送る二人。
(………)
幸村は、限定品の紹介写真を一瞥し、心の中で首を傾げ、
「知りませんでしたな…。政宗殿が、こういう物がお好きなのだとは」
それは、ここのパークの人気キャラクターのグッズなのだ。
「俺じゃねーよ、あいつがな」
「ああ、お土産でしたか」
「いや…てか、お前の功績なんだから、お前のモンだろ」
(かすが…喜ぶだろうか…?)
キャラクターグッズを持つ姿など、あまりピンと来ないのだが。
「まぁ、まずは、あいつらに見せびらかそーぜ?慶次が、こーいうの好きなんだよ。とことん自慢してやろうと思ってな」
「ああ…それなら分かりまする」
もうから、『良いなー、良いなー!』と、羨ましがる声が聞こえてきそうである。
「きっと、喜びましょうな。政宗殿、珍しくお優しい…」
不機嫌になることを想定し、幸村は小声になるが、
「いや、そういう意味じゃ」
「──に、しておきなさいませ。全く、大人げもない…」
「…うるせー…」
「?」
呆れた溜め息をつく小十郎と、若干ふてくされる政宗を、不思議そうに見比べる。
「…気にすんな。食べたら、ホテル行くからな」
「?パレードを見るのでは?」
「ホテルからでも見られっから、良んだよ」
「はぁ…」
ポカンとする幸村。
政宗の言葉は、ホテルに着いてから、嫌でも理解することになるのだった。
連れて来られたのは、何とパーク内に建っている提携ホテル。
確実に安くはないだろうし、しかもスウィート並みに広い、ファミリールーム。二部屋を繋ぐことができ、ベッドは四つもある。
三人でも、有り余るほどのスペースだった。
しかし、小十郎の言葉を思い起こし、素直に喜び、珍しさに楽しんでいた。
至るところに、パークのキャラクターをモチーフにしたものが飾られている。
鶴姫などは、きっと目を輝かせて感動したに違いない。
『飲んで来る』と、小十郎はホテルのバーへ行ってしまった。…話が終わるまで、二人にしてくれるつもりなのだろう。
今日の途中から、彼も知っているのだということに、幸村でも感付けていた。
パークのきらびやかなパレードを上から観覧した後、幸村は先に風呂をもらった。
そこも贅沢な造りで、本当に口が開くばかりで──
今は、政宗が入っている最中。
(…おお、ちょうど良いな)
幸村は、ベッドの上で腕を組んだまま、うんうんと頷く。
そのとき、浴室のドアが開く音が届いた。
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